第9話 成長

「では座学は今日はこれくらいにしておきましょうか」


「まだ聞きたい事山ほどあるんだけど」


「まあおいおい説明していきますよ」


「ダメだ。

 今すぐでも力が欲しい。

 その可能性があるのなら」


「頑固ですね。

 まあ少しでしたらいいですよ」



俺は自分がリミットかどうかが一番気になっていた。

確かにこれで最後と言われたし、

周りからも100回がリミットだと言われていたからだった。



「俺がリミットなのは間違いないのか?」


「一応100回がリミットと言われています。

 不確かな情報ではありますが…」


「何故100回がリミットという基準があるんだ」


「僕が知っているのは90回までという方です。

 そして過去に人を殺していたり、

 犯罪に手を染めたりがありました。

 しかし、その回数は人生の中では7~8回に満たないという事でした」


「つまりそこから逆算したという事か?」


「現実過去に何度も罪に問われる事や、

 人道に反している事を行っているものはリミットを迎えるのが早いです」


「それを考えると100回が妥当だという事か…」


「そうですね…」



俺はやはりこれで生きるのが最後だと思うと少し、

悲しく寂しい気持ちになった。



「他に知りたい事はないんですか?」


「さっき言っていたちゃんとしてるってどういう事だ?」


「ああそれですね…。

 簡単に言うと一般人になってもらいます」


「一般人?」


「生まれ変わりと言っても社会の一員に変わりはありません。

 税金も払って頂きますよ」


「特殊部隊という仕事に就くわけではないのか?」


「もちろん給料は結構いい額もらえますよ。

 税金とかも全部無視してね。

 しかし何度も生まれ変わって知識を豊富に詰め込めるわけですから、

 様々な職種に就いて知識を深めるんです」


「様々な知識…」


「例えば医療の知識、法律や警察としての知識、

 語学、食材やサバイバル知識等、

 様々な今後生きていくうえでのお得知識ですね」


「一般社会に溶け込んで生活をするって事か?」


「そういう事になります。

 こちらでも教える事は可能ですが、

 まあ面倒ですしね」


「はあ…」


「実際の社会の中で紛れ込んでいる見つかっていない生まれ変わりを探す事や、

 何かしら事件が起きても解決を生まれ変わりの人間なら出来ますからね」



結局知識を得ながらいたるところ監視しろと言われているようだった。



「なので、義務教育はなしでここで過ごして頂いて、

 高校生になったら一般の学校に行って頂きます」


「マジかよ…」


「高校生の間はある意味自由期間です。

 恋愛もオッケーですし、

 好きな生き方してください。

 その代わり社会人になる時は東京でお願いしますね」


「はいはい…」



俺はこの日から自分を知る時間を過ごす事になった。


朝起きて達也から座学を受ける。

2~3時間程の講義の後は昼食。

これがまた美味しくない。


そして楓と戦闘や体の動かし方の勉強となる。

これは4~5時間行われる。


体力や力は規格外な為、

全力で4~5時間動いてもさほど体に疲れは無い。

なのでぶっ通しでやる事が毎日だった。


一つ懸念点があるとすれば、

毎日限界までボコボコにされているので怪我は絶えなかった。


俺は毎日自分に課題を設けて、

誰よりも真面目にトレーニングに打ち込んだ。


そしてあのフランス人にいつか親の復讐を果たしてやる気持ちを捨てず、

毎日時間を見つけては資料を漁った。


そして11年の月日が経った。


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「楓~

 それじゃあ俺にはもう勝てんよ」


「なんだって!

 ぶちのめしてやるわよ!

 はぁあぁあ!!!!」


「あまいね!

 これでどうよ!」



楓の全力の拳はポケットに片手を入れ、

逆の手で簡単にさばけるようになった。


今では楓が逆に俺からコーチをしてもらうレベルになっていた。


年齢的には次の4月から高校生となる。



「雅さ~ん!

 お知らせですよ!」


「今日は何を教えてくれるんだ?」


「雅さん次の4月から晴れて高校生ですよ!」


「えっ…?

 やっぱりやらなきゃいけないの?」


「まあ決まりですからね~

 でも部隊の所属は変わらないですから。

 一人暮らしにはなりますけどね」


「面倒くさいな…」



俺は墓参りもしに行きたいという事から、

この体を生んでくれた母と父がいる愛知で高校生となる事になった。



「懐かしいな…

 世間って言うのは…」



俺は世間とは遠い世界にいたので、

電車に乗ったり、町をぶらついたりするのはあの幼児の時以来だった。


電車を乗り継いで早速向かったのは、

俺を生んでくれた父と母の元だった。


墓は散らかっていた。


親戚の少なかった彼らの墓を綺麗にするものは少ない。

年に一度来るか来ないかという頻度の汚さだった。


俺は桶に水を汲み、

持ってきたタオルで誠意を込めて墓石を拭いた。



「母さん、父さん。

 俺のせいでこんな事になってすいません。

 今まで一度も謝りに来れなかった。

 俺は普通の子じゃないけど、

 あなた達のおかげで生きて来れたのだと思います。

 いつかきっと思いを晴らします。

 そしたらまたここに報告しに来ますから」



俺は自分なりの決意表明をして墓場を後にした。




「江口雅。

 趣味は特にありません。

 スポーツなら全般好きです。

 よろしくお願いします」



俺は高校生になった。









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