第159話 帝国への道 その5
アークストルフの誘いで、風呂に一緒に入る事になってしまった。
おっさんと二人で風呂に入るなんて、こっちの世界では初めてだ…。
気のせいか、アークストルフの視線を感じるが…そんなコトはないと信じよう。
「しかしハヤト殿、惚れ惚れするような体だな、
いや、さすが当代一の勇者の二つ名は伊達ではないなッ!」
「ははは、恐れ入ります」
…気のせいじゃないな。やっぱり見てるな。
「では失礼します…」
俺は一言断ると、湯船を跨ぎ、浸かろうとすると、
「こ、これは…っ?!」
アークストルフが驚きの声を上げた。
視線を感じるというより、ガン見だ。
おっさんに視姦されとるッ!
「あの…あんまりジロジロ見ないでもらえますか?」
アークストルフがあまりにガン見してくるので気まずくなり、
やんわりと注意するが、アークストルフの視線は俺の股間に釘付けだ。
「な、なんだねソレはッ?!デ、デカすぎるだろッ!
昔カストラールに自慢気に見せびらかされたが…それ以上、大人と子供の差じゃないかっ!」
「だから見ないでくださいって!」
俺は慌てて股間をタオルで隠す。
「こんな…こんなモノを娘に、い、入れたらっ!…こ、壊れるだろっ!」
「何の話ですかっ?!」
「君のナニについてだよ!何だねこのサイズはっ!相手の事を考えてるのかっ?!」
「知りませんよ、そんな事っ!」
「なんたる身勝手!やはり君のような男には娘はやれんっ!」
「まだくれなんて言ってないでしょっ!」
「あっ!まだ!まだって言ったな!やっぱり娘を
「そんなワケないじゃないですかっ!」
いや、そんなワケあるのだが。
おたくの娘さんを狙ってますが、それはまだ先の話だっ。
「大体、アルフリーヌはまだ子供じゃないですか」
「そうだ、子供だ。だが、その子供にも手を出してるようじゃないか」
ぐっ、痛いトコを突いてくる。きっとアルフリーヌに付けたリッツァのコトだろう。夕食前にマイヤーが彼に植え付けた『少しの不安』がここにきて花開いたのだろう。
リッツァにはがっっつり手を付けているがここは…。
「ははは、閣下、ご冗談を。閣下に付けましたツァーレをご覧になったでしょう」
「う、うむ。」
「如何でしたか?」
「それは…成熟した、非常に魅力的な女性だと思うよ」
ツァーレの肢体を思い出したのか、アークストルフの頬が少しゆるむ。
「ありがとうございます、彼女も喜ぶ事でしょう。
では、ルヴォークや当家の家令のマイヤーなどは如何でしたか?」
「うむ、ツァーレ殿に負けず劣らず、豊満でありながら、しなやかなで女性的な体つきで、二人とも魅力的であった。」
「では、私の好みはお分かりでしょう?」
「う~む確かに…いやしかし!そうだ、今回帯同するロッテン殿はどうなのだ?」
「彼女とは何もございません、天地神明、神に、いえ、陛下に誓って潔白でございます!」
うん、ロッテンとは本当にまだナニもないので、ウソはついていない。
「ぐぅ~む…そこまで言われては、信じないワケにもいかないな…
ハヤト殿、疑ってしまい申し訳ない。」
アークストルフが頭を下げるので、俺は慌てて止める。
「頭をお上げください、閣下。
閣下だけではございません、ザンジバル公にも疑われるのは、私が至らぬせいでございます。」
「いやいや、そんなコトはない!貴殿の働きは大変評価している!
それは私だけでなく、カストラールや陛下もそうだ!
貴殿ほどの忠義の士が自身を卑下しては、我ら他の家臣らは立つ瀬がなくなってしまう!」
「ありがたきお言葉、閣下のお言葉を確と胸に刻み、これからも王家、王国臣民のため、
皆様のご期待に添えるよう邁進いたします!」
俺は直立不動で胸を張り、王国への忠誠を誓う。
その威風堂々たる様は、王国臣民の涙を誘うほどの、
忠烈の士、臣下の鏡として映った事だろう…下半身をブラブラさせた全裸でさえなければ。
「ハヤト殿、そなたの様な立派な忠臣を私は他に知らない!
陛下に貴殿の様な臣が仕えてくれている事、陛下に代わり感謝の意を述べよう、
ありがとう、ハヤト殿。」
「非才の身には勿体無いお言葉です、閣下。」
俺とアークストルフは手を握り合う。彼の目には感動の涙が浮かんでいる。
俺の忠臣演技が功を奏し、アークストルフの追求を躱すことが出来た。
せっかくのチャンスを逃すわけにはいかない、
「で、では閣下、私はお先に…。」
俺はほとんど湯船に浸かってないが、そそくさと風呂を後に…。
ーガシッ!ー
「まあ、待ちたまえ。」
アークストルフが俺の肩を掴んで引き止める。嫌な予感がする…。
「で、娘をどう思うかね?」
「え、質問の意味がわかりかねますが…」
「君のさっきの言い様では、私の娘は全く魅力がない、とでも言いた気だったが?」
「いえ、決してその様な事はっ!非常に可憐で、数年後が楽しみです。」
「そうだろう、そうだろう!親の私が言う事ではないが、あれは必ず美人になる!」
「そうですね、私もそう思います。」
「あれは小さい頃から社交界では一際目立っていたんだ」
「そうですね、私もそう思います(知らんけど)。」
「近頃では好きな男も出来た様で、ますます女っぷりに拍車がかかっている!」
「そうですね、私もそう思います」
俺は早くこの場を去りたい一心で、おざなりに生返事を繰り返すが、
その後も彼の娘自慢は続き、俺達はのぼせてしまったー。
つづく
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