公爵邸の人々

第7話 家へ帰ろう

王城を後にして、久々の王都でこれから必要な物、日用品を買った。

美少女二人と買い物デート…心なしか胸を張って歩いてしまった。


買い物を終え、王都のある場所を目指す。


「高御座、どこへ向かってるんだ?」

道祖が不安そうに聞いてくる。

女王は二人のために部屋を用意してくれていたが、

俺が丁重にお断りした。

女王の横で大臣が苦々しそうにこちらを睨んでいたので、

この選択は間違ってなかったようだ。

彼女達を王城に残すのは、俺の弱味を置いておくことになる。

俺を快く思っていない奴がいると、どう利用されるかわからない。


「俺のこっちの世界での家だよ。

王城に比べると当然小さいけど、二人には不自由させないつもりだよ。」

「高御座くんの家があるのっ!?」

先ほど、王都大通りの市馬や店舗に目をキラキラさせていた道祖が尋ねる。


「まあね。5年も居たんだ。生活基盤くらいできるさ。」

「すごいっ、ホントに異世界生活だったんだねっ」

やはり道祖は異世界に興味津々のようだ。


王都の一角、少し大きな建物の前で足を止める。

「ココがお前の家なのか?」

「えっ?!大きい!!すごい…!」

玄関の前で立ち止まり建物を見上げていると、


「きゃっ!」

「どけどけ、邪魔だぞ。」

「こんな所に突っ立って…なんだお嬢ちゃん?犯されてぇのか??」

「変わった服だな、新手の立ちんぼか?」

背後から柄の悪い大男達が現れ、

二人の美少女に口々に卑猥な言葉を掛ける。


「なんだっ、貴様等っ!」

神前が道祖を背に隠す。困った奴だ。


「生意気な女だなっ!」

男の腕が神前に伸びる。

ここは地球じゃない。

この世界がどういう所か、少し痛い目をみて理解してもらった方がいいか?


「うわっ?!」

ま、そういう訳にもいかないな。

男の前腕を掴み、俺、登場。


「なんだっ!テメェはrげ@あpクェーfgけら@p?!」

男の腕を掴む手に力を入れると、男は悲鳴を上げる。


ーミシッー

更に力を入れると、男の前腕が軋む。


「おf知恵rwぱgr@」あgwbs「kーレゴpゔぁ?!」

男の悲鳴が辺りに響く。


「何事だっ騒々しいっ!!」

玄関が開き、立派なフルプレートアーマーの女騎士が飛び出てくる。

白銀の鎧に、金色の細やかな装飾。素人目にも高価であることがわかる。

長い金色の髪と金色の瞳、整った顔立ちが高価な鎧を更に引き立てる。


「姉上、お待ちください、剣をっ!」

更にもう一人、金色のフルプレートアーマーの女騎士が剣を片手に慌てて出てくる。

金色の鎧に、銀色の細やかな装飾。こちらも高価なことが一目でわかる。

長い銀色の髪に銀色の瞳、前者に負けぬ整った顔立ち。

王国最強、近衛騎士団の第一、第二騎士団の団長を拝命する双子姉妹、[金色のロイヒ 白銀のヴァルシ]。

剣術ではノイラーと対をなす、王国の剣だ。


「ろ、ロイヒっ!」

「げーっ、ヴァルシっ?!」

男達の顔色がみるみる青くなる。


「貴様ら、何を騒いでいるっ?!」

二人が男達へ近づく。


「姉上、こいつら騒乱罪で取り調べ…。」

「よぉ、二人ともっ!」

男の腕を更に捻り上げながら二人に声をかける。

男はもう、痛みに声も出ない。


「誰だ、馴れ馴れしい…。」

二人がこちらを見る。

目があったので、手を振って、


「久しぶりだな、聖水のロイヒと白目のヴァルシw」

「「っっっっっ!!!!」」

二人が声にならない悲鳴を上げる。


「なんだ二人とも、久々の再会だぞ?もっと喜べよ。」

「き、貴様っ!」

「ハ、ハヤトっ?!お前、また召喚されたのかっ??!!」

「女王陛下は貴様が戻るなど一言も…っ!」

「サプライズなんじゃね??」

「「いらんっ!!!」」

二人との再会を楽しんでいる間に、コッソリ逃げようとする男達。


「逃すかっ!」

「聴取をするのも煩わしいっ!治安を乱す不逞の輩ということでっ!」

「「我々の八つ当たりの的になれっ!!」」

「横暴だぁぁーーーっっ!!!!!」

男達を力一杯殴り飛ばし、蹴り飛ばす。


「相変わらず頼もしくもヒドい。」

二人の逮捕劇を眺めながら、独り言を呟く。


「あの、高御座君?」

状況を飲み込めない道祖が話しかけてくる。


「ああ、すまん。

ココは俺の家じゃなく、ダンジョン攻略を生業にする冒険者達の施設ー…。」

「ギルドねっ?!」

「そ、そうだ。」

道祖さん、グイグイくる。まぁ、飲み込みが早くて助かるんだが…。


「で、さっきの金さん銀さんが、騎士団の団長さん。

冒険者ギルドには騎士団の出張所があるんだ。

ちなみに、本部は王城にある。」

「で、二人との関係は??」

ツェーカとノイラーの関係にも納得していない神前が睨みながら詰め寄る。


「お、俺たちの関係…。」

答えに詰まっていると、


「「何もないっ!」」

二人の騎士がハモる。

「騎士団団長と一冒険者に関係などあるハズがないっ!!」

「そうだっ!そんな男、見たこともないっ!!」

「いや、姉上それは幾ら何でも不自然すぎる。」

男達を縛り上げた二人の騎士が神前の問いに答える。


「と、とにかくっ!我々とハヤトは無関係だっ!」

「さ、取調所に行くぞ!とっとと歩けっ!」

男達を引きずり、二人と後から出てきた騎士団員達と歩き出した。


あっけにとられた俺たちは、小さくなるまで騎士団達を見送ってしまった。

我に返った俺が、

「ま、まぁ、そんなところだ!

そんな事より、早く行こうっ!」

「あ、ちょっ、ちょっと!」

「金色の人、お前の事ハヤトって呼んでたぞっ?!」

俺は二人の背中を押し、強引にギルドに入る。


「ぅわぁっ!!!」

道祖が感嘆の声を上げる。

ギルドの中は異世界モノに興味があれば、テンションが上がる事間違いナシ!な内装だ。

中世ヨーロッパの様な、梁は木で壁や床はレンガ造り、

建物の奥には西部劇に出てきそうなカウンターが並ぶ。


二人の興味が尽きるまで待っていては帰れない。

キョロキョロする二人の背中を押し、小部屋へ進む。


「ここは…?」

道祖が床には描かれている魔法陣に気づく。

「元の世界に帰れる魔法陣ではないよね?」

道祖が複雑な表情で聞いてくる。


「ああ、すまないが帰れない。

これは、念じた処へワープ出来る魔法陣だ。」

「ワープてあのワープか??」

「転移魔法陣ねっ!!」

専門用語っぽいの出た。

神前の反応が普通だと思うんだが。道祖の方がこの世界への適性が高いのだろうか。


「さ、みんな、こっちへ。」

道祖達を促し、魔法陣の中へ入る。


「行くよ」

召喚された時の様に光の粒が俺たちにまとわりつく。

「きゃっ」

そして、光で視界が奪われた。



つづく

『転封貴族と9人の嫁〜辺境に封じられた伯爵子息は、辺境から王都を狙う〜』という作品も投稿しておりますので、そちらもお読みいただけると幸いです。


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