第13話 密談① ルーク視点

 僕はシルヴィのお父上と共に閣下の執務室へ移動し、話をすることになった。


「それで話とは? ルーク・ベレスフォード殿」


「やはり閣下は僕のことをご存知でしたか」


「私もナターシャも知っている。シルヴィは貴殿と年齢差が確か5つだから、シルヴィが15歳で社交界デビューした頃に、貴殿は王族籍を抜けて公爵家当主になられていた。そして、王家主催のパーティーなども滅多に参加されていないようだったから、シルヴィアが貴殿のことを知らなくても無理はない」


「確かに。僕は18歳になった時に王族籍を抜けましたから。式典やパーティーは本当に最低限しか参加していないからまともに面識はないですね。ただ、甥の婚約者だから当然名前は知っていましたし、数少ない参加したパーティーで遠くから彼女をお見かけしたことはあるので、僕は一方的に彼女のことは知っていました」



 我が国では男女とも18歳で成人とみなされるので、18歳で僕は王族籍を抜けて、当時既に国王に在位していた兄上より公爵位を賜ることになった。


 この頃には既にフィリップもエドワードもエリザベスも生まれていたから、兄上のスペアとして僕が王家に残る必要もなかった。


 それに、パーティー会場では基本的に彼女とフィリップの周りは挨拶にくる人が多いので、自分からは近づかなかった。


「本題なのですが、シルヴィア嬢と婚約させて頂けないでしょうか?」


「それは王家からの補填という形で申し出ているのか? 自分の身内の不始末の責任を取る為に」



 そう取られても仕方ない。


 現状、王家が彼女に不義理をした為、王家が彼女の為に元々の婚約とは完全に同等とまではいかないかもしれないが、駄目になった縁談の代わりに良い縁談を世話するというのは当然だ。


 元々の相手はフィリップだったから、まずは同じく王族関係者からというのが筋だ。


 もし王家から補填という形で紹介するなら、独身で婚約者のいない僕は一番の候補者になり得る。



「王家の意思とは関係ありません。お恥ずかしい話ですが、昨夜偶然酒場で彼女が飲んでいたところにたまたま居合わせ、彼女と色々お話させて頂いたのですが、そこで彼女に好意を持ちまして。嫌々仕方なしに甥がしでかした不始末の責任を取るということではなく、私が望んで婚約したいのです」

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