〜遥かなる旅立ち〜 導かれし少女 4

黄昏時の学校帰り、サクラは昨日の事が気になっていた。



紅い橋の先が真っ暗な闇に覆われていた事。



自分が半透明に見えた事。



それに、何処か怖くも懐かしくも感じた事。




『(一体、あれは何だったんだろう……。)』




きっと気のせいだと言い聞かせたが、現実に有った出来事に、もやもやしていた。



『よっ! サクラ!』


『サクラ、一人で帰らないでよ。』


帰りの校庭で華子と隆が声をかけて来た。



『二人共……。』


元気の無い笑顔で返すサクラ。


『ったく、三人で一緒に帰ろうって言ったでしょ??

なのに、一人で帰るなんて連れないね。

一体どーーしたのさ? 昨日から変だよ、アンタ。』



『サクラ、大丈夫かい? 

何かあったのかい?』



『ゴメンね。何か悪い夢でも見てたみたい。』



『ったく。アンタは肝心な時は一人で抱え込むからね。』


『華子の言う通りだよ。僕がサクラを守るって言ってるじゃないか。』


『弱っちいアンタが言うなぁ~~!』



まるでコントの様に華子が隆の頭を叩く。



『いてて。華子。』



そんな隆と華子のいつものやり取りを見ていて、何だか安心するサクラ。


あれは何でも無かったんだと自分に言い聞かせる。



そのまま三人でいつもの様に帰っていると、サクラは目の前に飛び込んで来た光景に困惑した。



『な、なんで私達、此処へ……。』


『あれ??

アタシ達、いつの間に此処に来たんだろ??』


『そうだよ、サクラが嫌そうだから、別の道で帰ろうって三人で話してたのに……。』



三人はいつの間にか導かれるかの様に、城山公園の前に来ていた。






ドクンっ!






またサクラの心臓が大きく鼓動する。






ドクンッ!






『わ、私……。』



『えっ? 何? サクラ。』


『ど、どうしたんだい? サクラ?』



サクラは無意識に公園への坂道を歩いて行く。



『私、行かなきゃ……。』




何かに囚われているかの様に、サクラの目から生気を感じない。



『サ、サクラ?』


『ア、アンタどうしたって……。』



二人も普段とは違うサクラの表情を見て、慌ててサクラを追った。




サクラはそのまま導かれる様に、公園の中に有るあの紅い橋の前に立ち止まった。




紅い橋の前には、橋の両側に冬花の子供達が座っていた。



『かぁ~~ごめ~~かぁ~~ごぉめ~~。

よぉ~~あぁ~~けえのばんにぃ~~。

つ~~るとかぁ~~めがすぅ~~べった~~。

うしろのしょうめんだぁ~~あ~~れぇ~~。』



昨日と同じ歌を歌ってる。





『サクラお姉ちゃん。行っちゃうの?』


『サクラお姉ちゃん、うしろのしょうめんは……。』







ドクンっ!




サクラは自分の心臓の鼓動で胸を押された。




ドクンっ!!





『サ……、ク……ら。』




紅い橋の先から声が聞こえる。




『ああ……。私、やっとまた貴方と会える日が来たのね……。』




『来ては……。いけ……ない。』




『……でも、私は貴方と約束したから……。』




『さ、サクラ!? アンタ誰と喋ってるの!?』


『だ、誰かいるのか!?』






ドクン!




サクラの心臓の鼓動が辺りにこだまする。




『えっ!? 何?? この音はっ!』


『も、もしかしてサクラの心臓の鼓動!?』


『り、隆っ!! 紅い橋の先が!!』


『さ、先が見えない!!』




サクラは、そのまま何かに導かれるかの様に紅い橋を渡って行く。



『サ、サクラっ! 待ちなさいっ!!』


『待って! サクラ!』


必死に止める二人の声が聞こえないのか、サクラはそのまま橋の先の闇へとゆっくりと歩いて行く。



サクラが闇の前に立つと、急に辺りが静まり返る。




『……ねぇ。知ってる……?』



振り向きもせずにサクラが呟く。



『黄昏時は、黄泉の国に繋がってるのよ……。』




『サクラ? 何を言って……?』


『あっ、華子っ!サクラがっ』


『サ、サクラっ!!』



その時だった。


突然半透明になるサクラ。



『私、行かなきゃ……。

私を待ってる人達がいる……。

剣が私を呼んでいる……。

例えまた同じ歴史を繰り返しても。』



『待ってる人達?』


『何が呼んでるのよっ!?』


『駄目だっ! 行っちゃ!!』


『サクラぁ~~っ!!』



そして紅い橋を渡るりきると、サクラは闇の中へ消えた。





『サクラ……。ごめんなさい。

私は貴女の宿命を知っていながら……。

私には歴史を変える事は出来無い。

貴女が命をかけて守り抜いた歴史なのだから。

でもねサクラ、貴女だけは私が必ず救ってあげるから……。

私の命をかけてでも。』



何かを力強く握り締めながら、冬花が遠くから消え行くサクラを見守っていた。





サクラの悲しき宿命の旅が始まる……。

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