第39話 天才
俺は今の動きで自分の回復を感じた。
長々と喋ってくれたおかげで自由に動くまでの時間が稼げた。
俺は教室の窓から飛び降りて中庭に降り立った。
するとラファエルと思われるフランス人と浅井と由希がマスクを被りこちらへ突進してきた。
そして3人が外へ放り出された事によってものすごい音がした為、
他のメンバーであろうマスクを被った人間が20人程外へと出てきた。
「あいつを殺せぇぇええぇぇぇえええ!!!!!」
フランス人が勢いよく叫んだ。
すると、部下であろう他のメンバーは一斉に俺めがけて突っ込んできた。
しかし俺は妙に落ち着いていた。
今までの俺が正面からこいつらとぶつかりあったらきっと負けている。
しかし負けるわけにはいかないこの状況。
さらに浅井と由希という大切な物を失った。
そしてあの野郎は沙耶までも引き合いに出しやがった。
俺は自分の能力を最大限信じて見る事にしてみたのだ。
俺は天才で最強であると。
達也は言っていた。
俺ら生まれ変わりの人間は通常の人の何倍もすごい力を持っている。
だがそれを引き出すには知識と知恵が必要だと。
体の動きも知識や知恵の一環で、
それを想像する事や必要な知識量がなければ100%は発揮できないと…。
しかし俺は違うと思う。
自分が出来ると信じればこの体であれば遥か上のレベルへ上がる事が出来ると。
一番手前のメンバーは俺の顎ギリギリまで拳を突き出していた。
俺は手首を右手で掴んだ。
そしてその腕を握りしめてへし折ってやった。
しかし離す事はせず、飛びかかってきた連中に全力で投げつけてやった。
人が面白いように飛んでいく。
その瞬間飛びかかろうとしていた奴らは足を止めた。
もちろんあの3人も。
悔しそうな表情をしているのがマスクの中でも分かった。
すると叫ぶかのようにあのフランス人が大声を出した。
「おい!!お前等!!
人質全員殺してこい!!!」
すると一斉にまた残っていた奴らが動き出し、
校舎へと入って行く。
俺は地面を蹴り上げて2階の窓を蹴破って中へと侵入した。
もちろん3人もついてきた。
全速力で駆け抜ける。
人質の場所を正確に判断する必要がある。
もし間違えたら一瞬で全員が殺されてしまう。
外に出た時、外から校舎を見る限り荒れている様子はない。
さらに昇降口あった靴は全て綺麗に収まったまま。
という事はかなりの大人数の人質。
それを出来るのは体育館一択。
俺は体育館へと駆けた。
体育館の扉まで廊下を15メートル。
しかしその直線上にはあいつらがいる。
「江口!!!!!!」
浅井の叫びに奴らは全員振り返った。
俺は3人から追われながらその廊下を真っすぐ進んだ。
まず殴りかかってくる一人の左ストレートをギリギリで左に躱す。
前に行く推進力で右こぶしを顔面に叩きこむ。
そいつは地面に叩きつけられる。
飛び蹴りで突っ込んでくるやつの足を掴んで後ろにぶん投げる。
俺は全てを壊すかのように15メートルの廊下を突き進んだ。
ドアが目の前に来た時、
流石に3人には追い付かれてしまった。
浅井が俺の肩を掴んだ。
俺は掴んだ手を引っ張り、一本背負い。
そのまま地面を蹴り上げて1回転した。
着地を狙って由希が俺の顔面に向かって右のハイキック。
俺はガードするがそのまま吹き飛ばされて体育館の壁に激突した。
その勢いでドアは吹き飛び、
俺は体育館の床へと投げ出された。
その間に浅井は立ち上がり由希の元へと来た。
「中々いい蹴りしてんだな。
あんないい子ちゃんのふりしてたくせによ」
「あんなもん芝居よ」
「お前何回だよ?」
「60かな。
まあもうリミット間近ね」
「それでここまで出来るとはな」
「あんたみたいにぬるま湯に浸かって生きてきたわけじゃないの」
すると浅井がこちらへ向かって飛びかかってきた。
左足を軸にボクシングのようなスタイルで俺にラッシュをかけるが全て躱し、
みぞおちに一撃。
拳は深く突き刺さりそのまま地面に膝から崩れ落ちた。
すると後ろから歓声が沸いた。
「江口君!やっちゃえ~!!」
「いいぞ!」
学校でのスーパーマン振りのおかげか、
俺は奇妙な目で見られる事はなかった。
ドンッ!!!!!
鈍い音が鳴り響いた。
「調子に乗んじゃねぇぞ!!!!
ガキどもが!!!!」
フランス人のあいつは銃を天井に向かって撃っていた。
騒がしくなった一時が嘘かのように静かになった。
そして銃を俺に向けた。
「あの時は仕留めそこなったが、
今回は楓じゃなくて俺だ。
殺してやるよ」
「やってみな」
ドンッドンッドンッ!!!!
鈍い音が3回鳴り響いた。
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