第2話「遭遇戦」
「駄目、駄目よ山本先生、こんな場所でなんか絶対駄目」
「おいおい、淫乱なお前さんが1番望んでた事なんだろ、これからじっくりこの保健室で可愛がってやるからな」
USBの中身は期待していた通りの物だった、意外だったのは写っていた2人ともが教員だと言う事で、養護教諭は動画に写り込んで居なかったと言う事だった。
「山本って誰だだか分からんけど教師だよな、相方の女教師は見覚えが有るような、無いような」
この2人、養護教諭を含めると3人の関係性は解らないが、学校内で楽しげな事が行われていた事は間違い無い、完全無修正でしかも素人の教師の絡みなんて興奮しない訳が無い。
一人パソコンのモニターを眺めながら事を済まして、賢者タイムに突入中だ。
正露丸のおかげで腹痛はだいぶ治まった、そうなると現金な物で腹が減ってきた、保健室内には食料がかなり保管されていたが、最初に食べておくべき物は日持ちしないおにぎりだろう。
おにぎり2個とお茶を飲んで、飲み干したペットボトルは洗って置いた、何かに使えるだろうと言う判断だ、家で母親が何度もペットボトルにお茶を入れて持ち歩いていた。
腹が膨れて少し落ち着いた、何で俺こんな訳のわからない場所に居るんだろうか、流行りの異世界転生や勇者召喚にしちゃ説明がなさすぎやしませんかね。
と言う訳でスマホの救済システムを立ち上げて、何か具体的な理由や目的が無いか調べて見た。
分からん、ちっとも理由らしき物が書かれて居ない、解った事は保健室に入り浸っていると、緩やかな死が訪れると言う事くらいだろうか、食料が無くなると詰む。
毎日のログインボーナスでおにぎり3個貰えるなら、食いつないで行く事も出来るかと一瞬頭に浮かんだが、炭水化物だけで人は生きては行けない、最低でもビタミンを取らないと体中から血が吹き出るって、愛読書世界一周冒険記で教わった。
じゃあ何からするのかって話だけど、ミッションを進めて報酬を貰うしか手がない、サバンナを歩き続ける事は怖いけど、一人ひっそり死んでくのももっと怖い。
でも今日の所はこの保健室で一日過ごそう、気持ちの整理を付けるため風呂に入って、汚れた下着を替える事にした。
学生服以外の着衣は全部洗濯機に放り込んで、洗剤を入れてスイッチを押す、40分程で洗いと脱水が完了するらしい。その後、乾燥機に放り込んだら明日を待たずに洗濯物が乾いている。
浴槽に湯を張って学校で風呂に入る、変な感じだけど、あの動画に映っていた教師もここで風呂に入ったのかと考えると、なんだか再び落ち着かない気持ちに成った。風呂から上がったらまたあの動画を見ようか、と考えながらひとっ風呂浴びて真新しい下着に履き替える。
学校指定のジャージはダサかったが、寝間着代わりに使えるなら良いだろう、明日外に出るのに学生服とジャージどちらが良いのかと言う事を考えながら、時間の経過を待っていたのだがいっこうに外が暗くならない。
スマホを確認すると既に20時は回っている筈だ、トイレの個室に籠もっていたのは朝の10時半頃なので日が落ちないのはどうにもおかしい。トイレに移動して用を足した後、扉を開けて外を確認すると、月明かりすら無い暗闇で、この中庭と言う異空間だけが暗くならないと言う事が解った。
カーテンを締め、更に遮光カーテンも締めると、薄暗く成った。夜中と言う程暗くは無いが、これなら眠る事が出来そうだ、保健室のベットの中に潜り込むと目を閉じる。このベットの上でズッタンバッタン大騒ぎをしていたんだろうなと思いながら、眠りに付いた。
目を覚ましたのは朝の6時、昨日は21時には寝たので、目が覚めるのも当然だろう。それでも9時間も眠れた事に驚いた程だ。
まず一日の最初に行う事はログインボーナスの確認、おにぎり3個とペットボトルのお茶が出て一安心、これが他の物が出てきた日には計画が大きく崩れる。
