五人目 最後の復讐は地獄への招待 その七
永遠に繰り返し絶え間なく続く恐怖、苦痛、絶望、死を望んでも死ねない現状。まだ終わらない地獄に心身ともに怯える一ノ瀬。
これ以上は、いくら悪魔の能力で再生させ続けても心には限界がある、か。
そろそろ、終わりにしよう。だたし、楽に死ねるなんて思うな。
最後の地獄も激痛と血反吐、恐怖はもちろん、生きる希望を完膚無きまで破壊して奪って死へと追い込んでやる。
貴様が、姉さんにしたこと以上を、その身で受けろ。
僕の目の前に広がる光景は、闘技場から体育館並の広く白い室内へと変わっていた。グレモリー、アスモデウス、バアルが手に持つ物は鬼の金棒。
「ひひぃっ⁉」
それを見た一ノ瀬は、今までの地獄でもう分かりきったようで涙と鼻水を垂らし逃げ惑う。この部屋から出られる扉を探し四方を走るが、そんなものはどこを探しても見つかるはずがない。
「な、なんで扉がないんだ⁉ 嫌だ! もう殴られるのも殺されるのもたくさんだ! 死ねないならここから出してくれ!」
三人の悪魔から離れ叫ぶ一ノ瀬。そこへ、グレモリーが静かに近寄る。
「貴方は、死ぬこともできずただ私たちに殺され続けることだけが償いなのです。それだけのことを貴方が、主の姉君にした報いというものでしょう。まずは、私から脚を潰させてもらいます」
「い、嫌だぁっ! 来るな! 来ないでくれっ!」
壁を背に震え上がる一ノ瀬の脚に、グレモリーが握り金棒を横へ振るう。金棒は、いとも簡単に脚を折る。左脚の骨はあらぬ方向へ曲がり折れた骨が皮膚を突き破り鮮血が白い床を汚す。
「いいぃっ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ――!!!」
床に転がり左膝を抱え泣き叫ぶ一ノ瀬。
「いっ……いだいっ! いだいっ! もう、いやだぁっ! だれが、だれがぁっ! たずげでっ! だずげでぇっ!!」
何もない空虚に手を伸ばす。そこへ、アスモデウスが使う金棒が無慈悲に振り下ろされ伸ばす手を押し潰す。
鈍い音と床にめり込む金棒、その周りに血が飛び散る。
「いいいいぃっ、ぎゃややややぁぁぁあああああああああああああああっ!!」
アスモデウスの綺麗で白く細い指が一ノ瀬の頬を撫でる。
「うふふ~。坊や、助けなんてこないわよ。もっと痛がって泣いて鳴いて、お姉さんを楽しませてね」
妖艶な笑みを浮かべその指は、目を開き閉じることができない眼球に触れ抉り取る。
「ううぅぁぁああああああああああああああああああああああっ!」
右目を抉り取られ何度目か分からない絶叫を上げる。
片目を失いのたうち回る一ノ瀬へ、アスモデウスの残虐は終わらない。目の前で目を喰らい、それでも足らず、一ノ瀬の胸へと血のついた手を伸ばす。
逃げることができない一ノ瀬は、眼前に迫るアスモデウスの手を何もできず眺めそして左胸を貫かれた。
「ゴフッ……。ウブッ! ひっ、ふっ、はっ……」
口から血溜まりを吐き浅い呼吸を繰り返す。
アスモデウスは舌舐めずりで、頬を赤らめ腰をくねくねと揺らし胸へ埋め込んだ手を引き抜く。その手に持っているのは左の肺だった。
「あぐっ……、がはっ……」
「綺麗な赤い肺。お姉さん、人間の臓器を喰らうのも好きなの~。坊やの肺は、どんな味がするのかしら~」
舌を出し、まるで果実を食べるように舌で表面を舐めキスをするように唇を当てかぶりつき滴る血を吸い込み咀嚼する。
目の前の光景に、僕までもが言葉を失くす。怖いとか気持ち悪いとか、そんなことを思ったからではない。目の前で人間の臓器を果実を喰らうかのような姿の悪魔が、あまりにも淫靡で綺麗で美しいと、狂った思考をしてしまったからだ。
まるで悪魔に取り憑かれた異常者の思考回路。
「あはっ。坊やの肺、林檎のように水分があって甘く、メロンの果肉のように柔らかく、後味もしつこくなくてお姉さんの空腹を満たすわ~」
……例えが想像できてしまい背中に悪寒が走ったぞ今。
「おいおい。お前の食事じゃねえんだから。そろそろ、俺にも殺らせろ」
「あら~。お姉さんはいいわよ」
「じゃあ、俺の番だな。肉団子にでもしてやろうか」
最後に回されたバアルが、醜悪な笑みを作り一ノ瀬を見下ろす。
肩に担いだ金棒を構え、背中を殴り飛ばす。一ノ瀬はくの字になって横へボールのように転がっていく。それだけで終わるはずもなく肩、腕、腰、折れていない脚と次々に金棒で殴り続け文字通り肉団子を作ろうとするバアル。
もはや、人間の姿などなく四肢は折れ丸め込まれていき一ノ瀬の声は聞こえない。絶叫を上げることも、悲痛な泣き叫びが木霊することも。
いや、聞こえないのではなく叫びを上げる口が身体を丸め込まれて塞がり上げられないのだろう。
「人間団子の完成だぜ!」
バアルの宣言通り、床に出来上がったのは一ノ瀬の身体をした団子だ。
人としての姿も失い、肉塊の姿に変わり果てたな一ノ瀬駿。それが貴様の、最期だよ。
「しかし、丸め込まれても死ねないなんてな」
変わり果てても、その身体が微かに上下し動く姿を見て呟く。
さあ、最後の復讐も終盤だ――。
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