第6話「父さん母さん俺、異世界で嫁が出来ました」
「ナツメは本当に酷い奴だ、痛いと言ったのに辞めてくれなかった」
ドラマなんかじゃこういう時タバコを吹かせるのだが、俺はタバコなんて吸った事は無い、どちらかと言えば苦手な部類だ。
「エリスの事は大切にするからもう一回」
我ながら猿だな、覚えたての猿、実はあの日から既に3日経っている、日課のトイレ掃除も風呂掃除も飼育小屋掃除も行っていない。ログインボーナスすら貰って居なかった、風呂に入るか、事を行うかの3択だ。一度なんかはトイレの使い方を教えながらそのまま行為になだれこんが事もあった。
「ナツメは私を嫁に娶る気は有るんだろうな」
「有る有る、もちろん当然有るから心配しなさんな」
シングルベットでエリスと抱き合いながらそんな話をしていた、俺のほうもようやく余裕が出て、エリスの話を聞き入れる準備は整っている。
「親には何時会わせてくれるんだ」
「俺も会いたいんだけどな、無理だ」
「そうか、ナツメも私と同じだったんだな、忘れてくれ」
もちろん俺の両親は生きているのだが・・・生きて居るよな、俺がここに飛ばされた時に地球が滅んで無い限り生きて居る筈だ。
「エリスの家族は全員居ないのか」
「それならどれ程良かったか、ロクでなしの兄が居たな、もう縁は切ったが」
エリスの兄が騎士に成る為と称して方々に借金をこさえた、結局騎士には成れず借金の返済代わりにエリスを商人に売ろうとしたらしい。それを知ったエリスは兄をボコボコに打ちのめして家に吊るし、家財道具一式を売払い、家に伝わった鎧と剣を持って王都から逃げ出したらしい。
「逃げても大丈夫なのか」
「借金をしたのは兄だからな、私の知った事ではない、今頃変態に飼われて居るか鉱山で炭鉱夫でもしているのでは無いか」
あいたたたた、俺よりもゲスい男が世の中には居るようだ、生娘のエリスを物にしてしまった負い目から、エリスの言うがまま飯やスイーツを買っていたから魔素が大分と減って仕舞っている。
「そろそろ俺も稼ぎに出ないと不味いかな」
「金が無いのか」
「金じゃ無くて魔石が必要なんだよ」
「なるほどな、風呂の湯や水を生み出しているんだろうし、それは確かに必要だ、何処かの村で魔石を補充しなければならんか」
魔石って村で補充出来る物なの?素直に事情をエリスに聞いてみる事にした。
「俺ってゴブリンを狩って魔石を得てたんだけど、村で魔石って買えるもんなのか?」
「ゴブリンから魔石か、確かに奴らも魔石を集めているが数が集まらんだろう、魔素の濃い場所で魔石は湧く、僻地に村が作られる理由は魔石を集める為だから村で魔石を求めるのが普通だと聞いた。私も伝聞で聞いただけなので実情は良く知らないのだ」
つまり街は魔素の薄い安全で交易に適した場所に作られる、その一方で村は魔素の来い危険な場所に作られるが魔石が取れる。取れた魔石を都会に運んで売ると言うサイクルが完成していると言う訳だな。
俺は魔石を魔素に換算して買い物をしているが、こちらの人間は魔石を燃料代わりに使っている。それもクリーンで万能なエネルギー、熱源にも成るし、水を生み出す事も出来れば、冷房にも使える。
「それで1魔石はいくらで買えるんだ」
「銅貨1枚が相場だな」
「安いな」
ひょっとして銅貨の価値が高いのか、こちらの物価基準が解らないので何とも言えないが。
「安くは無いだろう、毎日の煮炊きに使うだけでも10や20は必要だぞ、ナツメのように使うなら100や200は必要そうだ」
「銀貨と銅貨の交換比率は?」
「王国内では銀貨1枚が銅貨100枚で固定されている、ナツメはどこの国から来たんだ、砂漠の向こうか」
「日本って国だけど知ってるか」
「聞いた事は無いな、そもそも私は外の国なぞ一つも知らないが」
俺が外国人認定されているらしい、理由を聞いてみると、俺の黒髪で黒目なのは砂漠の民か遊牧民に多いかららしいし、交渉術言語セット1では多少言葉使いに難が有るようだ。
「ちなみに金貨はどういう扱いなんだ」
「銀貨100枚で金貨1枚と交換だ、私の使っているミスリルの剣なら金貨10枚はするだろうな。拝領品なのでこのままじゃ売れんがな」
「拝領品って誰からよ」
「先祖が国王陛下からだろうな、鎧もそうだ」
「それってエリスが持ち出しても良かったのか」
「兄には過ぎた代物だ、他の財産を食いつぶしたんだ、当然の権利だな」
「エリスの国には女にも相続権が有るのか」
