第49話 帰国
結果的に得た情報は、
覚醒者は死の淵から蘇えったリミットの人間がなる事があるという事。
自然の力のような物を使い、
現在では”炎、雷、水、大地”が確認されているという事。
覚醒する際にあの女性の声で語り掛けられるという事。
しかし、俺だけその言葉が違い、
回数も違う。
ではリミットと言われる人間は何を基準にリミットだと判断しているのだろうか。
「もう一個聞きたい事があるんだが?」
「はい。
何でしょう?」
「俺は最後と言われた事で自分がリミットである事を悟った。
でも他の奴はそんな事言われて無いのにどうやってリミットを知るんだ?」
「それはすごく簡単な事です。
一番始めの人生とリミットの人生では名前が同じになるんですよ」
「何回も生き返るのだから名前が被る事もあるんじゃないのか?」
「それが不思議な事にその例はありません。
日本支部やアメリカ支部、他国の支部からもその報告は上がっていません」
確かに俺は今回、名前が同じくして生まれてきた。
でもこの情報はリミットのシステムが分かっていれば、
自分が生き返るのが最後だと分かるが、
そうでなければ分からないとなればまだ見つかっていない生き返りの人はリミットと知らず人生を終える事になるのだろうと思った。
「今後雅さんはどうされますか?」
「どうもこうもこれ以上得る情報は無さそうだし、
今回は大人しく日本に帰る気でいるけど」
「他の覚醒者の元へは行かないのですか?」
「行っても持ってる情報量はお前と変わらないだろう。
さらにまた襲われるのも嫌だしな」
「何かあった時の為に顔見知りになっておくのは良いと思いますけどね」
「考えておくよ」
確かにここで他国の覚醒者に会っておけば、
何かがあった時にスムーズに事が運ぶとすれば会っておくのは必要ではないかと考えた。
「俺の情報を他の奴に伝えておいてもらうのは出来るか?」
「それは出来ないですね」
「何でだ?」
「もし情報が洩れたら、
あなたは世界中から狙われますよ?
そうならない為に、
覚醒者の情報は文面やデータにはせず、
知っているべき人のみが知る内容となるわけです」
「写真もないのか?」
「ありません」
「でも各国の支部に問い合わせれば顔写真くらい見れるだろ?
名前さえ分れば…」
「同じ名前の構成員もいますからね。
断言は難しくなるとは思いますよ?
覚醒者とは絶対教えてくれませんからね」
「でもおたくらの構成員方は、
俺の名前も知っていたし、
覚醒者であることも分かったような言いぐさだったけど?」
「それは単純な事。
日本とアメリカでは国の強さのバランスが違いますからね。
尚且つアメリカと日本の関係性は何も言わなくても分かりますよね?」
「言いなりってわけか」
「その通りです」
俺はどうしようもない事だと諦めた。
しかし、いざという時の為の保険は掛けておくべきだと考えた。
「じゃあ今後俺の情報が外に出たという場合はアメリカを疑うべきなんだな」
「日本の国の誰かが言う可能性も考えられますが?」
「海外に漏れる場合はアメリカとしか考えられないだろ?」
「抜ける輩もいますからね。
どこから情報が洩れるかなんて分かりませんよ」
「真っ先に疑うのはアメリカ何だよ。
俺は…」
「ふふふ…。
分かりましたよ…。
厳重に外に漏れないようにしておきます」
「よろしく頼むよ」
俺はそう言って部屋を出た。
そうして最初の部屋へと戻った。
「これからどうするの?」
「とりあえず用事はないし、
アメリカ観光するか、
日本に帰ってのほほんとするかだな」
「私は帰りたいな…。
なんか言葉もあんまり分からないし、
襲われたら怖いし…」
「そうだな…。
荷物まとめてすぐに帰ろうか」
「うん!」
俺はもう少しアメリカに残って探りを入れたり、
力の制御や秘密を知りたかったが、
沙耶がどう見ても精神的に限界だった。
その為、今回は一度日本に帰国する事に決めた。
荷物をまとめて、
すぐに空港へと向かった。
ウェスリーにはもう少し残っていかないかと言われたが、
沙耶の事を考えるとそこはうんとは言えず、
次回近いうちに尋ねる事を伝えた。
「日本に帰ったら新居の用意してもらわなきゃだけどいいの?」
「とりあえずセキュリティも万全だからあのままで良くないか?」
「でも人目気にするなら、
あれは難しいよ?」
「まあそんな事考え出したら、
安めのアパートとかマンションに高校生二人が同棲の方が目立つ気がするしな」
「確かに…」
俺と沙耶は再びプライベートジェットに乗り込み、
日本へと帰国した。
日本に着き、
電車へ乗り込んでマンションへと向かった。
部屋の鍵を開けて疲れ切った沙耶はソファーへとダイブ。
俺は冷蔵庫から冷たい水を取り出して蓋を開けた。
そしてそのまま服を脱ぎながら風呂場へと向かい、
シャワーを浴びた。
首を握られた時に火傷した後が完全には治っていない。
流石に覚醒者でもすぐに完治はしないのだろうか。
シャワーを浴び終わり、
髪を乾かしていると、
電話が鳴った。
非通知で掛けられて来ていたので、
達也だと思い、
電話に出た。
「雅さん?」
「何だよ。
もう帰って来たの分かったのか?」
「そりゃあ空港から連絡来ますからね」
「んで?何?」
「雅さんって本部に所属する気はありますか?」
「俺は所属してるんじゃないのか?」
少し考え込んだような声が聞こえた後に、
達也は話始めた。
「本部に所属というのは皆確かにそうですが、
直属で仕事をするのかという事です」
「つまり?」
「まだ高校生なので、
本部に完全に引っ付いて行動は出来ませんが、
卒業後は可能ですよね?」
「普通そうじゃないのか?」
「違いますね。
本部で仕事をするのは選ばれた人達だけですから。
雅さんは覚醒者ですし、
そもそも仕事というか、
生きている事で地位確立って感じのチートなのでどうなるか定かではありませんけ
ど…」
「卒業後の進路を今決めるのか?」
「雅さんに高校は必要ないだろうという声が多いですからね。
もうすぐにでも本部ではいかがでしょうかと…」
俺は間を開けて答えた。
「断る」
達也は分かっていたかのように答えた。
「ですよね。
沙耶ちゃんもいますもんね」
「二人で編入した意味ないだろ」
「ですよね…」
「まだなんかあるのかよ」
「また生き返りがその高校にいるかもしれないんですよ…」
「お前分かっててその高校にしたな」
「だって高校に潜入して生き返り探すの出来るのなんて雅さんくらいしか今いないで
すもん!」
「3学期からという約束は?」
「まだ確定ではないので、
3学期からで構いません。
それまでは自由な時間をお過ごしください。
それと、今回のアメリカでは何か有益な情報はありましたか?
覚醒者には会えましたか?」
「会えたけど、
しっくりくる情報は得れなかったよ。
今度報告に行くから」
「分かりました!」
「後、由希と浅井にはついでに会わせろよ。
都合がよくなったら連絡してこい」
「はい…」
そう言って達也は電話を切った。
ソファーではぐっすりと沙耶が眠ってしまっていた。
高校生特殊部隊員 eguhiko @eguhiko
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