第24話 交際
俺は一度沙耶を連れて家へと戻った。
しかしそこはほぼもぬけの殻の状態。
部屋は荒らされていた。
「なにこれ…」
「あいつらが荒らして行ったんだよ多分。
ここは引っ越すしかないな」
「うちの近くに引っ越せない?」
「出来ない事もないけどこの辺に住むのは危ない気がするからな…」
「じゃあ学校始まったら毎日通うね」
「毎日は遠慮したいな…」
俺は達也にメッセージを送った。
近場で新しい部屋を頼んでおいた。
するとすぐに返信が来て、
既に手配済みだからとご丁寧に写真と地図まで送ってきた。
「もう部屋決まってるらしいわ」
「早くない?
すごい身分なんだね」
「すごい身分って…」
「だって普通そこらの社長でもこんなに早く決まらないでしょ?」
「まあな…」
俺はストックとして置いてあった学生服に着替え、
学校へ向かって出発した。
駅で電車を待つ。
沙耶は俺の腕を話す事はなく、
常にしがみついているような状態だった。
「沙耶…」
「何?」
「この先いつまたこの前みたいになるか分からないから、
一つだけ約束して欲しいんだ」
「約束?」
「逃げろって言ったら逃げて欲しい」
「状況によるかな」
「状況?」
「逃げたほうが安全が一緒にいる方が安全かその時考える」
「そんな余裕ないと思うけど…」
沙耶はニコッと笑った。
俺と沙耶は電車に揺られて学校近くの駅へと着いた。
改札を抜けて学校に向かって歩き出した。
すると前に浅井と由希が歩いていた。
俺はどうしていいか分からず、
声を掛ける事が出来なかった。
しかしその状況を察したのか、
沙耶が浅井と由希に声をかけた。
「浅井君!」
「あれ?沙耶ちゃんと江口!!」
「元気だった??」
「元気って言うか、
江口お前何日も連絡無視しやがって何なんだよ!」
「それには理由があるの」
「お前…まさか…」
浅井は食い入るような目で俺を見ていた。
俺は何も言い返せず、
目を逸らし、頭を搔いていた。
由希は少し寂しそうな顔をしていた。
「お前ら付き合ったのか!?」
「そうだよ~!
いいでしょ!!」
沙耶は由希の方をちらっと見た。
由希はそれに対して目を逸らした。
「ふ~ん」
「何よ」
「由希ちゃんだよね?」
「そうだけど…」
「私負けないから。
江口君にはいつでも別れてもいいよって言ってあるの」
「えっ?」
「だから別に誘惑してくれてもいいよ!
私負けないから!」
「誘惑なんてそんな…」
浅井はこれ以上はヤバいという顔をして俺を見た。
しかし俺には止める事が出来そうにない為、
首を真横に振った。
浅井は二人の間に入った。
「まあまあお二人さん!
江口と沙耶ちゃんが付き合ったって事はその知り合いを俺に紹介出来るって事だよ
ね!」
「私に紹介しろって事~?」
「いいじゃんか!
楽しい高校生活にしたいんだ!
8組の誰かを紹介してくれぇ~!!」
浅井のおかげで少し場が和んだ。
しかし由希は俯いていた。
俺は何も言う事が出来なかった。
由希は違うグループの為、
自分の応援団のクラスへと向かった。
俺と浅井と沙耶は3年の練習が行われている教室へと向かった。
「あれ?江口君と秋川さんじゃん?」
「すいません…。
長い事無断で休みまして…」
「もう来てくれないかと思ってたよ」
「もう大丈夫なんでこれからはちゃんと来ます」
「よかったぁ…」
俺と団長の会話を聞いていた沙耶が口を開いた。
「団長~」
「何?秋川さん」
「私と江口君付き合う事になったのでペアは江口君と私でお願いします」
「へっ?」
「ちょっ!何言ってんだよ」
「へへへ…」
団長はニコニコしていた。
「もうマジックかかってるやつがいるのか」
「お願いしますね」
「分かりました!」
俺は頭を抱えた。
沙耶は背中をちょんと触り、
荷物を置いて友達の方へと向かった。
練習が始まったが、
既に踊りに関しては覚えていた為、
俺は座って休憩していた。
そこに副団長と浅井が近づいてきた。
「お前どんな技使ったんだ」
「何すかいきなり…」
「秋川さんは俺の一年女子かわいいランキング第2位という子なのにも関わらず、
お前のようなのほほんとした奴が何故付き合える」
「そんな事言われましてもね…」
「江口!正直に言え!
どうやって付き合ったんだ!」
「どうやってって付き合ってって言われたから付き合う事になったんだよ」
「お前告白された側なのか!?」
「神様…
実はこいつ沙耶ちゃんに逆ナンされていたのです」
「何だと浅井!
