第3話
魔王城謁見の間。ディオスは今、魔王へ勇者パーティとの戦闘結果を報告している。
「───という訳で、西の勇者パーティはあと3ヶ月は再起不能でしょう。人質になった子ども達も無事助けられました」
「ご苦労、よくやったディオス。だが、一人で動いたのはあまりに軽率だ。結果、子ども達は無事だったとはいえ、お前は罠にかかって危うく死ぬところではなかったか。もう少し、冷静になれ」
「はっ。申し訳ありませんでした」
ディオスは己の未熟さをしっかりと自覚していた。自分のせいで、仲間や子ども達を危険にしたのだから。
「ところで話題は変わるが、またメイドを殺したらしいじゃないか。最近、話題になってるぞ」
「そのことなのですが・・・」
ディオスは話を続ける。
「実は、最近メイドの中に暗殺者が潜んでいるのです」
「何!それは本当か?いや、どうしてお前にそんなことが分かる」
「魔王様。私の特殊能力覚えてますよね」
魔王はディオスの特殊能力が相手の感情を読み取る能力だと思い出した。この特殊能力はディオス本人と魔王しか知らない。
「しかし、その能力でスパイだと分かるものなのか?ちょうどここには私とお前しかいない。話してくれないか?」
ディオスは周りを見渡す。確かに周りには、いつもいるソフィアすらいない。
「私が今まで殺してきたメイドには、ある感情が潜んでいたのです」
「・・・どんな感情だ」
魔王はつばを飲み込む。
「執念です。私一人に対する、物凄い執念。それに初対面で。あれは、殺意以外に他なりません。ですので、私の判断で処分する事にしました。クレームを言って、能力がばれないようにしているので、そこはご安心を」
「そうか。ならいい」
魔王はその言葉を聞いて安心した。
(あーよかったー。娘が嫌われていた訳じゃなかったんか。)
一年程前だろうか、娘のソフィアが魔王にこう言ったのは。「ディオス様と結婚したい」と。普通なら反対するのだろうが、私は大いに賛成した。
ディオスは周りの評価がよく、仲間思いの素晴らしい人柄を持つ。娘が誘拐されたとき、助けたのもディオスだった。
魔王はすぐさま、ディオスを呼ぶよう伝えたが、ソフィアに止められた。「身分による強引な結婚なんて意味がない」と。「自分で、ディオスを好きにさせる」とも。
それから一年、ソフィアは変装メイドとしてディオスに近づいているが、なぜか毎度殺されるらしい。ソフィアと気付いて殺しているかと思ったが、『恋心』を『殺意』と捉えていたとは。
「私が聞きたかったのはここまでだ。もうかえってよい」
「では、失礼いたします」
ディオスが去った後、魔王はこう思った。
「前途多難だな」と。
魔王の元から去った後、ディオスはこう言った。
「またソフィアに会えなかったな」と。
その後もすれ違いは続くが、いろいろ会って無事二人はゴールインできました。
短気な魔人と不死身のメイド 佐々木 内人 @tahitota4
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