第4話 平凡

残り三日で迎えが来るとは言われ、

国の最終兵器になるとか言われ、

稀な存在だと言われ、

一億人に一人とか言われても実感沸かない。


俺は最後の人生だと思って好きなように生きたかったのが本音だ。


言ってしまえば犯罪者でも良いと思っていた。

好きなように生きられるなら。


しかし、変なやつらに声をかけられてしまった以上、

変に行動するのもマズいような気がした。



幼稚園生となり、

知識や体の動きも完全になっている俺には毎日のルーティンがある。


それは赤ん坊時代に起こっていた事や、

入院して知る事が出来なかった外の情報を得る事。


両親が眠りについた夜中に父親の仕事用のパソコンとスマホを拝借し、

インターネットで情報を頭に詰め込む。


もちろん先の事も考えて日本だけでなく、

外国の情報も得る事を忘れない。


俺は100度の人生の中で、

語学も一通り学んでいた為、

英語やフランス語、イタリア語、スペイン語etc…

何でも話す事が出来た。


その為海外の情報を手に入れるのもインターネットさえあれば容易い事だった。



そして力の確認。

実際の見た目はバッキバキにトレーニングされた体ではない。


他の同じ年齢の子供とそん色ない身体つきをしている。

しかし、内に秘めている力は規格外なのである。


果たしてそんな事が可能かと言われるとよく分からない。


中学生くらいになるとガタイや体つきはよくはなるので、

それに合わせて見た目も変貌はしていく。



力を確認する為にアパートの3階の窓を開けて、

外へと飛び出す。

窓や排水管を伝って地面へと降りる。


そして近所の暗がりの公園で石を拾って握力を確認。

走ってスピードの衰えが無いかを確認する。


100回目で最後と言われた時に、

何かおかしくなるのではないかと思って一応毎日確認している。



これが毎日のルーティンだった。


もっと確認したい事やもっとやりたい事はあるが、

時間が足りない。


親が寝ている間にやらないとマズいので、

外に夜中に出るのも30分以内と決めていた。


そして窓や排水管を伝ってまた窓から部屋へと帰った。



日が昇り、

親が起きると父親は朝早くから仕事へと出かけた。


今日は土曜日なので、幼稚園は休み。

母親は俺と家で留守番することになった。



「雅~今日はお母さんと公園で遊ぼうね!」



この家には娯楽と言えるものがまったくない。

さらには俺のおもちゃもほとんどないので遊ぶと言っても、

幼稚園児がどう遊ぶのかが分からない。


だから遊ぶとなったら公園に行くくらいしかないのだ。



母親は洗濯物や家事などで忙しく動いていた。




プルルルルプルルルル…



家に一本の電話が掛かってきた。



「もしもし?」



母親は電話を取って話を聞いていた。

すると俺の顔をちらっと見て電話を渡してきた。



「えっ?何?」


「なんか園長先生が雅が大切にしてる折り紙を忘れてるって。

 だから雅に聞きたいってさ…」


「う…うん」



俺は受話器を耳に当てた。



「お母さん聞いてる?」


「いやっ…家事してるけど…」


「適当に相槌打ちなさい」


「うん…」



俺に園長は話を続けた。



「単刀直入に話すわね。

 この前の迎えに来る話だけど、

 100回のやり直しって情報が漏れたみたいで、

 外国からも引き取りの要望が出てるの」


「どういう事?」


「要は全世界であなたの取り合いになってるって事よ

 だから少し気をつけなさいね。

 誘拐されちゃうかもしれないから」


「えっ…?」


「月曜に幼稚園に来たら、

 こちらのエージェントに会ってもらうからね」


「はっ…?」


「よろしくね!」




ブツッ…ツーツー




あまりに乱暴な電話で唖然とした。

こっちが聞いてるだけしか出来ないのを良い事に都合よく電話を切りやがった。



「雅?電話は?」


「園長先生切れちゃった」


「あら?なんて言ってたの?」


「折り紙机に置いとくねって」


「それだけで電話してきたのね」


「うん…」



母親は不思議がっていた。











そして俺はこの後に事件に巻き込まれることになる。

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