第5話「第一村人発見」
異世界生活20日目、単調な日々が続いてレベルは9まで上がっていた、残念ながら新たなスキルは得られなかったが、生活の方は若干充実している。
魔素は20万で上下しているので貯蓄は増えて居なかったが、その分物品を購入していた。コインは金は5枚のままだが、銀貨は155枚、銅貨は215枚まで増えて居た、使う場所が無いから貯まっているだとも言えるけど。
「ドナ子、バッチイから捨てなさい」
サバンナの旅にドナ子が同行してくれるようになった、一日中あんな訳のわからない無い空間に居たくは無いだろうと、外に出る事を誘ってみたら着いてきた。ドナ子の攻撃は優秀で、俺のスキルなんて今や飾りと化している。ドナ子がツンツンしているのは討伐したホブゴブリンで、普通のゴブリンよりは大きく俺の胸の位置くらいの身長が有った。
先の全く見えなかったサバンナだったが、漸く緑が増えて来て、乾燥地帯を抜けつつ有るようだ、この異世界にも人形の住人が居るとするなから、邂逅する日も近いだろう。
「た・・・け・・・て」
「何か言ったか?」
何かが聞こえた気がしたので、ドナ子に尋ねてみたが、私が話せる訳ねーじゃんと言われたように思える。それもそうだね、じゃそろそろ移動するかとドナ子にまたがろうとするとやはり声が聞こえて来る。
「たすけ・・」
「田助さんは居ませんよっと、気の所為だったみたいだから行こうか」
「お助けくだせえ」
「無理みたいので他の人探して下さい」
現地人とも話が通じるようで、良かった良かった、近場の村に立ち寄る事は辞めておこう、現在進行系で良くない事が起こってそうだ。
「村が、村が襲われて居るんじゃ、旅の人よどうかお助けくだせえ」
「爺さん無理言っちゃいかんよ、ただの旅人に頼る内容じゃないでしょどう見たって、爺さん死にかけじゃないですか」
爺さんの背中には欠けた剣が突き刺さっている、これ抜いたら血がドバドバ出る奴だ、俺テレビで見たから知ってる。
「村が盗賊に襲われたんじゃ、わしはどうにか逃げ出す事が出来たが、村に残った娘が心配でのう」
「そう云う話は警察か自警団か騎士団にお願いしてくだい」
今だにゴブリンの懐を探るのも慣れないのに、人相手なんか絶対に無理、この爺さんも無茶な事を言うもんだ。
「うちの村はどこの領主にも世話になっておらんのじゃ、頼る相手なんぞおりゃせん」
「それなら自力で頑張って下さい、俺は怖いので逃げますわ、じゃっ」
今度こそドナ子に跨って立ち去ろうとしている所に、面倒そうな相手がやって来て絡んできた。
「おいお前、何処に行く」
「安全そうな所ですけど」
「この老人はどうしたんだ」
「知りませんけど」
「怪我の手当もせずに放置するつもりだったのか」
「私はただの通りすがりの旅人なんで、手当する知識も無いんすよ」
面倒くさいな、一見すると騎士のような身なりをしているが、騎士じゃ無いんだろうな、騎士なら従者の2、3人居るのが相場ってもんだ。それなのにこの騎士モド、キ一人で馬にも乗らず旅をしていたようだ。
「旅をしているならポーションくらいは持っているだろ、出せ」
そんなもん見たことは疎か存在すら、今始めて知ったばかりだ、
「俺は持ってませんけど、そこまで言うんだったらあなたが出せば良いんじゃ無いですか、ポーションくらいは」
「私は生憎と手元不如意でな、持ち合わせが無い」
そのポーションがどのくらい価値が有る物なのかは知らないが、自分が持っていない物を人に供出させようと言うのは、こいつもろくなもんじゃないな。
「じゃあ俺と一緒ですね」
「貴様、ジャイアントカーウの幼体に載っていながらそのような事を口にするのか」
ジャイアントカーウってドナ子の事だよな、お前そんな種族の一員だったのか、ドナ子が「モォー」と鳴いて答えてくれた気がした。
「俺がドナ子に乗っていようが居まいが無いものは無いんで、それじゃあ」
「待て」
無視して移動を再開したら、前方に回り込まれて両手を開いて仁王立ちしている。
「あぶなっ、お前私を轢き殺そうとしたな」
敢えて轢こうとは思わないが、止まる気は更々無かった。
「ドナ子は急に止まれないんで、前に出ると危ないですよ」
