第2話
放課後、帰宅部の私はいつも通りのそのそと帰路を歩いていた。前にはメカがいた。
これは今朝のことを謝ったほうがいいのか。
でも万が一、メカが今朝の会話を聞いていなかったとしたら、骨折り損であるし余計ややこしくなる。
まあ、たぶん、あの距離では聞こえていたか。
嫌われ者のメカにだって私は嫌われたくなかった。
人間誰だって人から嫌われたくないはずだ。
誰からも好かれたいと願っている。
だから私は後ろからそっと近づいてメカに声を掛けた。
「ねえ、メカ」
つい癖で名前ではなくあだ名で呼んでしまったがメカは何も気にしていなさそうだった。
「何?」
ひょろひょろとした体つきのメカが訝し気に振り向いた。
「あ、いや、前にいたから。どうせ変える場所同じだし、一緒に帰ろうと思って。」
「そう。」
メカの隣に並んだはいいもののなんと切り出せばいいのかわからない。
二人して無言で歩き続けた。
マンションが見えてきたところで私は口を開いた。
なんて言えばいいのかは考えつかなかったけど勢いで乗り切ろうと思った。
「あのさ、朝の会話聞いてた?」
「ああ、うん」
まるでどうってことないようにメカは頷いた。
「怒らないの?」
あまりに冷静だったから驚いて、まず謝ろうと思っていたのに質問をしてしまった。
「それくらいのことじゃ怒らないよ。私は宇宙飛行士になりたいから。」
「え?」
思わず聞き返す。
「私の夢なの、宇宙飛行士になることが。宇宙飛行士はストレスのかかる仕事だから自分の感情を表に出すことなく常に冷静でいなくちゃいけないんだって。それに宇宙と比べたら悪口を言ってくるクラスメートなんてちっぽけな存在だよ。」
そうだ、長らく話していなかったから忘れていたがメカは相当な不思議ちゃんだった。
小学校の時はそんなメカの発言が面白くて話しかけに行っていたことを思い出した。
「じゃあ少しでも笑ってクラスメイトに好かれようとかも思わないんだ」
「うん、思わないね。逆になんであんたはつまんなくてもいっつもヘラヘラ気持ち悪く笑ってんのかが不思議だわ。」
ヒドいという言葉が喉まで出かかったが今朝の私はメカに死ねと言ってしまったのを思い出してただ口をもごつかせるだけで終わった。
そこからはまたマンションに着くまで無言で歩いた。
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