草原で出会った君の大切な人
「ここが草原だよ。」
空音さんは私との手をほどき、わたしに景色を見せる。
そこには緑が咲き誇り、自由に飛ぶ蝶がたくさんおり、静かながらに存在を魅せる色とりどりの花が咲いていた。
「見て、あれは君のようだね」
そう言って空音さんはある一輪の花を指さした。
「へ…?」
「君も、この花も美しい。美花のようだろう?」
な…!?空音さん…!
急に褒められてお姫様気分のようになり、顔が赤くなったと感じた。
「あはは、すごく可愛い。さぁ、行こう。ここから先はもっと綺麗だよ。」
また私の手を引き、羽をひらひらとなびかせて空音さんは空を舞った。
ぷあ!ぷあぷあ!
星の子の鳴き声が聞こえ、私と空音さんは振りかえる。
「あ、蓮だ。」
れん…?だれだろ…?
「やっほーそらちゃん!久しぶりー!」
毛先が跳ねており、これまた高身長のイケメン星の子がこちらに飛んできた。
「久しぶりっつったって、昨日会ったろ?」
空音さんじゃないくらいの言葉遣いだ。
言葉遣いが悪い訳では無いが、本当に仲の良い友達なんだなぁと察する。
「ふはっ、確かにそうだな。てか、この子誰?ちっちゃいねぇ」
そう言って蓮さんはわたしを見る。
「あー、この子?うーんとねぇ…彼女」
いきなり虚言!?!?
びっくりして空音さんの方を勢いよく見る。
蓮さんはにやにやとわたしたちふたりを見た。
「いやっ、違います!た、ただの…」
言葉が詰まった。
友達と言っていいのだろうか?
ただ連れてきてもらっているだけなのかもしれない。
空音さんにとってはただの今だけの付き添いなのかもしれないし、空音さんにとってわたしは彼女なのかもしれない…
いや、彼女ではないと信じたい。
そりゃあ、彼女になれるならなってみたいが空音さんがこんなわたしを好きになるか否かと言われたら否一択だろう。
「まぁ師弟関係みたいな感じかな。」
していかんけい…?
「あーね。え、てことはそらちゃんが師匠なわけ?えー、意外!」
「おい、なんだよそれ、弟子がいるのにそんな事言ったらイメージ悪くなるだろーが」
師匠…弟子…そういうことか。
わたしはやっと師弟関係の意味を理解する。
それにしてもまるでコントのようにぽんぽんの会話が弾んでいくのが本当に仲がいいんだろうなと感じる。
少し心にモヤモヤが生まれた気がした。
「あれ、あ、かっこいいキャラでやってるタイプ…?あ、ごめんなー」
「おい煽ってんだろ」
「煽ってまチェーンメールー」
「なんだそれ、美花が引いてんだけど」
「あ、みはなちゃんって言うのか、よろしくね、みーちゃん♡」
みーちゃんと馴れ馴れしく呼ばれ、少し驚く。
「みーちゃんて…ごめんな、美花。」
「いえ、全然…!むしろなんだか嬉しいというか、!」
慌てて対応するが、動揺があまり隠せない。
「みーちゃんって嬉しいのか?」
空音さんがわたしの顔を覗き込んで聞いてくる。
「えっと、まぁ…距離が近いっていうか…」
「じゃあおれもみーちゃんって呼ぶわ」
「え、そらちゃん…嫉妬…?かわいいじゃん」
嫉妬…!わたしなんかに嫉妬をしているわけが無いだろうと思い、慌てて蓮さんを牽制する。
「嫉妬じゃねーよ…」
少し顔を背け空音さんは言った。
「でも空音さんには美花って言ってほしい…です」
少し照れてしまって顔が赤くなる。
「うわ、ちょーぜつ可愛いじゃんよかったなそらちゃん」
空音さんを見ると、少し顔を背けて赤面していた。
「やめろよ蓮…」
わたしは空音さんのそんな一面も見れて、少し嬉しかった。
「ていうか、これからどこ行くんだい?」
「まぁ、楽園に行ったらその後は雨林行くつもりだけど。」
らくえん?うりん?
わたしの知らない言葉ばかりだった。
「お、じゃあおれまだ楽園行けてねえからさ、着いてっていい?」
蓮さんはそう言って空音さんと手を繋いだ。
「もちろんだ。美花、いいかい?」
少しモヤッとしたような、不安に感じたのか分からないが、一瞬渋ってしまった。
「えっ、あ、はい、!」
空音さんはわたしの返事を確認するとすぐに羽を広げ、また空を飛んだ。
空と僕。花と君。 そらやま みずき @re_g_
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