〜遥かなる旅立ち〜 導かれし少女。2
次の日。
サクラはまたボンヤリと教室から外を眺めている。
『で有るからして……。』
サクラの耳には教壇の先生の声は聞こえていなかった。
『ではここを、如月くん……。』
サクラは気が付いて無かった。
『サっ、サクラっ! ほ、ほらっ! 隆もサクラを!』
『サクラ! 先生が呼んでるよ!』
隆と華子は慌てて先生に聞こえない位の小声でサクラに知らせる。
『如月くん?』
サクラはやっと気が付いて、驚いて席を立った。
『は、はいっ!』
『どうしたのかね?そこのページを読んで。』
『はっ、はい! ええと……、この栃木県小山市は室町時代に大きな騒乱が起こり、その首謀者の
その後も息子の
『宜しい。では次の所を……。』
サクラは何とか切り抜けてホッとする。
『(でも知らなかったな。こんな街にもそんな歴史が有ったなんて。)』
何故か興味を惹かれてパラパラと教科書をめくった。
こんな地方の田舎街にもこんな歴史が有ったのだと。
それにこの小山若犬丸って人、この時代に珍しい人だなとも思った。
まるで色々な所に冒険の旅に出てる人みたいだと。
何故かサクラは、この小山若犬丸と言う人物に強烈に心を惹かれた。
きっと自分とは真逆で、未来を諦めずに自分の力を信じて精一杯生きた人なのだなと。
そして、学校も終わり辺りは夕暮れを迎え様としていた帰り道の事。
『はぁ。ったく今日の歴史の授業、ヒヤヒヤしたよ!』
『あ、あはは。ゴメンね華子、でも助かったわ。』
学校も終わり、サクラは華子と二人で帰っていた。
『そう言えば隆は?』
『流石に昨日はサボったから、今日は塾に行くんだって。』
気がつくと二人はいつの間にか、川沿いの公園の近くまでやって来た。
『そう言えばさ! 今日、そこのカラオケ屋でH大生とカラオケなんだけど、サクラも一緒においでよ!
イケメン揃いよぉ~~!』
そう、華子は誰から見ても容姿端麗でスタイルも抜群で美しいキリっとした目をしている。
それでいて、勉強も出来てスポーツ抜群。
色素が薄いく、ほんのり茶色の少し癖の有る長い髪が美しくトレードマークでも有る。
おまけに飾りっけの無い性格だ。
だから当たり前の様に、男子からの憧れのマトだ。
それに後輩の一年生の女子からもラブレターを貰った位だ。
『いつも誘ってくれてるのにゴメンね。私、今日も稽古があるから…。』
『なんだ~~、また稽古か。
しかしサクラも大変だよね。花の女子高生なのに毎日毎日稽古だなんて。
たまにはパーーっとやれば良いのよ。』
『華子はパーーっとやり過ぎよ?』
『ははは……。ま、まーーね。
こりゃ一本取られたよ。』
『『あはは。』』
二人は笑いながらで見つめ合った。
あまり人付き合いが得意では無いサクラ。
そんな自分といつも一緒にいてくれる隆と華子。
殆ど毎日が稽古で、付き合いの悪い自分に相変わらず一緒にいてくれる隆と華子には本当に感謝している。
『あっ! 話してたらカラオケ屋を通り過ぎて公園までちゃったよ!
あれ?? そーー言えば、ここって今日の地元の歴史の授業でやってた、あの何とかって殿様の城が有ったって言う公園だよね?』
『うん……、そうだったね。』
そこは栃木県小山市の中心部に有る城山公園。
かつて、祇園の城と呼ばれ鎌倉時代より栄えてきた小山氏の城跡。
『しっかし、こんなローカルな街にもそんな歴史が有ったなんてねーー。』
『本当ね。』
『じゃ!サクラ。私カラオケ行ってくるね! また明日ね。』
『うん。また明日ね。華子。』
そんな時、急に声を掛けられた。
『『ねぇ~~!』』
そこには小さな子供の兄弟がいた。
『あれ?? この子達、サクラの姉ちゃんの子供達じゃない。』
『二人共こんな所でどうしたの? お母さんは??』
心配そうに声を掛けるサクラ。
『公園でサクラ姉ちゃんのお友達と怖いお兄ちゃんがケンカしてるの。』
『してるの。』
『助けてあげて。』
『助けてあげて。』
『って、それってもしかして隆の事じゃない!?』
その時、公園の奥から悲鳴が聞こえた!
