第6話 正体

俺はボスの元へと連れて来られた。

場所は人気の無いただのコインパーキングだった。


「降りろ」


俺は車から降りた。

するとコインパーキングの中の車のドアが開いた。


俺は黙って車の助手席に乗り込んだ。

すると俺を乗せてきた車はどこかへ行ってしまった。



車の運転席にはラフな格好をした外国人が座っていた。



「フランス語は話せるか?」


「問題ないけど?」


「お前の父親は抵抗が凄くて、

 若いのが殺しちまった」


「…」


「ただ家とガキの場所聞いただけであんなに暴れるかね」


「要件は?」


「じゃあシンプルに行こう。

 フランスに来い」


「はっ?」


「お前の力は規格外だ。

 知識量であればどんな勤勉なやつも上回る。

 体力や運動に関しては化け物と言っても過言ではない」


「それがフランスに行くのとどう関係してるんだよ」



車の中の男は一瞬黙り込み、

一息ついて話を続けた。



「今生まれ変わりをしている事が確認出来ている連中がどれほど世界にいるか知って

 るか?」


「一億人に一人の確率だろ?」


「それはあくまで表向きの話だよ。

 実際は違う」


「何?」


「日本で確認出来ているのはお前を含めて100人くらいのもんだ

 人口は1200億人近くいるのにな。

 どうやって一億人に一人だと断言するのさ」


「は?」


「つまりお前は嘘つかれてんだよ。

 あのばばぁに」



俺は怯んでしまった。



「俺が必要な理由はなんだ。

 お前らの国にも生まれ変わりの人間は存在するんだろ?

 リミットが来ている俺は必要ないだろ?」


「リミットについて知識が無いみたいだな

 基本的には各国の生まれ変わりで組織は形成されている国がほとんどだが、

 リミットを迎えているやつに国は関係ないのさ」


「関係ない?」


「リミットって事はこれ以上死んでも生き返らないって事だ。

 つまりは死んで本国で生まれ変わる事はないから、

 他国に所属していても情報は漏れないのさ」


「リミットはどう見極める」


「それは内緒だ。

 ついてくるなら教えてやってもいいけど」


「つまりお前はフランスにリミットを迎えた俺を引き入れたいって事か?」


「違うね」



男はまた黙り込んだ。



「フランスは拠点なだけだ。

 俺らの目的は国を独立させるんだ。

 生まれ変わりだけの国をな」


「何?」


「生まれ変わりをした人間で作られた国となれば、

 各個々の能力は一国の軍隊に値するのさ。

 知識と体力はけた違いだ。

 どの国にケンカを売っても問題などない」


「所詮人間だ!打たれれば死ぬし、

 刺されれば死んじまう!」


「生まれ変わるんだ。

 死んだっていいんだよ。

 リミットの人間なんていくらでもいるしな」


「そんな…」




バンッ!!バンッ!




銃声が鳴り響いた。


俺と男はすぐに頭を伏せた。



「動くな!」



その声は周りに響いた。

俺はそれと同時に車のドアを蹴破って外に出た。


外には銃を構えた日本人がいた。


フランス人の男も車の逆側からドアを蹴破って外に飛び出た。

そして、持っていた銃で日本人を打った。


しかし俺は超反応により弾丸をキャッチ。

その様子を見た男は不気味に笑って車でその場を去っていった。


銃を持った日本人達は俺の体を気遣った。



「良かった…

 ケガは無さそうですね…」


「なんだお前らは…」


「私達は日本政府の者です。

 日本国内の生まれ変わりを主体とした部隊を担当しております。

 先日のお話でお伺いをする予定だった者です」


「なんでここにいるんだよ」


「家に警告の為お電話をしたのですが、

 繋がりませんでしたのでお伺いしました。

 そこには女性のご遺体しかなく…」


「遺体ってまさか!」


「お母様はお亡くなりになられました…」



俺は無気力にその場で膝を落とした。



「俺のせいだ…

 俺の…」


「あなたのせいではありません!

 ここではまた狙われる危険があります!

 場所を変えましょう!」



俺は担がれてその場を後にした。



俺がもし、

普通の子だったらこんなことにはならなかった。


彼らは何も悪くない。

自分の我が子をただ一生懸命に育てただけ。


俺を守りたかっただけなのに。



生まれ変わって来ていた事を知っていたら注意出来たのか。

しかしそれは彼らの子供への誕生と愛を壊してまう事にならないか。


俺は答えを出すことが出来なかった。



 

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