第3話 ミキ

全体夜礼のあと、レイ子はナナ子に遅刻に対しての厳重注意を受けた。

「コアタイムが丑三つ時だってわかってるでしょ!?それまでに準備したりすることあるでしょう?だいたい遅刻になるってわかった段階で連絡しなさい。報連相は基本です!」


「はー…い」

死後の世界つらっ…だいたいクリーンなイメージつけたいっていう理由のこの白いワンピースの制服も逆効果なんじゃ?あー、MARNIのバッグ欲しい。そういえば、遅刻しそうだったから幽霊特典でタクシー使ったのなんか申請いるっけ?急いでたからめっちゃ汗かいちゃって悪いことしたなー


「…ちょっとレイ子さん?聞いてるの?あなたが担当する子の話するわよ」

「あ、あぁ、はいっすみません、聞いてます。」

ナナ子があきれ顔で資料を手渡す。


「こちら、表参道のアパレル会社勤務のミキさん。29歳。去年までは北陸に住んでいて彼女のご先祖様が主護していたんだけど、そのご先祖様、ミキさんの妹さんも掛け持ちでやられてて…。で、ミキさんがこっちに引っ越してきちゃったもんだから、ちょっと距離もあるし歳だししんどいってなってうちに話が来たの。」


「え、自分の子孫なのにひどくないですか? 妹びいき!」


「そんなことないわよ。子孫かわいさでうちみたいなちゃんとした大霊園に引き継いだわけだし。」


「そういうものなんですかぁ…」

レイ子は再び資料に目を落とす。

「…それにしても、、、このミキちゃん、男運悪すぎません??転職したばっかりだっていう会社もなんか変わってるし。」


ナナ子の声が一段下がる。

「実は…前任から引き継ぐまでにちょっと守護霊不在の期間ができちゃったせいで変な方向にいっちゃって。ミキちゃん、若干スピ系に走っちゃったのよ。」


「スピ系とは…?」レイ子が首をかしげる。


「スピリチュアル系。なんかこう、タロットカードとか、パワーストーンとか神社仏閣巡りとか…?いやいや、全然悪いことじゃないのよ?むしろうちらが言うなって感じなんだけど。でもちょっとこじらせてる感あるかも~。でもね、全然悪い子じゃないから!絶対レイ子さんなら大丈夫だと思うわ。それに、表参道のアパレル会社勤務だし!キラキラ港区女子ライフ送りたいレイ子さんにぴったりだと思うわ。」


「マジですか。」

ナナ子の貼り付けたような笑顔に若干の不安を覚えるレイ子だった。



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