第1話・理事長の思いつき3

 そのうちに小雪の後ろに他の生徒が並びはじめる。


 小雪が振り返るとそこには大人しそうな男子生徒が立っていた。


「何?」


 声は高くもなく低くもなく中性的だった。


「まっ、暇だからちょーっと話しでもと思っただけだけど」


「そうなんだ。僕は理事長の思いつきがここまでヤバイなんて知らなかったよ」


「ああ、いつもは体育祭で乱闘がみたいとか、文化祭じゃなく音楽祭をしようとかだったんだけど、今回のは凄いね。中高一貫校のうちの理事長は頭がイカれているとしか思えないね」


 小雪が正直な感想をサラリといえば、男子生徒は「そうだね。いつもとは思いつきがけた外れだよ」と苦笑いした。


 そんな話をして数分後、理事長室の扉が開けられた。


 中からは理事長がニヤニヤ顔で「さぁ、入るんだ」と中にはいるように促した。


 生徒が数人入ったところで、理事長は七色に光る輪っかを指差していう。


「これを潜ればそこはもう異世界だ。君達の健闘を祈る!以上、さよならだ」


「はい、さいなら先生。来年はこんなバカな思いつきしないようにね」


 小雪がニヤニヤしながらそういって、七色に光る輪っかを通過する。


 中にはいれば瞬き一つで、森のなかだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る