第29話 称賛
俺は運動部では誰も追い付かないスピードとパワーで無双し、
文化部では培ってきた経験で高校生とは思えない程のレベルの作品を作り上げたり、
発表したりをした。
もちろん各部活の生徒や顧問は俺を心の底から欲しがった。
俺は各部活に助っ人で参加させて欲しいと伝えた。
プロでも出来ないようなレベルの人間だった為、
全員がその提案に合意し、
俺は試合の日だけ所属するというスーパー助っ人となった。
夏休みはその為多忙を極め、
俺は各部活の練習試合から本試合まで全てに時間のある限り参加した。
そしてサッカー部の助っ人に行った時に俺は目立ち過ぎてしまう結果となった。
「今日は全国常連の中京高校との試合だ!
確かに勝てない相手かもしれないけど、
俺らだってやれるところ見せてやろうぜ!!」
うちの高校のサッカー部は毎年一回戦負けの弱小チームだ。
しかし俺の活躍によって一回戦を突破し、
今回シードの全国常連の中京高校との試合になったのである。
しかし俺はその日試合に遅刻してしまっていた。
何故ならバスケ部のリーグ戦に出場していたからだ。
午前中にバスケ部で試合をして午後にサッカー部と試合になっていたのだが、
時間的に間に合わない為、
俺は急遽後半から参加という形になっていた。
バスケの試合は他を圧倒し、
トリプルスコアで完勝。
試合が終わると同時に着替え、
俺は駅へと向かった。
携帯を見ると沙耶と浅井、そして由希から着信が入っていた。
俺は浅井に電話をかけ直した。
「江口何処にいるの?」
「今向かってる所!」
「いきなりお前がサッカー部の中京の試合に出るって言うから見に来てんだけど!
遅刻してんの!?」
「バスケ部の試合行ってたからサッカーの試合は後半からなんだ!」
「早く来ないととんでもない事になってるよ?」
「なんで?」
「もう6対0だけど…」
「前半30分くらいだろ?」
「5分に一点入ってる…」
「マジか…」
チームメイトのあまりの弱さに俺は落胆した。
電車は駅について急いで会場へと向かった。
会場に着いた瞬間に一点が入り、
前半が終わった。
結果は前半で7対0となっていた。
ベンチではうちの高校の生徒達が死にそうな顔をしていた。
それも仕方がない。
周りの観客や選手たちも中京が何点後取れるかという見方しかしていなかったからだ。
俺は着替え、
監督に交代を申し出た。
監督はここで出ても笑い者になるだけだと言ったが、
必ず逆転してくると伝え、
俺はフォワードの選手と交代となった。
俺がグラウンドに出た事に沙耶たちは気づいて大きく手を振っていた。
俺は少しだけ手を挙げてその声に応えた。
「後半は少しデカいやつ出て来るんだな!
それにしても可哀相だな。
ここで出て来ても仕方ないのに」
相手のフォワードの選手は俺の姿を見て馬鹿にしたような口調で話していた。
後半はこちらサイドのボール。
俺はもう一人の選手に最初からボールを回すように伝えた。
そして自分以外の選手には全てゴール近くでディフェンスに回るように伝えた。
普通考えつかない作戦だが、
既に精神的に参っていた他の選手達はその提案を黙って飲み込んだ。
ピーーーーーーーッ
後半がキックオフとなった。
俺は最初のボールを受け取った。
パスを出した選手はそのまま自陣へと下がって行った。
そして他の中盤の選手達も引いて行った。
俺はただ一人ボールを持って敵陣に立っていた。
中京の選手たちはポカンとしていた。
周りの観客たちも唖然としていた。
「なんだよそれ!
一人で後半から来てドリブルしてみるの!?
ヤバッ!」
「本当にヤバいもん教えてやんよ」
「はっ?」
俺はボールを前に出した。
中京のフォワードがまず取りに来ようと右足を出した。
俺は体を左足を軸に一回転し、抜き去る。
すると中盤の選手二人が右と左から体をぶつけに来た。
俺は体を左に傾ける。
するとディフェンスが追い付こうと体を寄せる。
その瞬間にボールを右足に持ち替えて股にボールを通して華麗に抜き去る。
センターバックの一人がその蹴ったボールを奪いに来た。
しかし足に力を込めて蹴り上げてボールに一瞬で追い付く。
右のインサイドにボールを当てて瞬間的にアウトサイドに当ててペナルティエリアへと切り込んだ。
左斜め後方からもう一人のセンターバックが詰めてきた。
それと同時にゴールキーパーが前へと出てきた。
俺は急停止してボールを浮かせ、
地面へと左足で叩きつける。
地面から離れて浮いたボールにジャンピングボレーで右足を振りぬいた。
ボールはゴール左隅へと突き刺さった。
ゴールが決まった瞬間笛も鳴らず、
周りの観客の声すらしなかった。
会場はシーンとしていた。
すると沙耶が大きな声で叫んだ。
「雅くんカッコイイ!!!!」
俺は黙って手を挙げた。
審判は慌てて笛を吹いてゴールを合図した。
それに合わせて周りの観客は大盛り上がりとなった。
チームの選手たちも喜んで声を上げていた。
それからも敵がキックオフした瞬間に奪いに行った。
あまりの速さと強さに何も出来ず中京の選手はボールを取られていた。
俺は奪った瞬間にドリブルを開始。
どこの角度からもゴールを叩き込んだ。
「お前何なんだよ!
バケモンかよ!」
「バケモンだよ。
ある意味ね」
「くそっ!!!!」
後半の終わり際7対7の同点となっていた。
俺は持ったボールを始めて味方の中盤に渡した。
「ゴールキーパー狙っていいから思いっきり蹴って!!」
そう言うと、
味方の選手は思いっきりゴールに向かってボールを蹴った。
キーパーも流石に取れると思ってゆっくりと落下地点に入った。
俺は全力で走った。
ゴールキーパーとの距離が3メートルないくらいになった。
そこで俺は高く飛んだ。
3メートル近く飛び、
ゴールキーパーの遥か上で体を一回転させてオーバーヘッドでシュートを打った。
ボールはゴールど真ん中へと突き刺さった。
その瞬間。
試合終了のホイッスルが鳴った。
周りの観客はスマホで俺の活躍を撮っていた。
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