『サクラ、あの声ってやっぱり!』
その声を聞いて、サクラは飛び出す様に公園への入口の坂道を駆け上がった。
『あっ! サクラ! ちょ、ちょっと待ってよ!』
華子も慌ててサクラの後を追いかける!
公園に向かう坂を駆け上がると、遠くで隆が二人の不良に絡まれていた。
『お金なんて持って無いです……。
ほっ! ほら! お財布の中もこの通りに……。』
『使えない野郎だなぁ~~。俺たちに時間取らせてよぉ~~??
それなら、ストレス発散させてくれや?』
『ギャハハ! だなぁ~~! お兄ちゃん!!』
サクラは弱い者イジメは大嫌いだ。
そしてもっと嫌いなものは、弱い者しか自分を強く見せられない奴。
サクラは強い怒りを覚えた。
『サ、サクラ!』
慌てふためく華子。
『分かってる。危ないからここでちょっと待ってて、華子……。』
サクラが無言で近づくと不良達と隆が気がついた。
『サ、サクラ!』
『あーー?
なんだい姉ちゃん??』
『俺たちとデートでもしてくれるんかい?』
不良達は肩をいからせながらニヤニヤとサクラに詰め寄って来る。
不良の一人がサクラの肩に手を掛けようとした瞬間、サクラは右腕を掴み、一瞬で廻す様に地面に組み伏せた。
警察官が使う逮捕術の様な技だ。
うつ伏せにされて、腕を背中に向けて垂直に押さえ付けられて身動きが取れない。
サクラは、ジリジリと押さえ付けた腕を逆の腕の方へと締め上げて行く。
『いてててっ!! はっ離せっ!
この野郎っ!!』
『なっ! なんだ? 小娘っ!』
もう一人がサクラに向かって殴りかかって来るが、サクラは一人を組み伏したまま腹に蹴りを入れる!
『ぐわっ!』
サクラの蹴りで吹っ飛ばされ、そのまま倒れ込んだ。
『……これ以上はタダではおかないわよ。』
そのまま、締め付けを強くしながら警告を促す。
『い、痛てぇ~~って! わ、分かったから離せ!』
『くっ……。お、覚えてろ!』
サクラの圧倒的な強さに恐れ慄いたのだろう、不良達は犬の遠吠えの様な捨て台詞を吐いて、一目散に逃げて行った。
『あ、ありがとう。サクラ。』
『ったく隆ぅ~~! あんた男でしょ?
何やってんのよ!?』
『はは……。ゴメンよ。華子。』
サクラは隆の鞄を拾って砂を払って隆に渡たした。
『怪我はない?』
サクラが心配そうに隆の顔を見つめると、隆は申し訳なさそうな顔になる。
『ゴメンよ……。
僕がサクラを守らなければならないのに、いつも守られっぱなしで……。』
『いいのよ。あなたのその気持ちが嬉しいんだから。』
『ったく……。
隆のお陰でイケメンとのカラオケ大遅刻だわ!
まあ、仕方ないっ! せっかく今日授業で習った事だし、気をとりなおして三人で散歩しようっか!』
『そう言えば私、この公園来たの初めて。』
『よーーし! じゃあ行こうよっ!
隆っ! もう絡まれるんじゃないわよ!』
『そ、そうだね。』
『そうね。今日授業でも習ったんだし、奥まで行ってみましょう。』
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