第2話 全体夜礼

えぇーと、6号1種ロ…6号1種ロ…12…

「レイ子?もう夜礼始まってるよ!早くー」

きょろきょろ入口を探していると、受付犬のハチがレイ子を呼ぶ。

暗がりに白いモフモフは良い目印だ。


「ハチ!ありがと!広くてまだ迷っちゃうんだよね~」

「もう…。せっかく守護霊に昇進したんだがら昼遊びもほどほどにね…!」

「わかってるよ~」

そう言いながらレイ子がハチの傍らにある石碑に触れる。

一瞬刻まれた文字が光って消えると同時にレイ子も消えた。

ハチは絶対わかってないでしょっていう顔をして見送ったあと、伸びをして受付の仕事に戻るのだった。


レイ子がそろりと部屋に入ったとき、月初の全体夜礼の最中で各エリア主護霊たちが前月の結果報告を行っていた。


「…我がエリアの成仏数は△△と目標未達でした。要因としましてはフリーの浮遊霊の背後霊昇格数の減少が考えられまして、守護霊を筆頭にチーム力を高めて成仏率のアップに努めてまいりたいと思います。」


そう言い終わったのはレイ子の上司にあたるナナ子主護で、大勢のスタッフに紛れてこっそりと入室したレイ子を目ざとく見つけ、遅刻を咎めるように顔を歪ませた。


「えー、では最後に園長から一言お願いします。」

司会者の言葉に、立派に蓄えた髭を撫でて咳払いをしたあと園長は立ち上がった。

「ん”ん、うほん。…えー、我が園はこれまで、この立地とブランド力からたくさんの方々に憧れの地と支持されてきたが、近年の不景気から郊外に流出する霊層も多く、マーケットが縮小しつつある。このまま成仏数が下がり続ければ、霊格の降格もあるやもしれない。何とか対策を打つ必要がある。要となる守護霊諸君、より一層励んで欲しい。」


守護霊に昇格したばかりのレイ子は、だるっって思ったけど顔に出ないように堪えた。






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