第8話 再会
結局、電話はつながることはなかった。
そして、数日後わたしは新しい新居で新生活に向けて部屋に荷物運びをしていた。
「あの、最後これどーしますかー」
「あ、じゃあ、それは窓辺に置いといてください」
「はーい、よいしょっと」
「すみません。なにからなにまで」
「いえ、これが仕事なので」
快活に笑う引っ越し業者のお兄さん。
「さて、これで最後ですね……。じゃあ、僕はここで」
「はい。ありがとうございました」
「はい、また引っ越しの時はぜひうちに」
「はい(笑)」
出口から消えていく引っ越しのお兄さんを見送って、私はリビングを眺めて深く息を吸った。
部屋にはそこら中に段ボールが積まれている。
結局、本は全部持ってきてしまった。
まあ、うまく収納しよう。うん、がんばろう……。
その前にお隣さんにご挨拶しないと、私はひそかに胸で意気込む。
変な緊張だ。
私が引っ越したのはオートロックのマンションの3階の一番右の一室。
つまり、お隣さんは左の部屋の人だけだ。
いい部屋だといいけどなぁ~。そんなことを思いながら裸足にスニーカーを履いて、外に出る。
隣の部屋の窓の前まで行き、深く深呼吸をする。
よし、いける。
そして、私はピンポンを押した。
「…………」
物音がしない。
「………………」
あれ?
二回目ピンポン。
「……………………」
三回目ピンポン。
ドア越しに聞こえるチャイム音。物音は聞こえない。
どうやら留守のようだ。
土日だからいると思ったんだけどなぁ……。
出直すか。
そう思った時だった。
「紗矢?」
振り返った背中にかけられた懐かしい声。
私が振り返ったその先には――
引っ越しの支度をしていたら、昔の命の恩人の連絡先を見つけたから、とりあえず電話掛けてみた ココアシガレットー! @COCOASIGARETTO
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