「あの老人が死んでも良いと言うのかお前は」
目の前で死んだら心が痛むかも知れないが、見えない場所まで移動すれば心も傷まない、だって別の誰かが助けてるかも知れなもの。
「私は気にしませんので」
「おい、お前本気でそんな事を口にするつもりか」
「どないセイっつーつもりですか」
面倒くさく成ってきたな、このまま走り去ってやろうかしら。
「そのジャイアントカーウに乗せて運んでやれば良い」
「何処にですか」
「老人の家なり村なりまで送ってやればいい」
「盗賊に襲われて居るらしいですよその村」
無茶を言う、そんなに無茶がやりたければ一人でやってほしい物だ、関わり合いに成りたく無かったな。
「ならば尚更急いで駆けつけねばならぬでは無いか、おいちょっと待て何処に行く」
話を聞いている風で実際には無視している、そろそろあの老人の姿も見えなく成りそうだ、しかしこの騎士モドキどこまで着いてくるつもりだ。
「私はか弱い旅人なんで安全な場所を探して移動します、そのご老人の村へはどうか騎士様お一人で駆けつけて下さい」
「私は騎士では無い、女の身で騎士など成れる訳が無かろう」
この国じゃ女は騎士に成れないらしい、一つ勉強になった、なんやかんのと言いつつこいつも老人を助ける気なんか無いんじゃないのか、老人を気にする素振りも見せない。
「お前、あの老人の村の方向を知ってるのか」
「知りませんけど」
「多分お前が向かってる先にその村が有るぞ、引き換えして老人を乗せて行くなら今の内だ」
その言葉で俺はドナ子の歩みを初めて止めさせて。
「村の場所をご存知でしたか」
「私もな、ラウイの街から南を目指して来たのだが、途中の村で火の手が上がっている光景を目にして迂回してきたんだ。このまま真っ直ぐ北に進むなら覚悟を決める事だ」
この姉ちゃん良い根性をしている、あの死にかけの老人には良い所を見せつつ、あの場からすんなりと退場したのだ。
「どちらにしても私達2人では村の救助には迎えません、応援を呼ぶには何処の街に向かえば良いでしょうか」
「ラウイは領主がケチ臭くて、入場税も高い、少し西に行くことになるがバイカルの街を目指した方が良いな」
西に行けばいいのね、ありがたく忠告を聞いて西に向かう事にした。
「おい・・・お前・・・、女を・・・歩かせて・・・一人・・・騎乗する・・・とは・・・どういう了見・・・なの・・・だ」
着いて来なくても良いのに、女騎士はドナ子の足並みに揃えて着いてきている、そろそろ夕方になるのでトイレを召喚したいのだが、こいつが居る所為で出来ないのだ。
「俺と一緒に野営したいって事で良いのかね、それがどのような結末を迎えるか、その覚悟が有るなら歓迎しますけど」
つい5分前までは邪魔な奴だと思っていた、しかし今は期待しちゃっても良いのか、コレが俗に言う神待ちって奴かも、なんて期待に膨らんでドナ子の足を止めさせた。
「お前・・・最低だな」
まだ息は整って居ないが女騎士は俺の事を最低だと言う、実は俺もそうじゃないかとは思っていたが、残念ながら思春期の男子高校生はそんな言葉くらいではへこまないのだ。
「名乗りもしない相手には相応の対応だと思うけど」
「私の名はエリスだ」
エリスちゃんか、鎧を着ているので体験は解らないが、金髪碧眼で美人ちゃんだ、年は俺よりは上そうだが二十歳は越えて居ないと見た。
「エリス何ちゃん?」
「家名などとうに捨てた、今の私はただのエリスだ」
「俺の名はナツメだよろしくな」
ドナ子から降りてエリスに右腕を差し出す。
「なんのつもりだこの手は」
握手の習慣は無いのだろうか、緊張を解したかったのだが逆効果になってしまったか。
「握手の習慣は無い感じ?」
「貴様に親愛の情など湧くものかよ、図々しい」
握手は友好の証じゃ無く、一歩進んで親愛の証か、また一つ勉強になった。
「荷物を持ってないように見えるけど、アイテムボックスでも持ってるのかな」
武装以外にエリスが何か持っているようには見えない、俺がエリスと距離を取ろうとした原因の一つに、荷物を持ってなかった事がその一因だった。
「荷物なんて全部売り払った、今の私の持ち物はこの鎧と腰の剣だけだ。アイテムボックスなんてスキルを持っていたらこんな所まで都落ちなんてしてなかったさ」
