第41話 覚醒

俺のボロボロの体に沙耶がすり寄ってきた。



「前と同じような感じになっちまったな」


「無茶ばっかりするんだから!」


「これ以外方法が分からないからな…」


「冗談言ってる場合じゃないでしょ!

 早く病院行かなきゃ!

 血が止まらない!」



沙耶は必死で俺の撃たれた傷口を抑えてくれていた。


沙耶の手は赤く染まりあがっていた。


フランス人はゆっくりとこちらに向かって歩いてきていた。

俺はもうここでやられてしまうと覚悟を決めた。



「俺らが相手になってやる!

 江口一人に任せられるかよ!」



叫んだのは山田先輩だった。

そして一緒に応援団として練習を共にした先輩達だった。


そして一人、また一人と奴の前に立ちはだかっていく。



俺は立ち上がろうとした。

しかし、それを泣きじゃくりながら沙耶が止める。



フランス人の奴は笑いながら立ちはだかる先輩達をなぎ倒していった。









そして俺の目の前に奴は立っていた。


沙耶はあの時のように俺に覆いかぶさっていた。

しかし俺はそのか細い腕を握り、

静かに払いのけた。


そしてゆっくりと立ち上がった。



沙耶はすがるように俺を掴もうとするが、

一緒に人質になっていた沙耶の父親と母親がそれを制止する。


俺はにっこりと沙耶に笑いかけた。


沙耶は泣いていた。






次の瞬間体を貫くような痛みが走った。

俺は心臓を撃ち抜かれた。


体育館の冷たい床に倒れ込み、

生暖かい血が広がっていく様子をただ見ていた。


そして涙でぐちゃぐちゃになり、

俺に駆け寄ろうと必死な沙耶の顔を俺は目に焼き付けていた。



























「あなたにはまだやるべき事があります」



























俺は激しく心臓が高鳴るのを感じた。

























体が白くも青い命の叫びにも似た温かさを感じた。








バチバチバチバチッ!!!!!!








辺りに響き渡る轟音とまばゆい輝きと共に俺はゆっくりと立ち上がった。




「これは…」



俺の全身は青白い光に包まれていた。






「やはり覚醒者だったか!!!!」





フランス人はそう叫んだ。





そして奴はゆっくりと沙耶に向かって銃を向けた。



体が咄嗟に動き出していた。

俺は沙耶とフランス人の間に入り込んだ。


打ち出された銃弾がひどく遅い…。


まるでスローモーションのようだった。


俺は打ち出された銃弾をゆっくりと掴んだ。




「畜生~!!!!!!」




そういってやつは殴りかかってきた。


俺は左拳に力を込めた。

上から振り下ろされる拳を右足で払いのける。


そして目一杯込めた力でやつの心臓めがけて打ち抜いた。





俺の腕は奴の体を貫通。

そしてやつの体は粉々に飛び散ってしまった。





体育館は静寂となった。














後にこの事件はニュースで大々的に取り上げられる事になった。

愛知県内の高校で海外のテロ組織による凄惨な事件として…。












「雅さん!雅さん!」






俺は何処か懐かしいような、

それでいて温かいような場所で達也の声で目が覚めた。





「やっと目を覚ましましたね!

 良かったぁ…」


「ここは…。

 本部か?」


「そうっすよ」




俺は辺りを見渡した。



「あいつらはどうなった!

 みんなや沙耶はどうなった!!」


「落ち着いて下さい!

 みなさん無事です!

 一部を除いてではありますが…」


「どうなったんだ!!」



達也は事の経緯を説明した。



俺が奴を殺した後、

他の連中達は蜘蛛の子を散らすように逃げていったという。


それを見た軍と部隊のメンバー達は一斉に学校内へと突入。

そしてその場にいた人間が情報を外に出さぬように、

テロリストの顔等が写っていた場合狙われる可能性があるとして、

携帯やカメラなどの撮影危機は全て没収となった。


皆それに従い、

テロリストの顔等は一切公表されなかった。


さらに俺の正体をばらしたフランス人だったが、

その場にいた人間がフランス語を理解する事はなく、

正体まではバレずに済んだらしい。


しかし、俺の神ががった動きや戦闘。

そして最後の動きを見た人間は少なくとも30名以上に上った。


もちろん彼らが見たものを見ていない事になど出来ず、

俺は学校から転校。

そして東京にある高校へと編入が決まっていた。


元の高校は被害の大きさが尋常ではなく、

死者は100名以上。

重傷者は200名以上に上った。


その為高校として再起する事はなく、

そのまま廃校となり、

在籍の生き残った生徒達は希望の高校へと編入する事となった。





「俺はどれくらい気を失っていた…」


「2週間すね」


「マジか…。

 それにしてもよく生きてたな」


「それに関してですが、

 雅さんには悪いですがすぐに行ってもらわなければいけない場所があります」


「は?何処に?」




達也はニコッと笑い答えた。




「日本の内閣総理大臣の元へです」





俺はポカンと口を開けていた。



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