第3話「レベル」
ゴブリンの首筋に無慈悲な一撃をくれてやった俺は、保健室で新たな力を手に入れて居た。
・・・、・・・、・・・。
「ウソウソ、メッチャ怖いって、あんなの偶々の偶然っしょ」
ナタを拾った所までは俺ってやるじゃんと思っていたが、首筋に一撃入ったのは単なる偶然に過ぎない、闇雲に振るったナタが会心の一撃を出しただけだった。
偶然でもラッキーパンチでも何でも良い、生き残れた事に感謝しよう、よく見たらジャージに返り血なんかを浴びている速攻洗濯機に放り込んで、俺自身もシャワーを浴びまくる。
「いくら何でも飽きて来た」
風呂から上がってパソコンの前で心を落ち着けて居た、今なら何もかもどうでも良い賢者の心境になれる。恐怖もグロさも忘却の彼方に追いやれた。
心が落ち着いた所でスマホを手に取り救済システムを立ち上げ、ステータスを確認する。レベルが1に成っていた、ただそれだけで後の物は全く変化が無かった。
「レベルが上がった実感がねえ」
愚痴をつぶやいてから、ミッションの項目を確認する。
『ゴブリンを殺ろうぜ』の報酬は武器、短剣、槍、弓の3種類、どれも使いこなせる気がしないが、ありがたく使わせてもらおう、ナタよりはどの武器も使いやすそうだ。
『レベルを上げよう1(Lv1)』レベルが上ってミッションが一つ達成出来た、報酬はスキル、スキルはダイスを降ってダイスの目のレアリティーが選べるシステムのようだ。レベル1の報酬は1000面ダイスを降るらしい、レアリティーの種類はコモン、アンコモン、レア、スーパーレア、ウルトラレア、激レアスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム。最後だけ何か違うような気がするのだがプンプン丸は1000面の内1つしか無い、つまり0.1%の確率というわけだ。
ダイスは現物じゃ無くてスマホ内のアプリで回す、運営のやりたい放題がまかり通るシステムなので、プンプン丸はそもそも選ばれ無いのかも知れない。こんなのはコモン上等で回せば良い、無能力よりはコモンのスキルでも有れば戦えるよな、と心底願ってダイスの画面をタップした。
画面上のダイスがクルクル回り、無駄に豪華なエフェクト掛かって期待を煽る、知ってるこんなゲーム俺他にも知っている。
出目はレアだった、ツイてない俺が初っ端からレアを引いただと、地雷スキルだらけでは無い事を願い、レアスキルの一覧に目を通した。
レアスキルはマジでレアだった、欲しいスキルが山程有ったが3つまでに絞る事が出来た。
その1、バトルマスター、あらゆる武器を使いこなす戦闘のエキスパート、これさえ有れば武器を選ぶ必要は無い。正直に言えば今1番必要なスキルはこれだろう。
その2、マジックマスター、回復、攻撃、補助の三種の神器を使いこなせる魔法職のエキスパート、これさえ有れば魔法無毛も可能。魔法なんて使いこなせる自信は無いが、折角異世界に来たのだから取得してみたいスキルでは有るが次点と言うことで。
その3、スレイブマスター、奴隷商垂涎のスキル、これさえ有れば奴隷が作りたい放題。マジでこれが1番欲しい、これさえ有ればあの子もその子もやりたい放題、ここが街中であるならダントツ1番で有無を言わさず取得するのだが、残念ながらここはサバンナのど真ん中。魔物相手にスキルが発動するかも解らない現状、迂闊に取得するとバッドエンドの向こう側に行きそう。
もう少し考えたい所なのだが、救済システムを放置して置くことが出来るのかも解らない、苦渋の選択としてバトルマスターを取得する事にした。
最後のミッションは『討伐相手の懐を探れ』と言うミッションで、ゴブリンの荷物アサリの成果がこれだ、報酬はまあ有用な物で有ったが、今直ぐどうのこうのと言う物では無い。
交渉術言語セット1こいつが報酬のスキルだった、人の懐を漁っておいて、交渉もクソも無いもんだと思った。
