第12話 調査
面倒な事を押し付けられてしまった。
しかしやらないわけにもいかない。
一応部隊に所属をしているわけだし、
面倒だからと言ったら他ごとをやらされるのは目に見えている。
前に麻薬捜査官として働いた経験はある。
その中で得た知識だが、
未成年のドラッグの使用は年々上昇傾向にあるのが事実だ。
もちろんやってはいけないと色んな形で若い世代に向けて発信しているが、
情報を自己中心的にしか捕らえれていない若者はドラッグを軽視している為、
その呼びかけに応じる事はない。
ドラッグが若者に広がるにはいくつか代表的な例がある。
まず、暴走族などの非行に走っている若者がヤクザ経由で入手するパターン。
もしくは援助交際や売春行為、
金銭のトラブルが絡み、
断る事が出来ずに使用をされる事もある。
俺はそんな例を数多く見てきた。
一番多くあるのが脱法ハーブや合法ドラッグと言われるもの。
これはお香やアロマと言って無許可で販売されているものもある。
入手もお店から等、簡単に若者でも手に入ってしまう。
過去にあった事件では、
日本で家出をした少女が変態のクスリのディーラーに飼われてしまっていた。
という事例もある。
ドラッグを持ってる若者を捕まえてしまうのは簡単かもしれないが、
大元を潰さないと無くなる事はない。
達也は解決しろと言ってきたのだから、
大元を捕まえないと納得はしてくれないだろう。
そして気になったのは達也の発言。
この高校周辺でドラッグが出回っているという言い方だった。
正直言えばこの周辺は田舎に近い。
こんな田舎でドラッグが出回るというのはにわかに信じがたい事である。
しかし流石に嘘は言わないだろうと察し、
自分なりに調査を進める事にした。
まず若者と言う言葉から推察するに学生である可能性が高い。
大学生や高校生である事だろう。
まあ若い社会人も若者に分類されるとすると、
中々の数の調査対象がいる事になるのは間違いないが…。
さらに高校周辺と地域を限定してきた事がやはり気になる。
簡単に言えばこの高校でドラッグが出回っているという事だと直感した。
達也なりに俺にヒントを与えたのだろうと、
俺は心の中で思っていた。
キーン、コーン、カーン、コーン…
昼休みを終えるチャイムが鳴った。
屋上から飛び降りて教室へと向かった。
教室に着くとやはり先ほどのケンカがまだ収まっていないのか、
皆がこっちをチラチラと見ていた。
圭に関してはこちらを鬼の形相でガン見している。
「江口!
お前聞いたぞ!ケンカしたらしいじゃん!
俺がいないところで何楽しい事してんだよ!」
「別に楽しいと思ってやってないわ!」
「何だよ…
戻って来るまで待っててくれればよかったのに…。」
「俺が始めたケンカじゃないんだから待つも何もないだろ…。」
浅井は残念そうにしていた。
授業中ずっと文句を垂れていた浅井がウザかった。
「今日一緒に遊んで帰ろうぜ!」
「遊ぶって何するんだよ…」
「まあせっかくだから都会に出てパーッとやりましょう!」
「パーッとね…」
浅井は授業後に名古屋駅で遊ぼうと持ち掛けてきた。
「浅井!
ノート返して!」
隣の教室から由希が来た。
「俺まだ写してないから無理」
「なんで!?
授業中に写しておかなかったら私が使えないじゃない!」
「でも出来なかったから仕方ないじゃん」
「私もテスト勉強に使うの!」
浅井は少し考え込んで言った。
「そうだ!
今から3人でファミレス行って写せばいいじゃん!
終わったら返すし!」
「えっ?」
「江口はいいだろ?
すぐ終わらせるからさ!」
「別にいいけど…」
「それなら早く行こうぜ!」
浅井は意気揚々と階段を降りていった。
「ごめんね…
浅井君少しわがままだから…」
「いいんじゃない?面白いし」
「私行ったら邪魔じゃないかな?」
「あいつがノート写してる間暇だし、
人がいた方が助かるよ」
「う…うん…」
俺は由希と一緒に階段を降りていった。
「いらっしゃいませ~」
俺たち三人はファミレスの一番奥の席へと案内された。
ドリンクバーを注文し、
浅井は早速ノートを写すし始めた。
「そう言えば江口君大丈夫だった?」
「何が?」
「相田君の事…」
「相田君?」
「相田圭君とケンカになっちゃったじゃない?」
「あいつ相田って言うんだ…」
由希は俺があの後圭達に何かされていないか心配だったらしい。
「相田君は昔からああいう感じらしくて…」
「昔から知ってるのか?」
「ううん…。クラスの子に聞いたの」
「それで?」
「何か中学校までは真剣にバスケに打ち込んでたみたいだけど、
夏で引退してからはヤンキーになっちゃったって言ってた」
「デビューしたって事かな?」
「お兄さんが暴走族に入ってるらしくて、
しかも結構有名な人みたいなの。
だから悪い人たちからも一目置かれてるみたいだから、
怒らせたら大変だって…」
俺は由希の話を聞きながら、
ドラッグの事を考えていた。
もし暴走族である事が事実なら、
ドラッグの事を少し知っているかもしれない。
「江口君聞いてる?」
「あ…ああ…ごめんごめん。
何だっけ?」
「だから相田君には気を付けてね!」
「大丈夫大丈夫」
俺と由希の会話を聞いていた浅井が突っ込むように口を開いた。
「江口なら大丈夫だよ!
こいつ実はめちゃくちゃ強いから!」
「そうだね…
今日のケンカも凄かったもん…」
「体育の時も運動神経化け物だったからね!
シュッと動いてビャッと飛んでズゴーンって決めたから!」
「う…うん…
ちょっと良く分かんないけど…」
呆れたような表情をしながら由希は少し笑っていた。
「よし!写し終わった!
じゃあ遊びに行こうぜ江口!」
「由希ちゃんも来る?」
「えっ?」
「人数多いほうが楽しいからさ」
「行ってもいいなら…」
「由希も来るのか~?」
「行っちゃいけないわけ!?」
「大丈夫です…」
和やかな雰囲気のまま三人で駅へと向かった。
しかし俺は知らなかった。
もう3人で遊びに行ける事がだいぶ先になってしまう事を…
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