第34話 浮気

どうやって二人が浮気していたのかを探る必要がある。

しかし、本当かどうか分からない為、

浮気をしていた事前提で行動するのは違う気がした。


正直面倒なので山田先輩か阿部先輩に圧をかけて本当の事を吐かせるのが一番楽だが、それは最終手段に取っておくことにした。


まずは本当に二人で出かけていたのかを知る必要がある。

その上で何をして何処に行っていたのかが分かれば大筋は分かりそうな所。


一番手っ取り早く話が聞けそうな林先輩の元へ俺は翌日訪れた。



「団長と阿部さんって本当に浮気してたんですか?」


「俺は知らないよ…。

 でも彩ちゃんの友達が二人で歩いてる所見たって事らしいし、

 その日は山田は彩ちゃんと遊ぶ約束断ってたって事だし…」


「団長は結局何て言ってるんですか?」


「元々阿部さんと他の2年生の子達と交流を深めて遊ぶ約束してたらしいよ?

 でも他の2年生の子達が来れなくなったから二人で飯食って帰ったって事らしいけ

 ど…」


「それで彩先輩は?」


「納得出来ないって。

 そもそも二人きりになってるのに一緒に行動するのが信じられないってさ。

 まあ彩ちゃんとの約束断ってるわけだしね」


「なるほど…」



話を聞く分には山田先輩と阿部先輩は限りなく黒に近い白というイメージだった。

でも二人で出かけただけで浮気になってしまうのは少し可哀相な気もした。



「でも山田も俺から言わせれば自業自得だよ」


「どういう事です?」


「あいつ部活やってた頃はめちゃめちゃモテてたんだよ。

 下級生にも同級生にもファンがいる感じでさ。

 キャプテンで信頼も厚かったし、さらにスポーツマンで…」


「それが何で自業自得何ですか?」


「まああいつが悪いわけじゃないけど、

 女の子と付き合っては別れて繰り返してたからな。

 短いと1ヶ月も付き合ってなかったし、

 バチが当たったんだよ」


「阿部さんとは付き合ってたんですか?」


「いやっ…聞いたことはないけど…」


「そうですか…」



阿部さんが元カノでないとしたら何で二人きりで行動したんだろう…。

普通二人きりで先輩とってなったらよほど仲良くない限りは断るのが一般的な気がすると俺は考えた。


詳しい話を聞きたかったので、一緒に遊びに行く予定だった二年生を探すことにした。


しかし応援の練習でも2年生とはほとんど関りがなかったので、

昼飯の時間に沙耶を通じて誰か話を聞けないか頼むことにした。



「雅くん!!」


「誰か話聞けそうな人見つかった?」


「それがいつも仲良くしてくれる女子の先輩みんな関わりたくないって…」


「そうか…」


「でも1個だけ話聞けたよ!」


「何を?」


「一緒に遊びに行く予定はしてたって言ってたけど、

 当日になってなくなったからって言われたって…」


「阿部さんがそうやって言ったって事?」


「らしいよ…。

 それで私考えたんだけど、

 団長は悪くない気がする…」


「なんで?」



沙耶は少し考え込んで口を開いた。



「もしかしたら阿部さんは団長と一緒に出掛けたかったんだと思う。

 二人きりで…」


「浮気をわざとしたって事?」


「浮気をする気はなかったんだと思う…。

 ただ好きだった可能性はあるよね」


「じゃあ浮気じゃないの?」


「女の子は別に好きになって欲しいとか付き合って欲しいとかってわけじゃないの!

 自分が好きな人と二人きりになれる瞬間があるだけで嬉しいものなの」


「ふ~ん。

 それで…?」


「きっと二人きりになる為に、遊ぶ計画を立てて、

 後で他の子にはなくなったって嘘ついた可能性あるなって…」


「それで二人きりになったとして山田先輩も断るんじゃないか?」


「男子が女子と二人きりになりました。

 それで昔好きだったんですとか、二人でもいいからご飯くらい行きましょうなんて

 言われたら行くでしょ?」


「確かに…」


「あ~~!!!

 行くんだぁぁああ!!

 信じられない!行ったら浮気だからね!!」


「なんだよいきなり…」


「だって確かにって言うって事は行くかもしれないって事でしょ!?

 行ったらダメなんだよ!わかった!?」


「それは友達でもか?」


「女の子と二人きりでなんて絶対ダメ!」


「はぁ…」



俺はきっと女子と男子は一生分かり合えないのだと思った。


やいやいと文句を言う沙耶を自分のクラスへと無理矢理押し込み、

俺は自分のクラスへと帰って行った。


そして授業が全て終わった後、

すぐに階段を駆け上り、阿部さんがいる2年生の教室へと向かった。

少し待っていると阿部さんが一人で教室から出てきた。



「阿部先輩!」


「えっ…?

 あっ…江口くん…?」


「ちょっと聞きたい事あるんですけどいいっすか?」


「何を…?」


「ここじゃあれなんでついてきてもらってもいいっすか?」


「う…うん…」



俺は阿部先輩と図書室がある別棟へと向かった。

生徒の勉強レベルも低い高校という事もあって、

図書室に授業後に来る人はほとんどいない。

なので人目のつかない所で話すなら図書室はうってつけだった。



「話ってなに?」


「団長の事ですよ」


「えっ…?

 いやっ…それは話す事ないよ…」


「俺らは楽しく体育祭したいんすよ。

 だから状況だけは知っておきたくて」


「状況?」


「阿部先輩わざと団長と二人きりで会うように仕向けましたね?」



阿部さんの顔が少しこわばった。



「みんなで遊ぶ約束してたのに当日になくなった連絡入れて、

 団長と二人で会う事にしましたよね?」


「そんな事してない…」


「でも実際周りの子は中止の連絡もらったって言ってましたよ?

 でも阿部さんは団長と会ってるじゃないですか」


「それは…」



阿部さんは何も言わず顔を俯けた。



「阿部さん団長の事好きだったんですよね」


「…」


「でも彩先輩と付き合ってますからね…。

 流石にみんなの前で告白までしたらマズい事になりかねないから遊ぶだけでもって 

 感じですか?」


「遊ぶだけだったんだもん…。

 なのにあんなに大事になっちゃって…。

 今じゃクラスの子も他の先輩も私の事白い目で見てくるし…」


「まあ間違いなく阿部先輩が二人きりになりたくてやったってバレてますしね」


「それで何かあんたに関係あるの!?」



阿部さんは怒り口調で言った。



「関係は無いかもしれないっすけど迷惑はしてます。

 それで何とかならんかなって思ってます」


「何とも出来ないから困ってるの!

 別に浮気したいわけじゃなかったし、

 ただ二人で会ったって思い出欲しかったの!

 告白もちゃんとしてフラれたかったの!」


「それで告白したかったから一緒にご飯を二人でどうしても行きたかったってわけ   

 っすね」


「そうよ!

 悪い!?」


「そうやって彩先輩にきちんと言えば大事にならなかったんじゃないですか?」


「そんなん言えないよあんな状況じゃ!」


「言わないと解決しないですから。

 彩先輩に言いに行きましょ。

 俺も沙耶もついていきますから」


「でも…」


「俺ら1年は楽しく体育祭したいだけなんですって。

 阿部先輩も居づらいのは嫌でしょ?

 楽しくやりましょうよ。

 フォローもしますから」



阿部さんは小さく頷いた。


俺は沙耶に連絡をして彩先輩と団長を図書室へと呼んでもらった。






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