おにぎり一個を食べると残りの2つは昼と夜の分に残して置く、防災カバンを取り出し、おにぎり2個とペットボトルの残りを入れて置く。出発前に歯を磨こうと養護教諭のカバンに有った歯ブラシと歯磨き粉を失敬した。
トイレに入って最終準備を終えた後、サバンナに乗り出す、武器は無いし靴は上靴のまま、こんな状態で大丈夫かと自問自答したが行くしか無いから行くだけだ。
「熱い」
太陽が登ってくる方向を東と定め、とりま北に向かって歩き出す、何故北かと言えば熱いから涼しい方向を目指したいそれだけの理由しかない。
スマホを確認すると丁度時刻が8時に成っていた、まだ1時間と少ししか歩いていないのに、足が棒のようだ。普段はいてる運動靴の恩恵が、偉大だったと言うことに気づかされる。
見渡す限り草原が続いて終わりが無いように思えた、ポツリポツリと樹が生えて居るので全く目印が無いと言う訳では無い、方向は太陽の位置だけが頼りなので昼に近づくと怪しい物が有る。今の所まだ右半身に陽の光が降り注いでいるので、北に向かっている筈だ。
「や、やあ、こんにちは」
目が合った、相手は羽の生えたライオンさん、襲われる前に襲うのが鉄則なのだが、無理、こんなの絶対に無理、俺じゃ1ダメージも与えないまま、頭からがぶりと食われてします。
トイレ、トイレまで逃げないと、既に何キロも北上してきたから、飛んでるライオンさんを振り切る事なんて出来ないだろうが逃げるしか無い。視線をそらさずに後ずさりしようとした所で、突然目の前に扉が現れる、どこでもドアかなと急いで中に入って鍵を締めるとトイレに帰って来ていた。
「これがトイレ召喚か、なるほどチートスキルだ、意味は分からんけど」
なんでトイレ、保健室でいいじゃん、等々意味不明な能力では有るがチートでエクストラスキルで有る事は間違い無い、これで生き延びられる可能性が大幅に上がった。
保健室に入って椅子に腰掛けスマホを確認する、いくつかミッションが達成していたので確認し、報酬を貰う。
ミッション『異界の大地に立つ』、初日に外にいた気もするのだが、直ぐに引っ込んだのがまずかったのだろうか、兎も角ミッションは達成され、報酬を得た。
トイレットペーパー12ロール、大事よ確かに大事な物、無いと大変だもの、って今欲しいものでは無い、トイレの用具入れにもかなりの数のトイレットペーパーが保管されて居る。
気を取り直して次のミッション『魔物から逃げ延びろ』、報酬は靴、これこう言うので良いんだよ、逃げ足と靴の性能は命に直結するよな。早速報酬画面をタップして靴を取り出す。
「トレッキングシューズじゃん、何の革か分からんけどこれは良いものだ」
汚れた上靴を履いて居たく無かったから今は裸足だ、出来れば雪駄かスリッパが欲しい、欲を言えば樹脂製のサンダルが欲しい、アメリカ製のアイツは最高の履き心地だ。
クリアーしていたミッションは2つだけだったようだ、靴を得られた事と、トイレが呼べば現れると言う事が解った事は大収穫だった。
防災カバンに入れて置いたおにぎりがかなりヤバイ臭いがする、サバンナの大地を半日歩くだけでも耐えられなかったようだ、残念ながら土に帰すしかない。それももったいないので中庭に居る鯉たちに食べさせて上げた。
昼抜きは無理だと思う、何キロ歩いたかは解らないが、カロリーは相当消費している筈だ。と言うことでカップ麺と乾パンを食べる事にした、カップ麺の方は以外に日にちが持たないって事と、乾パンは食べた事が無いのでお試しと言う事で口にした。
腹は膨れたが栄養のバランスはスコブル悪そうだ、そうそうに風呂に入って汚れを落とすとパンイチでパソコンの前に座る。学生服で動くのは無理だと判明したので、明日からはジャージが戦闘服だ。
つまり部屋着が無くなってしまったと言う事になるのだよ、決してやまし気持ちでパソコンに向き合っている訳では無い。
