勇者の帰還

第3話 3日ぶり、2回目の召喚

私の名前は道祖 飛鳥サイト アスカ

播磨灘北高校の2年生。17歳。


名前は我ながら古めかしいと言うか、厳しいと言うか?

小学生の時、クラスの男の子に奈良時代って呼ばれてからかわれたっけ。


好きな教科は国語と歴史。

文系には自信あり!

数学はちょっと苦手。

成績は中の上くらい。

もうちょっとで上位グループ入り、頑張らないと!

体育もちょっと苦手かな?

でも、体を動かすのは好きだから、

休みの日にジョギングしたり、妹とバトミントンで遊んだり。

趣味は読書。

魔法や剣で冒険するファンタジー物語が大好きっ!

学校でもよく空想の世界に飛んじゃって、

友達には『またボーっとしてる!』って怒られちゃう。


身長はクラスでも小さめ、150cm。

ウソ、149cm。

ちゃんと毎朝牛乳飲んで、カルシウムとってるのに、

余計なトコばかり育っちゃった。

クラスの男の子、皆私の胸をからかうの。

男の子って、人が気にしてるってわからないのかな?

ジロジロ見たり、コソコソ陰口言ったり。


あれ?

そう言えば、一人だけ、ジロジロ見ない男の子がいたなぁ。

誰だっけ?

恥ずかしがり屋なのかな?

真面目なのかな?

あ、それより!あの男の子はとっても優しいの。

日直だった時、授業の準備で重い荷物を運んでた時、

あの男の子が黙って助けてくれたっけ。


他にもあったな。

自転車のチェーンが外れて困ってた時に、

自分の手が真っ黒になるの気にもしないで直してくれたっけ。

その手で顔掻いっちゃって、ほっぺが黒くなって。

おかしくって、笑っちゃった。

せっかく直してくれたのに、悪い事しちゃったな。


あの男の子。

いつの間にか、好きになっちゃってたんだよね。

そんなにカッコイイわけじゃないし、クラスでも目立たない子なのに、

授業中もいつの間にか目で追っちゃって…。


それが3週間前、急に学校に来なくなって。

どうしたんだろう?

風邪かな?

不登校になっちゃったり?

そんな事考えて不安になって、先生に聞いてみたら、

『彼は失踪した』って。


でも、3日前。

彼が学校に帰ってきたの。

たくさんの生徒が失踪した理由やどうしてたのかを聞いてた。

私はそんな事より、たくさんたくさん心配してた事を伝えたかったけど、

とてもじゃないけど、近づけなかった。


でも、今日は声をかけられたの!

私から声かけようと思ってたのに。

あっ、彼から声かけられたの初めてかも??

失踪前より少し大人になったような、

落ち着いた?不思議な声で、ドキドキしちゃった。

勉強のために図書館にも誘えたし。


あれ?

その後どうしたんだっけ?

図書館から出た後、

一緒にいた凛がおかしくなって…。


そうだ、

なんか周りもキラキラ光り出して!

彼が何か叫んでっ!!


彼?

彼って誰だっけ?

とっても大好きな、真面目で優しい…。


『!!!!!』


なんで私、忘れてたんだろっ!

こんな大事な名前!

大好きな彼の名前っ!!


道祖飛鳥は、大声で彼の名前を叫んだ。



私の名前は神前 凛カンザキ リン

播磨灘北高校の2年、17歳。

部活は剣道部。

中学の時には全国にも行っている。

その実績で1年の頃から副部長をやっている。

部では一番強い!ハズだ。


好きな教科は体育。

体力には自信あり!

でも勉強は苦手だ。

成績は下の上…。

まだ受験まで1年、気合いで乗り越えてみせる!


身長は大きめ、168cm。

剣道は背が伸びるは本当だな!

クラスの男の子は影で大女だの女ゴリラだの噂しているようだが、

気にすることはない。

私より強い男にしか興味がないからな。


自分が大きいからだろうか?

