五人目 最後の復讐は地獄への招待 その八
肉塊に変わり果てた一ノ瀬の下へ。
「その腐った感情、狂った思考回路を姉さんに向けなければ、こんな地獄を味わうことも肉塊に変わることもなかったのにな。全て、貴様の身勝手な行いが招いた結果だ。喰われる瞬間まで後悔してろ」
膝の高さの肉団子に向かって言い放つ。
微かに動くそれを、僕は控えていた悪魔に告げる。
「足しになるかは分からないが肉体も、魂も全て喰らうも遊ぶのも好きにしていい。僕は先に戻る」
それだけを言って僕は、一ノ瀬だったものに背を向け杖をつきながらその場を離れる。
「グレモリーとアスモデウスはどこを喰らう?」
「いえ、私は主のそばにいます。それはお二人の好きにどうぞ」
「じゃあ、お姉さんは魂を貰おうかしら~」
「そうか。じゃあ、俺は肉体を喰らうとしようか」
どうやら話は済んだようで、僕の下まで駆け寄るグレモリー。アスモデウスとバアルは一ノ瀬を喰らうことにしたようだ。
異空間から先に自室へ戻ってきた僕とグレモリー。
時刻は深夜の三時を過ぎた頃。
夕食は何も食べていないが、お腹は空いていない。
「主。少しお休みになられた方がいいでしょう。私がそばにいますので」
僕を気遣い休むよう諭すが、まだ動画を編集してアップする仕事が残っている。
「いや、まだやることが……」
視界が歪み、前のめりに体勢が崩れる。
あ、あれ……? 脚に力が入らない……。
「主……!」
グレモリーが咄嗟に受け止めてくれたお陰で倒れ込むことはない。
今になって、疲れがどっと出たのかな……。
僕が、思っていた以上に身体に負担をかけていたのか……。
「主、今はゆっくりお休みください」
「ああ……。そうさせてもらうよ」
「はい。ずっとそばにいますから」
「……ありがとう」
ぼそり、とグレモリーに礼を言う。聞こえていたかどうかは分からないが。
グレモリーにベッドまで運んでもらい、横になるとすぐに睡魔が襲い意識を手放した……。
数時間後に目が覚め、グレモリーが言っていた通り僕が起きるまでそばにいてくれたようだ。グレモリーの手に引かれリビングへ向かうと、異空間からアスモデウスとバアルが戻っていた。
「夏目ちゃん。まだ眠っていてもいいのよ?」
「そうだぜ。動画は明日でもいいんじゃねえのか?」
心配してくれる二人。
僕はそんな二人に笑って答える。
「大丈夫。少し寝たから平気だ。さっそく動画編集に取りかかる」
「夏目ちゃんがそう言うならいいけど」
「分かった。で、何をすればいい?」
「そうだな……」
最後に録った動画をパソコンに取り込み、専用の編集ソフトで機械音や字幕を入れていくようバアルに指示を出す。
そして、編集し終わった動画をユアチューブへアップ。
一ノ瀬駿のことを概要欄に書き記し、虐め告白動画はすぐに再生され閲覧数を伸ばしていく。アップしたのは朝方だというのに再生数もそうだが、動画のコメント欄には一ノ瀬を叩くコメントが多く寄せられる。
時間が経てば経つほど、朝のニュース番組に取り上げられ、当事者の家族のことについてもあれやこれやと批判や蔑みが寄せられる。
ネット上では、失踪と言われているが実際には彼らの身内や親族が、虐めの事実から逃げるために匿い隠匿しようとしているのではないかと、憶測が飛び交う自体にまで発展。
中には、政治家や刑事もいることがより批判を呼ぶ要素となっていた。
「これで終わった……。姉さん、やっとだよ。やっと、姉さんの無念を晴らすことができたよ」
手で視界を覆い、口は笑みを作りここにはいない姉さんに向けて言うのだった。
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