第18話 これから

 部屋が静寂に包まれる。俺のこと好きなの? って聞くとかナルシスト、よほどのモテ男しかいないだろう。俺がそんなことを言うなんて思ってもみなかった。


「好きなのか……か。うーん。たしかに言ってなかったかもね。私ね……真夏くんのこと好きだよ……」


 心臓が止まったかと思った。その上目遣いで俺に好きだと告白する紗耶さんの表情は学校では絶対見ることのできない、俺しか見れないもので。


 不安そうに揺れる目と震える体を見た俺は「愛おしい」と思ってしまった。


「だって私の大好きなお父さんの会社をどんな時でも応援してくれて。真夏くんを意識し出したのはそんなキッカケだけど、見てると良いなって思い出してそこからどんどん気持ちが真夏くんの方にいってね」


 紗耶さんの言葉はまだ止まらない。俺は身体が熱くてオーバーヒートしそうだ。


「紗耶さんお、俺も……」


 俺も好きだ、そう言おうとしたところで紗耶さんがゆっくりと首を横に振る。


「まだダメだよ。だって真夏くん、まだ私のこと完璧に好きじゃないでしょう。流れに流されて告白されてもあんまり嬉しくないもん。だからね」


 そこで言葉を止めると、なんとも妖艶な笑みを浮かべる。その瞳に吸い込まれそうになりそうだった。


「次の配当基準日の九月末。それまでに私は真夏くんを完璧に堕としてあげる。私にメロメロになったらその時にちゃんと告白して欲しいな」


「もし……できなかったら……?」


「うーん。絶対真夏くんは私にメロメロになってくれるからそのことは考えなくて良いかな。まぁ出来なかったら債務不履行、デフォルトってことかなーあはは」


 最後にデフォルトとか言っておちゃらけたが、その目は本気で今以上に紗耶さんに惚れさせると言っている。


 今が六月前で次の権利付き日が九月末。約四ヶ月ものすごいことを紗耶さんにされるらしい。


 ちなみに権利付きって言うのはその日に株を持っていれば優待だったり、配当をもらえるという基準日の日。理屈でいうとその一日さえ株を買っていれば配当、優待はもらえるのだ。


「じゃあ早速イチャイチャしたいけど、まずはお勉強しなきゃね。はい、数学からまずは始めるよ」


 言われたのでテキパキと数学の教科書とノートを出す。うまく誤魔化せているだろうか。


 女の子。それもこの一日でかなり意識させられ、好きになりかけた……というかもう好きになってしまった子にそんなこと言われたら、一週間と保つかわからない。



(本当、カオスというか……意味わからなくなってきたな)


 すでに好きな人にさらに好きにされるって俺の紗耶さんへの好感度をカンストさせようとしてるのか? 


 そんなこんなで紗耶さんとのよくわからない生活がまた始まるのであった。



 読んでいただきありがとうございます! 実は実はなんとこの作品のイラストを描いて下さった方がいます! めっちゃめっちゃ嬉しいですね。すごく素敵やイラストになっております。近況ノートに掲載しておりますので是非ご覧ください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る