小さい子が好きだ。

特にクラスで一番小さい飛鳥が大好きだ。

性的な意味じゃないぞ、

一番仲の良い親友だ。


その飛鳥に、好きな男が出来たらしい。

私には何がイイのかわからない、もやし野郎だ。

なんだか知らんが、3週間ほど失踪していたな。

飛鳥が随分心配していた。

私の親友をこんな気持ちにさせる針金野郎、帰ってきたらぶん殴ってやろうと思っていたが…。

今日、その鶏ガラ野郎に飛鳥が頑張って、声をかけたんだ。

顔を真っ赤にして、その小さな体のどこにそんな勇気があったんだろう?


ん?

誰に声をかけたんだったか?

私も助け舟を出して、図書館に誘ったような気が…?


んん??

そう言えば、さっき、

随分鍛えられた筋肉を触った気が…。

そして、周りがキラキラ光り出して…。

誰だ?

飛鳥が好きな、

着痩せがすごい、もやしの針金の鶏ガラ野郎…。



『!!!!!』


そうだ、あの筋肉っ!

こんな大事な名前!


神前凛は、大声で好きな筋肉の部位を叫んだ。




俺の名前は高御座 隼人タカミクラ ハヤト

播磨灘北高校の2年生、17歳だ。

こっちの世界では3週間前、異世界の[オスル王国]へ召喚されていた。

あのキラキラした体にまとわりつく光の粒はよく覚えてる。

あの忌々しい光。

光の精霊の召喚魔法だ。

たった3日前に元の世界に戻ったばかりなのに、どうもまた召喚されたらしい。


異世界の生活は最初は修行の毎日だった。

異世界召喚に付き物のチート能力なんてありゃしない。

異世界への適正が何かしら高いだけだ。

俺は2人の師匠、国内屈指の魔術師と戦士の2人に毎日毎日シゴかれた。

毎日毎日、厳しい修行に吐いて過ごした。

『実戦に勝る修行ナシ』と、いきなりダンジョンにも放り込まれた。

元の世界に帰ってからも、思い出して吐いた。

医者には失踪中のトラウマ的なものと診断された。

俺は異世界でトラウマを植えつけられたらしい。


午前中は魔法の修行。

俺は異世界人より魔法量が多いらしかった。

だが、魔法量が多いからといって、すぐに魔法を使えるワケでもなく。

魔力を使って、出もしない魔法を使う。

そのくせ魔法量は多いものだから、結果長時間シゴかれた。

魔法は知的なイメージだったが、師匠は体育会系だった。

魔法の杖で殴られたり、小突かれたり…。

杖の使い方が、暴力老人のそれだった。


午後からは別の師匠について剣や体術の修行。

元の世界で帰宅部のヒョロガリだった俺には本当にキツかった。

こっちの師匠もやはりと言うべきか、体育会系だった。

最初に基礎体力を上るためランニングや筋トレがあったが、それだけでヘロヘロになった。

その後剣術の修行として木剣で叩かれ、

体術の修行として殴られ蹴られ投げ飛ばされて…。

体中がアザだらけになった。

しかもこちらの師匠は体育会系の上、気合い信者だった。

ヒョロヒョロの俺は気合が足りないっ!と更にシゴかれた。

気合で真空波とか出るかっ!


午後の修行も終わり、

ボロボロの体を引きずって、

吐きながら夕食を胃に流し込み終わると、


『実戦に勝る修行ナシ』


朝まで近場のダンジョンに放り込まれた…。



お陰で俺は強くなった。

1年もすると恐らく、王国内でも5本の指には入る戦士になれたと思う。

いくつかのダンジョン[魔界の穴]も攻略した。

ダンジョンを攻略することは、[魔界の穴]を塞ぐこと。

塞がれた穴からはモンスターが出てくる事がなくなり、

それが王国の平和へと繋がる。

更に[火・水・土・木]の4精霊だけでなく、[光・闇]の2大精霊の力も手に入れた俺は、

いつしか[勇者]と呼ばれるようになっていた…。



つづく

『転封貴族と9人の嫁〜辺境に封じられた伯爵子息は、辺境から王都を狙う〜』という作品も投稿しておりますので、そちらもお読みいただけると幸いです。

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