「そんな物は無いが、これは持参金代わりに生前の母から貰った物だ、兄が何を言ってきても渡す必要は無い」
エリスの兄には戦闘系のスキルは一切無いらしい、それで騎士になろうってんだから、相当な努力が必要なのだが、努力する事は嫌いで見栄を張る事は大好きな人間だったらしい。
一方のエリスは騎士のスキルを生まれた時から持ち合わせて居た、女が騎士になれない決まりが成れけば、エリスは騎士団に所属していただろう。
「久しぶりに日課をこなしますかっと」
「日課とは何だ」
「掃除だよ、便所と風呂と飼育小屋の3ヶ所」
「まだ汚れては居ないのに綺麗好きなのだな」
「きれい好きってのはそうかも知れないけど、それよりもクエスト目当てだな、便所と風呂が銀貨1枚、飼育小屋は銀貨が2枚貰える」
「クエストとはあの神が与えるクエストか、ナツメは神の使者だったのか」
クエストは誰も彼もがもたらされる恩恵では無いらしい、そもそもエリスはスマホを持ってないから救済システムにアクセス出来ないだけなのかも知れないが、一部の人間はクエストを受託することが出来るらしい。
「じゃあミッションって言葉は知ってるか」
「もちろんだ、神界の言葉で書かれて居るからよく解らないのだが、私も幾つかはミッションを完了した事が有る」
ミッションって俺には日本語で書かれているように見えるのだが、現地人には違う言葉で書かれているのだろうか。仮に日本語で書かれて居たとしてもエリスに読める筈も無いか。
「そのミッションの内容は何だったんだ?」
「一つはゴブリンを討伐した時に出たから、そのような内容だったんだろうな。後2回どういう理由で完了したのか解らないがダイスを回した、それとつい最近と言うか3日前だな」
3日前と言うと俺と出会った時か、つまり俺達は運命の輪が巡り会わせたベストカップル。
「お前に無理やり抱かれた時に完了した」
うわっハズイ、思わす俺が顔を隠してしまった。
3日ぶりに携帯を確認すると、大漁のメッセージで溢れている、それらを横目にして救済アプリを立ち上げると、ログインボーナスとしておにぎり3つとパンが3個机の上にならぶ。アレッと思いつつペットボトルを確認すると、お茶と珈琲牛乳のような物がそれぞれ1本ずつ置かれて居た。
「コレはカッファじゃないか、私の大好物なのだがどうしたんだ。コンビニとやらで売っていたのか」
ひょっとして二人分か?出てきたパンも普段俺がコンビニで買っている物とは違うように思う、触ってみたらフランスパンより大分硬かった。
「こんなパンを食ってたのか」
「そうだな、しかし私はナツメが用意してくれる柔らかいパンの方が好きだぞ、それはナツメが食べると良いだろう」
俺にはおにぎりが有るから不要なのだが、ともかく救済システムを確認しなくては。
緊急クエストが6つ達成していた、『目の前の少女を救え』『少女を入浴させよう』『少女と入浴しよう』『少女の腹を満たせ』『少女にトイレの使い方を教えよう』『少女の口を磨こう』『少女に衣服を与えよう』、少女少女って、エリスは少女と言うような年齢では無さそうなのだが。
緊急クエストの他に1つミッションが終了していた、『童貞を捨てろ』、気持ち良かったしエリスも助かったウィンウィンと言う事でヨカッタネ。
少女シリーズで得られた物は俺への報酬と言うよりは、エリスの為の物品と言った方が良いものばかりだった。
「どうしたのだこのような立派な鎧は、素材もミスリルだぞ」
女物の鎧なんて俺が着けられる訳無いし、エリスに渡せって事なんだろうな。
「結納品かな」
「私にはナツメに贈れる物が無いのだが・・・そうだ私が使っていたあの鎧をナツメにやろう、あれだってミスリルが多少は使われて居る筈だ」
あのクッサイ鎧か、手入れしてなかった割にはサビ一つ浮いて居なかったから、鉄では無いのかと思っていたが、異世界金属のミスリルだったか。
「その辺はおいおい考えるとしてだな。靴と服とカバンと下着もやるよ」
「どれもこれも高価な物だなおい」
めちゃめちゃ笑顔で俺に寄り添ってくる、今日まで散々ベットでイチャコラしてきたけど、こんなに積極的に近寄ってきたのは初めてなんじゃないか。
「指輪で最後だけどサイズが合うのか」
「薬指にピッタリだぞ、何だ何だ何だ、こんなサプライズが出来たのかナツメよ」「痛い、痛いって首が閉まる」
エリスの締め付けは尋常では無かった、聞いては居なかったがエリスのレベルって俺より高いのか?