取得したスキルを試す為に庭に出る、剣、槍と試してこの剣と槍は安物なんだと言う事が理解出来てしまった。しかも両方俺の体力に適していない物で、ゲームだとデバフ状態が付いたままに成ると言う事も同時に解った。弓は残念ながら矢が無いので試す事は出来ない。
剣、槍、弓、レベル1の適正武器はそれら3つじゃ無くて、ゴブリンが使っていたナタだったと言う悲しい落ち。サビっぱなしはどうなのと磨いて見る事にした、砥石も無いのにどうやってと言われそうだが、中庭のコンクリートにこすりつけたらそれなりにサビは落ちた。
ただし3時間程の時間は掛かったが。
サビ落としと試し切りで汗をかいた、風呂は使いたい放題だからもう一度入る事にして、流石にパンイチで行動するのはしんどいなと思い始めた。
風呂から上がって冷たい飲み物をと言うことで、今日まで手を着けて居なかったスポーツ飲料水をコップ1杯飲み干す。五臓六腑に染み渡るとはこの事だろうか、落ち着いて全裸で椅子に腰掛ける。それで・・・ふと・・・目が・・・養護教諭山口の私物のロッカーを見つめる。
やっちまった、これは恥ずかしい、山口のパンティーを履いて予備の白衣に袖を通す、もう息子が大騒ぎしていてパソコンのスイッチについつい手が滑ってしまう。
20分後賢者タイムに入った俺はゴブリン戦での戦利品腰袋の中身を机の上にぶちまけて居た。小汚いコインが全部で10枚、大小様々有ったが汚れとサビで何が何やら。その他には黒曜石のような石が5つほど、実際に黒曜石なんて見たことは無いから想像だが真っ黒な石なんでそうかと思いました。
コインはお酢で洗うと綺麗になるんだったか、それともトイレの洗剤だったか、よく解らないので洗面所に有った中性洗剤を使って洗って見る事にした。
銅貨7枚と銀貨3枚だった、デイリークエストの便所掃除で銀貨1枚、ゴブリン討伐で銀貨3枚と銅貨7枚この結果をどう判断して良いのかは、人の居る街に着いてからのお楽しみだな。
黒曜石の方は全く理解不能だが、わざわざゴブリンが貯めて居たと言う事は、それなりに意味が有ると思いたい。今は保留と言うことにして、晩飯を食べようかと思ってい居た所にスマホから着信音が。
スマホを開けるとメッセージが有って、ミッションを完了した知らせが来ていた。なんだろうと救済システムを立ち上げ確認すると『魔石を手に入れよう』と言うミッションが完了していた。報酬は新たなコンテンツの開放で、売店と言う課金コンテンツが現れて居た。
日本円が使えるのかと思い、課金方法を探す為売店のアイコンを押して見る、日本円は使えないようだ使えるのは魔石、魔石をスマホに入れるとチャージされる仕組みになっているらしい。早速黒曜石改め魔石をスマホの上に置いてみると、気持ちの悪い事に魔石を吸い込んでいく。
売店は2ヶ所存在するようで1ヶ所目は有名な7と11のあのカラーリングの売店だった。5つの魔石でのチャージ金額は5000魔素、販売されている物はアイコンの外見と同じでコンビニの商品と同じようなラインナップだ、1魔素1円相当なので5000円分のコンビニ商品が手に入る。
もう1か所の方は便器がアイコンに成っていてタップすると、トイレの拡張機能という項目があり、現在保健室が開放状態になっていて次の拡張には50万魔素が必要と書かれていた。不動産関係の売店って事か?、次に開放される場所は調理室、俺料理出来ないしそんなに必要なさそうだから封印っと。
・・・調理室は要らない、魔素の無駄使いだそれは間違いない、しかしその次の次の部屋、更衣室、更にそのずっとずっと先には部室棟に文字が有った。こいつは無理をしてでも手に入れたい理由が有る。
部室棟はあれだ、新体操部と水泳部、それにチアリーディング部、部室がどうなっているのか、その構造に興味が有る。更衣室は言葉にする必要も無いだろう、着替える場所が必要だと思うの。
