第2話「行軍 」

『××月 ××日 ××時 ××分

 録音件数が一件です。


 ――――プー


 ああ……あっちゃん、元気?

 またつながらないんだから、たまには声が聞きたいなぁ……。

 今度は……お願いね……?


 今休憩中なんだけど……疲れた……。

 兵隊って大変なんだね……ううん、まだ敵とは戦ってないよ……。

 歩くのすっごく大変なんだ……。


 この鉄砲……なに式小銃? いっつも忘れるや……それが五キロぐらい……。

 それに、このずっしり肩に重いリュックの中に三十キロの荷物……。

 水筒やらヘルメットやらを入れたら全部で何キロになるのか……。


 それで昨日、今日と……一日三十キロくらい歩いたかな……。

 三十キロ歩く、八時間歩きづめならいけないでもないけど、この荷物がすごい重い……。

 十二時間くらいかかってやっと目的地に着いたんだ……。


 それで、夕食の支度もしなきゃいけない、寝る用意もしなきゃいけない……。

 もう真っ暗だし明かりもほとんどないし、お湯沸かしてレトルトのごはんあっためるくらいかなぁ……。


 もうまともにごはん食べてないや……レーションっていうの? これ、美味しいは美味しいんだけど、種類が少なくて飽きるんだ……。

 三食同じメニューだった時は最低だったなぁ……。


 今日も寝袋にくるまって眠るんだ……もう夢もみないくらいにぐっすりだよ……。

 ああ、足が痛い……靴が合ってないのかなぁ、靴擦ればっかりだ……。

 やっぱり、いわれたとおりに一つ大きなサイズにしておけばよかったのかなぁ……。


 あ……先輩が呼んでる。切るよ……行かなきゃまた殴られる……。


 ――ピ――

 ――録音された内容の再生が終わりました。残り録音件数、0件です』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る