第8話 酒場にて⑥ ルーク視点
「マスタぁ~、ありがとぉ~! ご馳走様です~! ではぁ~わたくしはぁ~帰りますぅ~」
シンデレラにはアルコールが入っていない為、非常に飲みやすく、彼女はごくごくと飲んで帰り支度を始める。
シルヴィアが座っていたスツールから降りようとしたところで足元がふらついていたので、僕も慌てて降りてさっと手を腰に回し、彼女を支える。
「こんな時間に酔ったまま一人で帰るのは危ないから、そこの王子様に家まで送ってもらいなさい」
「はーい」
彼女が返事をしてすぐセバスチャンは彼女に聞こえないように僕に耳打ちしてきた。
「ルーク坊ちゃま。ベレスフォード公爵邸に彼女を泊めるのは結構ですが、相手は貴族令嬢であることをお忘れなきよう」
セバスチャンには僕が考えることなどお見通しだったようだ。
僕とシルヴィアは今のところは別に婚約者同士でも何でもない。
何の約束もないまま手を出すのは論外だ。
でも、同じベッドでただ一緒に寝るくらいなら大丈夫だろう。
シルヴィアが起きた時の状況で、これに懲りて、酒場で一人で酔っぱらうまで飲むことの危険性も理解してくれると思いたい。
お酒に酔って前後不覚の若い女性を連れ込み宿や自宅に連れ込むのなんて、余程体型に恵まれていないチビで非力な男以外容易に出来てしまう。
それは彼女の想像以上に容易なことで、もしそんな男に捕まってどこぞに連れ込まれてしまった場合、女性側がどんなに力ずくで抵抗しても男の体躯や筋力には敵わず、結果、酷い目に遭い、泣き寝入りするような事態になるということもある。
酔った女性を手籠めにすること目当てに酒場に通っている男だっているのだ。
たまに酒場で一人で飲むのも悪くはないが、そのような危険と隣り合わせだということを認識して欲しい。
ましてやシルヴィは高位貴族令嬢で、見た目も美人なのだから。
僕は苦笑いしながら返事をする。
「わかったよ。
「では、彼女のことはルーク坊ちゃまにお任せします。私は彼女はルーク坊ちゃまのお相手としては 身分的に釣り合いも取れますし、賛成です。ただ、これからの王家側の動きで、婚約破棄を撤回し、フィリップ様の正妻は彼女の話にあった男爵令嬢で側妃を彼女にして政務をさせるということが選択肢の一つとして十分考えられます。もしルーク坊ちゃまが本気で彼女と婚約したいなら、余計な横やりが入らないようにさっさと行動する必要はありそうですね」
「そうだね。明日、ローランズ公爵邸に行って、彼女を送り届けるのと同時にお父上に話をしてくるよ。じゃあ、セバスチャン。近いうちにまた来るから。次は彼女と一緒に来れたらいいな」
「今日は来店ありがとうございました。次回はルーク坊ちゃまが彼女と一緒に来られることを楽しみにお待ちしております。では、おやすみなさい」
こうして僕とシルヴィアは前以て呼んでおいたベレスフォード公爵家の馬車に二人で乗って、
シルヴィを連れてベレスフォード公爵邸に帰った時、僕の帰宅を待っていた使用人一同が「ルーク坊ちゃまがお嬢さんを屋敷に連れてきた!」と大騒ぎになったのはまた別の話だ。
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