晩飯はおにぎりとインスタントの味噌汁それに揚鷄にサラダを購入していた、味噌汁は30パックで1000魔素、揚鷄は200魔素、サラダは300魔素だった。部室と更衣室は遥か先過ぎて無理だと判断して、最低限健康的な食生活を目指してみる事にした。
「頂きます」
おにぎりはいつもの味、味噌汁はインスタントの味だったし、揚鷄は油が多すぎる、サラダはうん普通、しかし3日ぶりのまともな食事に感動し白衣のままベットにダイブして早めに眠ってしまった。
異世界生活4日目、いつもの用にログインボーナスを貰っていたら、新たなデイリークエストが追加されていた。便所掃除に続いて風呂掃除、便所掃除は銀貨1枚、風呂掃除も同じく銀貨1枚、親の手伝いをしたお小遣いかな。
朝食におにぎり一個とインスタント味噌汁を摂り、ジャージに着替えると槍とナタを手に取ってカバンを背負うと、サバンナに繰り出した。
晴れ渡る空、水平線の向こうにはバッファローだろうか、日が登る方向に向かって走っているようだ。絶対あの列にぶち当たりたくない、レベル1の俺が挑んで良い相手では無いだろう。静かにゆっくりと北を目指して進むのは変わり無いが足取りは遅くなった。
2時間程移動した所で、樹の上に待ち構えて居るゴブリンを目視した、気づかないふりをして通り過ぎようとし、そのまま槍を天空に向かって突き上げる。滴り落ちる生暖かい液体に思わず槍を手放して、「エンガチョ」っと叫ぶと上部から攻撃がやって来た。
昨日までの俺なら死んでいただろう、しかし今は俺もバトルマスター、華麗にナタで攻撃を受け止め、そのまま勢いに押され転んだ。
「話が違いますやん」
バトルマスター取得でチート無双だと考えて居たのは甘すぎた、所詮俺はしがないレベル1の学生、複数のゴブリンを相手にするのは早すぎた。
奇跡的にナタを握ったままの俺は、ゴブリンの追撃を転がりながら交わすと立ち上がり、ゴブリンと対峙する。
「ウキャキャキャキャ」
「ウキャウキャ言ってんじゃねーよ、死ぬかと思ったじゃ無いか。そら逝っとけ」
俺はナタを振り上げるとそのまま、振りかぶって思いっきりゴブリン相手に投げ放った。回転したナタはそのままゴブリンの顔に命中したがまだ意識が有る、転げ回っているゴブリンに対して槍を拾い上げると、そのまま首元に向かって突きつけた。
「ゴウッ」
口元から血の泡を吹いてゴブリンは絶命した、何度か引き抜いた槍を突き刺したので間違い無い。
2体のゴブリンの懐を探って荷物を漁る、コインと魔石をゲットし、はやり死体が見えなくなるまで移動してからトイレを召喚した。
ゴブから漁った得物は棍棒とナイフ、ナイフの方はサビが酷い、ナタと違ってこちらのサビを落とすには専門の知識が必要そうだ。残念ながら俺にその知識は無いので死蔵する事に成りそうだ、中庭に置いて置く事にした。
例の如くコインを磨くと銀貨が2枚に銅貨が18枚、持ち物に当たり外れがあるようで今日のゴブはハズレの方だったらしい。魔石は二匹で3個しか無かったので、そのままスマホにチャージした。
ドロドロのぐちゃぐちゃになったのでジャージと下着は洗濯機に、俺は風呂でシャワーを浴びて白衣に着替える、パンツは替えのパンツを履いている。流石にコンビニでもパンツは手に入るので、パンティーを履くような事は無い。
少しベットで休んでから昼飯を食べ、今日は午後からもサバンナを移動した、少し生乾きのジャージが臭ったが気にしない。
日が沈む前に切り上げてトイレを召喚する、午後からゴブに遭遇することは無くかなりの移動距離を稼げた物だと思う。
洗濯して風呂に入って飯を食う、それ以外にやることと言えば動画を見るくらいしか無いが、流石にもう見飽きた、次のおかずが欲しい所で有るが、コンビニで購入するような真似はしない。
山口先生の歯ブラシを口に咥えながら、「明日も一日がんばるゾイ」と声をだして、洗面所を出て、ベットに入った。
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