第6話 新入生オリエンテーション②
2日目も何事もなく終えて3日目を迎えた。
3日目は朝から班別行動が行われる。山の中を歩いてバスの所の待機場所まで向かう。
霧崎はこの班別行動が狙い目だと確信していた。
宿泊荷物を預けた生徒達がどんどん出発していく。クラスごとにルートが異なっていてSクラスは山道ではなく森の中の道を進むルートだ。
先生達は個人で各クラスのルートを巡回して迷子にならないように見まわるのが役目だ。
出発から約3時間後、南、真柴、飯島、岡本の4人はSクラスの先頭の班で目的地までようやく折り返し地点へと到達しようとしていた。
4人は楽しく会話しながら歩いていた。
突然、前にいた飯島と岡本が倒れる。飯島と岡本は足を魔法で切られたのだ。
「ヴァァァー」
2人は痛みに耐え切れず泣き叫ぶ。後ろの女子2人は何が起きたのか状況が理解できていない。そして森の中から男が4人出てくる。
そして南と真柴は初めて自分達が襲われたんだと理解した。
「あ、貴方達は何なの。こんな事して許されると思ってるの!」
「おい聞いたか。俺たちは許されないだとよ。」
「まだ世間を知らないお坊ちゃん達じゃないか。」
「無駄口叩いてないでさっさと始末するぞ。」
リーダー的な男が他の3人を急かす。リーダーの取り巻きの男は魔法の術式を展開する。南と真柴も慌てて魔法の術式を展開するが圧倒的にスピードが違う。2人がまだ三分の一も術式を構築できていないが男は魔法の構築を終える。
「
2人は為す術なく太ももに風の刃を受けて悲鳴と共に倒れる。
「発動までが遅過ぎなんだよ。お前ら本当にそれでも関東第一のエリート様か?」
「どうせ温室育ちのお嬢様達だ。その程度だろう。」
「お前らさっさと岡本家と真柴家の奴を連れて行くぞ。」
男達は2枚の写真を取り出して見比べる。
「手前で倒れている男と1番奥のロングの女だ。お前ら連れて行け。」
男達は岡本と真柴を担いで連れて行こうとする。
「貴方達、2人を返しなさい!」
「ごちゃごちゃうるせーぞ!」
男の1人が南の顔面を蹴飛ばす。そして両手に魔力を集めて魔法を発動する。
「
南と飯島は腹に強烈な衝撃をくらう。そのまま2人の意識はブラックアウトした。
、
その頃、霧崎は先頭の班と最後の班のちょうど中間をキープする様に森の中を進んでいた。すると先頭集団にいる、霧崎が事前に魔力を仕込んでおいた対象の1人が明らかに歩くより速いペースで正規ルートから外れて森の中に入っていく。何かあったに違いないと考えた霧崎は自身に〝脚力強化〟と〝軽重〟をかけて最短ルートで対象が正規ルートから外れた地点へと急ぐ。
20分もかからずに目標地点へ到着した。そこには重傷の南と飯島がいた。霧崎は2人に声をかけるが意識がない。霧崎はすぐに軍用信号弾を撃ち上げる。すると10分ちょいで黒に金の刺繍が施された軍服姿の男が2人やってくる。
「本部執行官2名、到着しました。」
「ご苦労。この2人を頼む。後から来る執行官は俺の所に寄越してくれ。後、英二にこっちに来るよう無線で頼む。」
「了解しました。」
俺は2人のうち1人に円盤型のレーダーを渡す。これは持ち主の魔力を登録すると場所を教えてくれるレーダーだ。
そして霧崎は急いで対象のいる場所へ向かった。
真柴は気がつくと知らない暗い小屋にいた。
そして襲われて連れ去られた事を思い出す。
横には岡本が転がっている。
「岡本君、岡本君!」
「あぁ、真柴か。俺は…」
岡本も自分が連れ去られた事を思い出す。
そこにリーダー格であった男ともう1人の取り巻きが小屋に入ってくる。
「おい、俺たちをここから出せ!こんな事が知れたら学校も岡本家も黙ってないぞ!」
「ハハハァッ。お前はその岡本家に対する人質なんだよ。お前らの先公も1番遠い場所に魔導師クラスがいるだけで後は雑魚ばっかなんだよ。助けなんて期待しない方がいいぞ。人質として生かす為に治療までしてやったんだから大人しくしてろ。」
「でもボス、予定までまだ時間あるじゃないですか?ならこの女とヤってもいいっすか?」
「確かに時間がまだあるな。よし、ヤっていいぞ。その代わり他の奴らにも回してやれよ」
「へい、了解しやした。」
取り巻きの男は下賤な顔をしながら真柴に近づく。真柴は恐怖で全く動けない。絶望に染まった表情だ。
バリンッ!
そこに窓を割って1人の影が入ってくる。そしてカッコよく着地を決めて声を大きくして叫ぶ。
「俺の生徒達には指一本触れさせない!」
「霧崎先生!なんで来たんですか!速く逃げてください。こいつらタダ者じゃないですよ。俺たち全員瞬殺されました。」
「そうですよ、先生!私たちの事はほっておいて速く逃げてください。私なら我慢できますから!」
2人が先生の身を案じて叫ぶ。だが、霧崎は2人の前から一歩も動かない。
「てめぇ、どうやってここが分かった。」
「どうだったいい。どうせ死ぬだけだ。」
リーダー格の男はすぐさま魔法を放つ。
「
霧崎は風の刃に腹から胸にかけて大きく切り裂かれて血を噴き出しながら前に倒れ込む。
「先生、しっかりして下さい!」
「先生、なんで会って1週間も経たない私達の為に…」
「おいおい、弱すぎだろ。4等魔法師の分際で出しゃばるからこうなるんだ。大人しくしてれば長生きできたのに残念な奴だ」
真柴は大粒の涙を流していた。誘拐犯の罵倒に岡本も悔しそうな顔を浮かべる。そんな2人に霧崎は何とか顔を向けて口を開く。
「たった1週間でもお前達は俺にとって最初で最後、最高の生徒だった」
「せんせー!」
霧崎はそのまま幸せそうな表情で眼を閉じる。岡本もあまり快く思っていなかった霧崎が自分達の為に死んだ事に涙が溢れて出た。
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