「嬉しい痛みって奴だろそれ、近所のお姉さんが言ってたぞ、これでやっと意味が解った」
それは違う意味だと思うのだが、懸命にも口には出さなかった。
「エリスって自分のステータスは知ってるのか」
「ああ教会で教えてくれるやつだろ、お布施がもったいないから12歳の誕生日に見てもらったきりだな。あれから1年近くは経つし私も大分成長しているだろうな」
「はぁ?」
ちょっとエリスが何を言っているのか理解出来ない、1年前に12歳で・・・なら今は13歳?中学生?淫行罪?
「エリスから見て俺って幾つに見える?」
「私より2つ3つ年下だと思うが違うのか」
「15歳なんだけど」
「そうなのか、良かった。私と丁度良い年格好では無いか、夫婦になるのに年下の男だとどうもな。15な並んで大手を振ってお天道様の下を歩ける物だ」
エリスより3つも下だったらそれはそれでヤバイだろう、13歳に手をだした俺も相当ヤバイのだが。
「15歳と13歳って結婚しても問題は無いのか」
「王国じゃ普通だろうな、男は15で成人だし、女は早ければ10で嫁に行く、私は13だから嫁に行くには適した年齢だ」
10歳は色々不味いと思うのだが、エリスのような体格が平均的な物で有るなら、無い話では無いのか。と言うか俺は13歳の少女に何をしてきたんだ、記憶をたどると色々な場面がよぎってくる。
「おいまた大きく成っているでは無いか、やりすぎは良くないと近所のお姉さんが言っていたぞ」
近所のお姉さんよ、子供に何を教えているんだよ・・・俺にお姉さんを攻める資格は無いな。
「結婚ってどうやったら良いか知ってるか」
「うん知ら無いぞ、普通はそれぞれの親が進める物だが、私もナツメも親が居ないからな。こういう時は教会や村長を頼るのでは無いか」
教会にも村長にも縁がない、本当の意味でこの世界では天涯孤独の身だ、地縁血縁全てと無縁だ。
「そんな事よりもだ、クエストをやらねばならぬのでは無いか、私も手伝うからやってしまおう」
「お、おう」
急かれて掃除をするまえに一つやって置かなければならない事が有る、唯一俺自信の童貞卒業報酬をもらわなければならないのだ。
「何をモタモタしているのだ」
「ダイスを振らないと駄目なんだ」
「何だとそれは一大事では無いか、慎重に回せ、これは最早夫婦の問題だからな何が出たかは教えて貰うぞ」
いつものダイスとは物が違う、レア、スーパーレア、ウルトラレア、プンプン丸の4種類しか無い。つまりハズレでもレアが出ると言う事になる。
「行ったれーーー」
ダイスをタップすると凝りに凝った演出がこれでもかと流れて来る、最終的にファンファーレと共に現れたのはレアだった。
「なんでやねん」
「どうしたナツメ何が起こった」
出目はレアしかもスキルは固定で選ぶ予知が無い物だった。
「祝福ってスキルが手に入ったよ」
「神官のスキルでは無いか、何で牛飼いのナツメにそんなスキルが」
「神様に聞いてくれよ」
「そうだな、ダイスによって選ばれたスキルだ、疑問に思うのは不味い。ならば早速私のステータスを調べてくれ、去年よりは成長している筈だ」
祝福ってそんな感じのスキルなのかと、エリスが同意しているので、試しにスキルを使ってみた。
名前:黒田エリス
年齢:13歳
SEX:一人(♀)
職業:主婦
レベル:23
スキル:騎士、剣術マスター、騎乗、回復魔法、
EXスキル:復讐と嫉妬の神ダイモンの加護
状態:健康
おい、なんじゃこれ、復讐と嫉妬の神の加護、これはヤバイってもんじゃないよな。こんなの公表出来ないって。
「これは何でも無いんだけどな、ダイモンって神様知ってる?」
「もちろんだ、王都にも教会が有ったぞ、愛の女神ダイモンだろ、主神シャイターンに次いで人気の神だ」
「そ、そうっすか」
宗教関係の話は辞めておこう、俺さえ黙っていればみんな幸福に生きられるってもんだ。
「それでどうだった」
「レベルは23で、騎士と剣術マスター、騎乗に回復魔法のスキルを覚えて居るみたいだな」
「それは間違いが無いのか」
「どうかな、覚えてたてのスキルで自信が無いけど、どうしてだ」
「回復魔法なんてそれこそ神官しか使えないスキルだしな、何で騎士の私が使えるようになったのかが疑問でな。それにしてもレベル23と言うのも解せない、近衛の精鋭でもレベル20だと言う話なのだが」
レベル23と言うのはかなり高レベル帯のようだ、私のレベルが9だと告白するとそんな物だろうなと納得された。去年エリスの祝福の結果は6だったらしい、この一年で様々な魔物や人間と戦ったがこんなにレベルが上がっているとは思わなかったそうだ。
「回復魔法って使えるん?」
「無理だ使い方が分からん、何処かで教わらないとな」
スキルを覚えたからって魔法は使えないらしい、マジックマスターのスキルを取得しなくて本当に良かった、アレを取得してたら死んで居たな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます