第154話 弔問団 その4
「いつもいつも貴方には面倒事を押し付けてしまって…。」
玉座に座る申し訳なさそうな顔の陛下に、俺は
「陛下の命とあらば、王国の臣として犬馬の労もいといません。」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かります。」
王城の謁見の間、陛下をはじめ、多くの諸侯に見守られる中、
弔問団の壮行会が行われ、俺は陛下のお言葉をいただいた。
「此度の件、帝国の謀やもしれん。気を付けられよ。」
女王の横に侍る、軍務大臣のカストラールが声を掛ける。
「はい、お心遣い、ありがとうございます。」
「アークストルフ親娘の警護も任せる事になって、すまないな。」
「いえ、帝国の腹も見えぬ今、本国の兵を割く事もないでしょう。
私の身は自身で守れますし、連れて行くこのシンムはあのカシネとも渡り合える強者、アークストルフ様の護衛には十分でしょう。」
「カシネと言うと、あのエフタフを倒した少女か!
なんと、あの少女と互角とは…それなら安全だ。」
カストラールとアークストルフは仲が良いらしいから、心配だったんだろう。
まあ、アークストルフの随行を前もって伝えられてたらカシネも連れて来ていただろうが…。
「それほどの戦力と王国有数の知恵者を擁され、其方はどうするつもりだ?」
カストラールの横にいた財務大臣のザンジバルが俺を睨んでくる。
予想はしていたがやはり、そういうイヤミは言われてしまうか。
「閣下は私に二心がある、と?」
俺は敢えて下手に出る。
「そう見られている自覚はあるのか。」
「ご忠告感謝いたします。ですが私に二心などございません、全ては女王陛下のため…。」
「ふん、其方のその慇懃無礼な所が鼻持ちならぬっ!」
「ザンジバル、そのへんにせよ。」
ネチネチやられる俺を不憫に思ったのか、陛下がザンジバルを諫める。
「くっ、まあよい!おかしな気を起こさず、忠義に励めっ!」
「はっ!」
俺は恭しく頭を下げた。
カシネやシンムに俺自身といった剛の者、そして王国随一の知恵者ロッテン、
この過剰戦力とも言える俺の領土を脅威に思う貴族は多そうだ。
ザンジバルの言葉にもっともだ、と頷いた者もちらほら見えた。
これからは貴族の令嬢達に積極的に声を掛けていく予定だ。
そうなると、俺が国盗りを狙ってる、と余計に勘繰られるだろうか?
痛くない腹を探られるのは避けたい。本当に二心などないのだから。
「さて、弔問団の皆には王宮に部屋を用意してある。
今晩はそこに泊まり、明日帝国へ向かわれよ。」
「それでは皆さん、よろしくお願いしますね。」
「はっ!」
弔問団の俺達は、陛下に頭を下げ、壮行会は終わった。
『明日から帝国への旅、馬車で半月ほどか…。
帝国へ着いたら、少しくらいは自由時間はあるだろうか?』
俺はミュールから帝国へ向かった飛鳥の事を考える。
『飛鳥、どうしているのか…。ウンディーヌを出し抜いて飛鳥を探す事は出来るのか?』
俺の頭はいるかどうかもわからない、飛鳥の事で一杯になったー。
つづく
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