第47話 二人
2時間程たっただろうか。
外の景色は中からスモークを貼ったような状態で見る事が出来ない。
なので今は何処を走っているのか想像が出来ない。
疲弊している体ではあったが、
常に警戒を怠ることなく、
俺は沙耶と車で揺られていた。
「いつになったら着くの?」
「分からんよ」
「外見えないから外国感全然ないし…」
「そうだな。
それはそうとさ…」
「何?」
「あいつらが襲ってきた時も、
俺がやられかけた時も微動だにもしなかったじゃん」
「うん」
「逃げろよ」
「なんで?」
「危ないだろ」
「なんで?」
「何でってあいつら普通の人じゃないし、
捕まったら殺されるかもしれないだろ?」
「私の事は雅くんが守るから大丈夫だよ?」
沙耶はニコニコしていた。
俺は頭を抱えた。
すると車が止まり、
ドアが開いた。
「よくいちゃいちゃしてられるな」
「してねぇよ」
さっき気を失っていた奴がドアを開けながら文句を言っていた。
外に出ると日差しが眩しかった。
「ここどこだよ」
「どこでもいいだろ。
黙ってついてこい」
馬鹿でかい敷地の中にビルが何棟かあり、
そのうちの一つに入って行った。
厳重にセキュリティにチェックをされ、
持ち物はなし。
沙耶は中に入れられないと言われたが、
彼女を一人にするか今すぐぶちのめされたいかを尋ねると、
渋々通された。
俺と沙耶は馬鹿でかいホールへと通された。
そこには一つの長机を囲むように机と椅子があり、
普段は見慣れないマークが描かれていた。
そしてその長机の上に偉そうに男が座っていた。
「ドアを閉めてくれるかい?」
男がそう言うと、
黙って周りの連中は部屋から出て扉を閉めた。
だだっ広い空間に俺と沙耶、
そしてその男の3人となった。
すると男は英語で話始めた。
「君が新しい覚醒者かい?
おめでとう」
「お前もその覚醒者ってやつかい?」
「いかにも」
「一つ聞いていいか?」
「なんだい?」
俺は拳に力が入っていた。
「着いてからすぐに起きた事はお前の指示か?」
「そうだよ?
何か不満でも?」
「人をおちょくるのも大概にしろよ?」
「そんな事してないさ。
もしかしてって事があるからね。
保険だよ」
「次、人を試す様なマネしたら。
許さねぇぞ」
「君は何か勘違いしてないかい?」
そう言うと、
男はこちらをぐっと睨みつけた。
もの凄いプレッシャーで目を逸らすことが出来なかった。
すると男の周りが赤く光る。
それと共に熱風が押し寄せる。
俺は沙耶を自分の後ろへと下がらせた。
沙耶は震えながら俺の背中に顔をうずめた。
「僕は君と友達とかじゃない。
ましてや知り合いでもない。
何か一つ歯車が狂えば、
僕たちは敵にだってなり得る。
それなのに僕がおちょくってるって?
挙句の果てには殺すなんて…」
熱気はさらに高まり、
冷え切った部屋の中で俺の皮膚からは汗がにじみ出た。
「やれるのかな?
君に…。
まだ覚醒したてのひよっ子くんにさ…」
すると男は爆発音と共に俺の目の前に飛んできた。
俺の首を掴む。
その瞬間首が焼ける程の熱さを感じた。
「うわわわわぁぁぁああああ!!
離せぇぇえぇええええ!!!!」
俺は暴れるが、
とてつもない力強さで引きはがすことが出来なかった。
「さあ力を見せてくれよ」
「ぐわぁぁあああああぁああああ!!!!!」
叫び暴れる俺に押され、
沙耶は後ろに倒れてしまった。
いつもなら、どんな相手でも互角かそれ以上で戦っていた俺が、
一方的にただ首を掴まれているだけで取り乱しているのを見て、
ただただ沙耶は見ている事しか出来なかった。
「そんなんでは僕を殺せないよ?
いいのかい?
君が死んだら…。
次は彼女だよ?」
そう言うと男は沙耶に向かってほほ笑んだ。
沙耶の目は大きく見開き、
ガタガタと震えていた。
俺は暴れる中、
一瞬沙耶の絶望した顔を見た。
次の瞬間、
俺の体は青白く光り、
轟音が鳴り、
閃光が体を包んだ。
バチンッ!!!!!
破裂するかのような音と共に男の手が首から離れた。
俺の首は焼けただれていた。
「君はそういう能力なんだね。
でもそうなると君は…」
そう言うと一気に熱気が冷めた。
俺は青白く輝く自分の姿をまじまじと見ていた。
「覚醒ってどういう事なんだよ!
自分が自分でコントロールできない感覚なんだ!」
「あなたが覚醒者である事は分かりましたので、
その状態を解除して頂けませんか?」
「どうやって!」
「深く息を吸って…。
感情をコントロールするイメージです。
落ち着いて…」
俺は言われたように自分の心を落ち着かせるように努力した。
しかし、音は小さくなり、光は小さくなるものの、
状態を解除するまでにはいたらなかった。
「ダメだ…。
意識が…」
俺はその場で倒れ込んでしまった。
目を覚ますと、
俺はベッドに眠っていた。
隣には沙耶が引っ付いたまま眠っていた。
高級ホテルのような部屋。
広く、高級そうな家具等があった。
俺は沙耶の肩を揺らした。
「あっ…。
やっと目覚ました…」
「ごめん…。
ここは…」
「あいつの屋敷らしいよ。
あの後雅くんを担いで連れて来られたの」
「変な事されてないか?」
「大丈夫」
俺と沙耶は部屋を出た。
長い廊下を突き進んで行くと、
とても広い部屋に出た。
そこにある冗談かというくらい大きなソファーにあの男は座っていた。
髪は金色で目は淡いブルー。
シュッとしたモデル体型の白人の男だった。
「目が覚めたね。
気分はどうだい?」
「大丈夫だ…。
ここは何処だ?」
「僕の家だよ。
敵意があるわけではないのだろ?
だからお嬢さんと一緒に招いたのさ」
沙耶は俺の腕にしがみついていた。
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