第19話 夕食
「そうそう。そこはこの式を使うとやりやすくなるよ。別にこっちの公式でもできるけど、計算が複雑だからね」
「なるほど。そこの問題よく分からなくてこっちの公式当てはめてたよよ。これじゃあ解けないわけだ」
黙々と晩ごはんまで紗耶さんの用意してくれた数学の問題を解く。さっきまで紗耶さんがイチャイチャモードを出していたため勉強なんてしないと思っていたのだが、めっちゃ真剣に教えてくれている。
俺がそわそわしてしまいそうだ。横でふわっと漂ってくる甘い匂いとか可愛らしい横顔をみても我慢我慢。煩悩退散!
「二人ともご飯よ〜」
ちょうど一問解き終わって区切りが良いところで母さんがご飯が出来たことを教えてくれた。そういえば紗耶さんが作ってくれるのかと思っていたけれどそうじゃないんだな。
「んー? 真夏くん私の方みてどうしたの? あっ、まさか今日の晩御飯私が作ると思ってたの?」
俺の腕をツンツンと突きながらここぞとばかりに攻めてくる。正直めっちゃめっちゃ恥ずかしい。
愛情たっぷり手料理とか言われると全身を掻きむしりたくなるのは俺だけではないはずだ。よく紗耶さんは平気だなと顔をみてみると耳が真っ赤。
「今見ないで〜。私も今のはちょっと恥ずかしかったかも。で、でも事実だから! 明日作るのはちゃんと気持ちを込めて作るからね!」
そんなことを言われて平然としていられるはずもなく、むず痒い雰囲気のまま下の母さんたちが待つリビングへと向かうのだった。
「このから揚げすごく美味しいです! 今度レシピ教えてください!」
「いやぁ良かったな真夏! こんな可愛いお嫁さん貰って。これでうちも安泰ってやつだ! ビールが旨い!」
今日は父さんも一緒の食事。昨日は仕事で帰って来れなかったが、今日は早上がりで3時くらいには家に帰れたらしい。
紗耶さんを見てびっくりするかと思ったが、全くそんな素振りはなく、自然と紗耶さんを受け入れていた。
父さんも優待や配当金狙いの投資をかれこれ数十年行っている。どう考えてもお嫁さんが優待で送られてくることはないと分かっているはずなのに。怪しい……何かありそう。
「紗耶ちゃん、そうね今度レシピ教えてあげるから一緒に作りましょう」
「そうだ真夏。この土日は父さん休みだから母さんと泊まりでちょっと温泉旅行行ってくるから」
「あ、了解。んっ……? 待て待てなんて言った?」
すごい自然に言うからツッコむことが出来なかったじゃないか。
「だから母さんと旅行に行ってくるって言ったんだ。もう真夏も高校2年。俺たちが2日居なくても大丈夫だろ?」
「ま、まぁそうだけど」
「心配しなくても大丈夫よ真夏。紗耶ちゃんがちゃんも家にいてくれるそうだから。土日は二人で過ごしてね」
「はっ?」
爆弾発言に紗耶さんの方をみると俺を初めて迎えてくれたみたいにお辞儀をしてこう言った。
「不束者ですがよろしくお願いします」
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