通しで2回動画を見て解った事が有る、男の方の教師は山本で女の方は久美、それで机の中に合った書類の事を思い出し教員名簿と2人の名前を合致させた。
まずは男の方、山本太郎36歳体育教員、2年3組の担任、既婚者。女教師は大場久美、旧姓田中24歳数学教師新婚、数学教師。
つまりW不倫を決め込んでいる不貞の輩と言う事になる、よくもまあ学校の保健室でやらかせた物だ。
ついでに言うとここの養護教諭の名前も解った、山口律子29歳独身、身長169センチ体重49キロのEカップ、身長は俺とそう変わらないのに体重が10キロ以上少ない。あの写真を見た限りではもう少し体重が無いとおかしいのだが、身体測定のデータを誤魔化して居るのだろうか。
今日も一日ご苦労様でした、明日も命が永らえると良いなと思いながらベットの中に一人さびしく入っていった。
異世界生活3日目、ログインボーナスはおにぎり3個とお茶、おにぎり一個を食べた後残り2つは保健室のテーブルの上に置いて置く、持ち出すのはペットボトルの水と念の為のカロリーメイト。
冒険の旅に出るまでに日課を済ませて、トイレを掃除する、デイリークエストのトイレ掃除が完了して銀貨1枚を手に入れた。デイリークエストの存在に気付いたのは昨日の夜寝る前、スマホをチェックしていてクエストの中にデイリーと言う項目を見つけた。初日に目を皿のようにして確認したのだが、あの時に気づけなかったのだろうか、2日分損をした。
この銀貨が何の役に立つのかは解らないが、貰って置いて損は無いと思いたい、異世界住人との取引が出来るなら必要な筈だ。
そっとドアを開けて外の様子を伺う、羽ライオンがまだ居たならしばらく引きこもるつもりで居たが、外には何者も居なかった。
また太陽光を右半身に浴びならが北を目指して進んでいく、今日は靴の調子も万全なので、昨日よりスイスイ歩ける。スマホ時間で2時間歩いた所で休憩に入る、場所は大きな樹の下で日陰が出来ている、周囲に人影も、動物影も魔物影も無いので安心して地べたに座った。
大樹を背にしてなんとなく上を見上げる、緑色の小人さんと目が合う、上から小人が降ってきたので全力で転がって小人の襲来を避けた。
「ウッキー」
猿かよ、と突っ込んでみた物の小人は俺を襲う事をためらわない、俺を見る目が餌だと喜んでいる。小人の身長は俺の腰より少し高いくらい、手にしているのはサビサビのナタのような物らしい、武器、武器はとカバンに手を突っ込んで硬い物を握ると小人がこちらに向かってきた。
カバンから出した物を小人の顔に向かって照射する、狙って出来た物では無く偶々だ、LEDの眩しい光が小人の目をくらませているすきに、俺はその懐中電灯を思いっきり振り上げて小人の頭を殴った。
小人殴られた衝撃で転んでナタを手放す、後は・・・ナタを奪った俺は小人の首筋を切り裂いていた。
「ウゴッ」
そのまま動かなく成った小人を眺めて居ると、スマホからメッセージを知らせる着信が合った、ミッション『ゴブリンを殺ろうぜ』を完了したお知らせだった、仮称小人がゴブリンだったらしい。
直ぐにでも保健室に帰りたかったのだが、討伐した魔物の持ち物を漁れと言う物が有ったからだ。
「無理、こんなん無理っすわ、グロっ」
レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ、朝ごはんのおにぎりが大地にぶちまけれてしまった。そもそも現代っ子の俺が死体を見るのも無理、身内の葬式だってまだ体験してないくらいなのに、人形生物のしかも俺が殺った相手の懐をさぐれなんて無理ゲー過ぎる。
落ち着きを取り戻すのにしばらく時間を掛けた後、戦利品として古びたナタとゴブリンが腰に着けて居た袋、それだけを拾うと死体が見えなく成るまで移動してからトイレを呼び出し、保健室へと移動した。
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