それは本当か!?」
「はい!神様!」
俺は何故こんなやつとつるんでいるのだろうと呆れた。
その後も浅井と副団長による尋問は続いた。
「つまりこいつは運動神経抜群、勉強は天才、
そして顔も中々イケメンで身長が高いというハイスペック野郎であると…」
「はい。
神様」
「そして浅井…。
お前はおこぼれを狙っていると…」
「はい。
神様」
「江口!!
俺にもおこぼれをくれぇぇ~!」
「はい?」
浅井と副団長は女の子を沙耶を通じて紹介してくれと迫ってきた。
俺が対応に困っていると、
沙耶とその友達2人がやってきた。
「江口く~ん!
お昼ご飯買いに行かない?」
「いいけど…」
「私達も一緒に行ってもいい?」
「どうぞ…」
「僕たちも良いですか!!!」
「はい…」
俺と沙耶、浅井と副団長、そして沙耶の友達二人の6人でコンビニへと向かった。
「ねぇねぇ。
沙耶って江口君って呼んでるの?
江口君は沙耶って呼ぶのに」
「確かにそうね…。
ねぇねぇ江口君!」
「何?」
「雅って呼んでもいい?」
「別にいいけど…」
「カップルらしくなるね」
「そういうの苦手だから口に出すなよ」
「照れてる~」
沙耶は友達とニコニコしていた。
浅井と副団長はもう一人の女の子と仲良さそうに話していた。
コンビニに着くと、
数台のバイクが止まっており、
ヤンキーらしき人が5人ほど座り込んでいた。
「げっ…
あれ相田くんとこのチームのやつのバイクだよ」
「何でわかるんすか?」
「あのステッカー貼ってあるやつはそうなんだよ」
「相田さんと知り合い何すか?」
「相田さんは俺が1年の時3年だったんだ」
「そうなんすか…。
でも別に関わらなければいいじゃないですか」
「俺らの高校のやつが会うと絡まれるんだよ。
特に女の子は…」
「ふ~ん」
俺は副団長の言う事を無視してコンビニの方へと向かった。
それについてくるように他の5人も歩いてきた。
すると、駐車場で座って煙草を吸っていた一人がこちらへと歩いてきた。
「お前鳴高か?」
「そうっすけど?」
「女子もいるじゃん。
紹介してよ」
「何で?」
「お前相田さんのチーム知らないのか?」
「知らん」
「暴走族だよ!
鳴高のやつは相田さんのチームには逆らっちゃいけねぇんだよ!」
「へぇ~」
「なんだ?その態度は!!」
「俺、知らんもん」
ヤンキーは睨んで胸ぐらを掴んできた。
浅井や副団長はそれをどうすることも出来ず見ていた。
すると後ろから沙耶がヤンキーの腕を叩いた。
「何すんのよ!」
「何だ?お前」
「邪魔!どいて!」
「可愛いのに頑張っちゃって!
後で遊んであげますからね~」
ヤンキーは吸っていた煙草を俺に投げつけた。
そして右こぶしを繰り出した。
俺はさっと躱し、
足を引っかけた。
こけたヤンキーの頭を踏みつけた。
「てめぇ!!」
ヤンキーは足を掴んではがそうとするがビクともしない。
さらに俺は少しずつ足に力を入れた。
「なんだ!いてぇ!やめてくれ!
動かねぇ!何でだよぉ!!」
異変を感じた他のやつがこちらへと向かって来た。
今にも始まるかというタイミングでコンビニからもう一人ヤンキーが出てきた。
するとそいつは俺の顔を見るなりすぐに近づいてきた。
「江口さんすか!!」
「ん?誰?」
「えっと…
事務所で会ったんすけど覚えてないっすか?」
「ごめん。
分かんないや」
「相田さんと一緒に捕まってまして…」
「あのうちの一人だったの?」
「そうです…」
「あいつあの後どうなったの?」
「いやっ…
またすぐにヤキ入れられまして、
二度と江口さんには逆らうなという話になりまして…」
「ふ~ん。
んでこれは?」
低姿勢のヤンキーは足元が見えていなかったのか、
踏みつけられているやつを見て驚いていた。
「こいつなんかしたんすか?」
「いやっ…
いきなり胸ぐら掴んで殴りかかってきたもんだから」
「マジっすか!?
煮るなり焼くなりしてくれていいっすよ!」
「しかも俺の女にまで手出そうとしてたんだけど?」
「本当にすいません!
おい!お前らも謝れ!」
一緒にいたヤンキー達は膝をついて頭を下げていた。
その光景を一緒にいた5人は目を真ん丸にして眺めているだけだった。
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