五人目 最後の復讐は地獄への招待 その九

 全ての復讐を終えた十二月の中旬。


 姉さんが通っていた高校の情報をグレモリーが持ってきてくれた。


「高校への入学希望数が、主が告発した動画の影響で辞退する生徒で激減。生徒の親も、『こんな虐めを隠蔽するような高校に子供を通わせたくない』と。現在、通う生徒の中からも別の高校に通いたい、今後の経歴に泥を塗りたくないから自主退学を希望する者も多いそうです」


 ははっ。ざまあみろ、ってやつだ。


 あの時、父さんの訴えを聞き隠蔽などせず受け入れ謝罪と公表してくれていれば、こんなことにはならなかったのにな。


 学校側としては、入学希望数が満たなければ廃校に繋がるだろう。


 他にもグレモリーが持ってきてくれた情報はあの有名ホテルについてもだ。


「ホテルの方も、予約のキャンセルが殺到、従業員が一斉に辞めるという事態に発展しているようです。社長の一ノ瀬は息子が関与した虐めの件について、記者会見を開き謝罪と息子の行方についての言及には『何も分からない、連絡がつかない、警察の調査にも全面的に協力する』とのこと」


 ホテルも大打撃か。そうでなくては、復讐の対象にした意味がない。例え、息子と絶縁したとしても姉さんの虐めについて何もしなかった報いだ。


 そして、橋本刑事と政治家の佐藤議員についてグレモリーが語る。


「橋本刑事、佐藤議員については、マスコミが虐めの有無と隠蔽について詳しい説明を要求するため殺到。毎日、自宅や事務所、勤務先に押し寄せているようです。だた、二人共その要求に応える様子は今のところありませんが。鈴宮奈緒美の家庭にもマスコミが押しかけているようです」


 なるほど。まあ、認めれば民衆から批難されるのは目に見えている。だが、認めなくてもあの動画で言い逃れは不可能だろう。


 橋本刑事に言った通り、社会から蔑まされ国民からの信頼を失って中傷を一生、受けながら生きていけ。それが貴様らにする僕の復讐。


 それから連日、報道番組で取り上げられ虐めを受けた被害者の遺族を調べようとマスコミと世間が騒ぎそれ一色に染まる。


 姉さんの名前や、僕ら家族のことについては一切情報がない。そのことでネット上では、作り上げた話では? などと憶測が飛び交うが僕は気にしない。


 そして警察やマスコミが僕の下に辿り着くこともない。


 邪魔をされ僕との契約に支障をきたされるては困ると、三人の悪魔の能力によって完全に情報操作され知ることは不可能となっているからだ。


 悪魔が存在するなど空想像、そう思うのが自然。しかし、悪魔は実際に存在し社会に溶け込み人間の常識でどうにかできるわけがない。


「復讐を完遂する瞬間をどれだけ待ち望んだか……!」


 テレビ、スマホの画面を眺めながら心の底から喜ぶ。

 ああ、本当に良かった! 復讐ができて!


 ただ、気になるのは……父さんと母さんのこと。離婚して、僕は父方の祖父の下へ。あれから数年経った今、母さんに会うことは一度もなかった。


 父さんも、新しい女性と巡り合ったらしくここに帰ってくることはない。今、二人が何をして家庭を築いているのかさえ僕には分からなかった。


 グレモリーに頼めばすぐ分かるだろうけど……今更、姉さんのいない家庭に戻りたいとは思わない。だったら、父さんも母さんも新しい生活を日々を過ごした方がいいのでは?

 そう思ってしまった……。


「それに、僕の運命はもう決まっている。これ以上、苦しみ辛さを味わう必要はないかな……」


 僕の呟きにグレモリーもアスモデウス、バアルは何も言わずただそばに控える。

 あとは待つだけだ。僕の誕生日であり姉さんの命日を。


 誰にも最後まで邪魔されず、最期を迎えるのも僕の望みだ。それを知っている三人の悪魔はその時まで僕を護り続けるためそばを離れずその瞬間を静かに待つのだった――。

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