第2話・おいでませ異世界

 森の中にやってきた小雪は思う。


(ここが異世界?ただの森に見えるんだけど)


 他の生徒も半信半疑はんしんはんぎなようで、不安そうに回りを見回している。


 そこへ、草原くさはらを踏みしめる足音が聞こえてきた。


「みんな、一纏まりになって動かないでくれる?動いたら動物のエサにするよ」


 顔は笑顔なのにいっていることがえげつなくて生徒たちは小雪のいう通りにした。


 そこへやってきたのは、一人のドレスを着た女性だった。


「あら、怖がらせてしまいましたか?わたくしはあなた方を迎えに参りました。マリエッタと申します。あなた方の学園の理事長です」


 やってきたのが新しい理事長だとわかると、生徒たちは安堵の息を吐いた。


 突然謎の扉ではなく輪っかを通らされ、やってきたのが森なら熊や狼のエサになりかねなかった。


 人だとわかれば安心だ。


「理事長先生、そういうサプライズはいらないんだけど?」


「すみません、さぁ、参りましょう。新しい校舎けん寄宿舎きしゅくしゃに案内します」


 そういって、マリエッタはパンプスで優雅ゆうがにスタスタと歩きだした。


 名前が洋名なのに日本語を話している事に小雪は首を傾げて考える。


 やはりここは異世界ではないのではないかと、マリエッタをじーっと見ながらその考えを改める。


 そもそも、もうほとんどドレスを着て歩く海外の人なんてみたことはない。


 王族の人々ならたまに着るだろうが、今はブランドものを着るのではないだろうか?と、小雪は考えを纏めようとする。

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