「昨日まで、どうやって夜を過ごしてたのさ」
女一人で野宿出来るような環境には無いだろうに、何か強力なスキルでも持っているのだろうか、例えば俺が取得しようとしていたエロ系スキルのような物を。
「昨日は樹の上で一晩過ごした、その前の日は馬小屋だな、ラウイの街じゃあ教会の軒先を借りていた」
「完全にホームレスな感じなのね」
大丈夫かこの女、初めての相手がホームレスと言うのはちょっとどうかと思う、一晩泊めて保健室を取られたら洒落にならん。かと言ってこんな危険な場所で野宿なんて論外なんだが、相手のスキルを見る事が出来ればこんなに悩む必要は無いのに。
「家が無いと言う意味ではまさにその通りだな、私も意地を張ってここまで来たがもう限界だ、さっきの老人のように見捨てるつもりならいっそここで殺してくれ」
「何だここは、お前は一体何者なんだ」
結局エロ心が勝ってエリスを保健室に連れ込んだ、トイレを召喚した時にも驚いていたが、保健室には更にビックリしていたようだ。
「噂に聞く勇者というやつか」
「何それ、そんな奴が居るの?」
「いや、ナツメが勇者な訳がないか、詮無き事を聞いてしまった。しかしここは何なのだ一体、ユニークスキルだとは思うがこんな物の存在聞いた事も無いぞ」
この世界のデフォがこんなスキルなら、もっと平和な世の中に成っていただろう、あの爺さんが死ぬような目に有っても居ない筈だ。
「そんな事はどうでも良い、先ずは風呂だな、エリスお前少し、いやかなり臭うぞ」
「風呂まで有るのか、本当に何者なのか聞かせてもらいたいものだな」
有無を言わさず風呂の用意をする、期待に膨らんでいる事を悟らせないようにしなければならない、普段から風呂場を綺麗に使って居た自分自信を褒めてやりたい。
「おーい風呂の用意が出来たぞ」
エリスがかなり用心しながら脱衣所に入ってきた、俺も一緒に入りたい所だが、流石にそれは鬼畜過ぎるだろうと自重した。
「これが風呂なのか、私の知ってる風呂とは大分違うぞ、一緒に入って教えてくれ」
「マジで」
思わず心の声が表に出てしまった、ここは2つ返事で余裕が有る事を見せなければ男がすたる。
「ふぁい」
声が上ずっておかしな返事をしてしまった、だって童貞なんですもん、おんなの人の裸を生で見た事なんて一度も無いんだからね。あかん、あかんで、思考がバグってる、落ち着け落ち着くんだ夏雨、今日お前は一人前になるんだろ。
「鎧を外すのを手伝ってくれ、一人で外すのに慣れて居ないんだ」
「うっす」
エリス以上に鎧の外し方なんて知らなかったが、見様見真似で鎧を外していく。
「これ人が着けてちゃ駄目な臭いがしてないか」
「そうか、もう臭いなんて何も感じんからな」
脱衣所に置いて置きたく無かったので中庭に鎧を移動させてから、エリスの着替えを更に手伝おうとしたら既に浴室に入った後だった。急いで俺もマッパになる、エリスが脱ぎ捨てていた服もかなりの汚物だったが洗濯機に放り込んで回して置いた、あの汚物と一緒に洗いたくないので、俺の脱ぎ捨てた服は洗濯かごの中に入れた。
「お邪魔しまーーす」
浴室の中に入ると裸のエリスが、こちらに背中を向けてバスチェアに座っている、俺は緊張しながらもエリスの姿を確認するために近づいて行った。
「遅かったなナツメ、何が何やら解らないのだが、どうやって身体を洗うのだ」
「うん、大丈夫、立派だよエリス、後の事はこの夏雨に任せて置いてくれ」
爆発寸前だったが心を落ち着かせて・・・落ち着く訳が無いが、シャワーから適温のお湯を出しエリスの背中から流していく。
「いくら何でも黒すぎないか」
「気持ちが良いな、なんだこの温かい湯の雨は」
エリスの身体を洗ってやったが一度では汚れが落ちない、人の身体を洗った物とは思えない汚れた水が流れて行く。何度目かの洗身体が終わると一緒に湯船の中に入っていった。
=============以下見せられないよ================
風呂を上がるとベットにエリスを連れて行った。
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