第33話

 俺は、一人では歩けないほど衰弱していた。

 兵舎地下2階に幽閉されて5日。パルマ達は、もう王都にはいないだろう。

 サリーなら探し出してくれると、あてにしていたが、駄目だったようだ。

 せめて奴隷達の面倒を見てもらえたらと、願っていて。

 助けはもう来ないと諦めていた。

 日に1度、生きているのか確認する為?兵士に叩かれる。反応するといなくなる。

 水分が欲しい。

 最後に、サイ君の笑顔に癒やされたいな。

 アリス婆さんにも、ボンドさんにも逢いたい。

 意識が薄れまた、眠りについた。



 S級パーティーは、許可を得てすぐに捜索したが見つからず。

 王城しかないと、掛け合ったが許可は得られず。

 討伐依頼の遠征当日。パレードのように国民に見送られ出発した。

 パルマ・ザイス・タリスの3人で、兵舎の地下1階を調べている時。地下2階へ行く入口は、隠してあり。タリスが上手く誘導した為。見つけられなかったのだ。

 その為、ソウダイを見つけられず。タリスの監視があり、討伐遠征を途中で抜け出す事も出来ずにいた。出来るだけ早く処理して帰るのが最善と20日の予定を、3日で10日分も処理していた。

 奴隷達は、サリーの元に預けられ。心配する事しかできずにいた。

 サリーは、ニーナに頼み。捜索して貰っていたが、成果はなく。サリー自身も第2王子やモーヒガの動向を調べていたが、中々尻尾を掴めずにいた。

 そんな中、ハートが村から戻って来た。


 スキルの取得の条件は、様々で。人それぞれ違うこともあり。

 色んな人達が、研究したが殆どわかっていない。

 未だに未発見なスキルが、突然発生する事はよくあるし。

 取得しても、使うことが出来ないなんて事例もある。

 ただ、極度に追い詰められている時に、発生するケースは多いとされている。


 幽閉されて6日目。奴隷の二人に、新たなスキルが、発生する。

 1人は、『念話』もう一人は、『絆』

 スキル念話は、おわかりの通り。言葉にせずに話が出来ること。

 スキル絆に関しては、未知数であるが。繋がりのある人物の、絆である程度の居場所がわかるのである。


 ソウダイは、6日目のお昼頃。誰かに呼ばれた気がして、目を開ける。代わり映えしない部屋で、気のせいだと思ったが!

 (ソウダイ様、聞こえますか?)

 と、頭の中に声が聞こえ。そろそろ頭もいかれたか?

 と思うが、違うようで。

 (誰だ?)と、頭に浮かべた。

 すると、何だか分からないが相手に伝わっていると思った。

 (何処にいますか?)

 (地下2階。兵舎だ。)

 と思い浮かべると暫く返事がなく。気のせいか?と思うが。

 よく考えられない頭で何故か、もう最後のチャンスと意識が薄れる中。

 何度も、呼んだ言葉を呼ぶ。

 「ニーナ」

 すると入口の扉が開いた。

 重たい瞼を上げると、ニーナとミーパがいた。

 「ありがとう」

 助かったと思うと同時に、意識を手放した。


  ミーパ視点

 ソウダイが、行方不明になって6日目。

 朝日も登らぬ時間。

 私は、眠れずにいた。

 役立たずの私を、救ってくれた主様。

 食事や服、武器や防具を、与えてくださる主様。

 褒めてくれ、頭を撫でてくれる主様。

 私達も連れてがれそうになるのを、守ってくれた主様。

 そんな主様が、行方不明。

 皆が、協力し手を尽くしても見つからない。

 内緒で、透明化して王城の中も探したけど見つからない。

 もう、王都中探し回ったが見つからない。

 ニーナ様の索敵でもわからないなんて、どうしたらいいのか分からない。

 そんな時、突然頭に主との繋がりを感じた。

 え?主は生きてる!そう感じる事が出来た。

 すぐに皆を、起こしに行く。

 皆は、どこにいる?元気なのか?と聞いてくるがわからない。騒がしくなり。

 サリー様が、起きてきた。

 先程感じた事を話す。

 すると、ステータスを確認するように言われ。

 『絆』と、表示されていた。

 サリー様も知らないスキルで、どうやって使うかわからずにいると。

 サリー様が皆に、ステータスを確認するように言われた。

 ハートさんが、スキル念話を取得したようだ。

 サリー様が、なれるまで距離が短い。

 その為に、頭の中で繋がりを感じるようにと、クーエさんと練習するように指示した。

 サリー様も焦っているようだった。

 もし食事を、してなければ。そろそろ限界かもしれない。

 と、昨日言っていたからかもしれない。

 私は、主様の事を思い浮かべると、絆のスキル使用と念じたが何も起こらず。

 色々試していた。

 食事も取らず、早朝からバタバタしていた為。

 キルカさんが、食事の用意をしてくれた。

 正直、主の事を考えると食べる気が起きない。が

 「これから、助けに行くのに。食事もせず、力が出なくて助けられるのですか?」

 と言われ皆食べだした。

 そんな時、何故かまた、主の絆を感じた。

 感じた方向を指差し、

 「主様は、あっちにいましゅ」

 と、叫び。食事の途中ですが、走り出す。

 すると皆が続いて、ついてくる。

 段々絆が、強まる。

 糸のような物が、段々太くなる感じだ。

 「ハート様は、念話で呼びかけ続けて下さい。主様の事を考えて強く!お願いします」

 頷くと、念じながらついてくる。

 すると、突然

 「そこの者達!止まれ!ここから先は、許可なく入る事は出来ない」

 と、門番に言われ皆立ち止まる中。

 サリー様が、前に出て何やら門番の人と話しをしている。

 暫くして戻ってくると

 「ハート様。念話が通じた感じはありますか?返事は来ましたか?」

 「まだ来ません。続けます」

 私は、強い絆を感じて

 「信じて下さい!ここに必ず主様はいましゅ」

 皆が私を見る。

 「スマナイ。私は信じて突っ込む!」

 静止も聞かずに、シーリャルさんは突っ込んでしまった。

 クーエさんも我慢できずに、シーリャルさんの後に続く。

 私はそれを見て、透明化を使い。兵舎の中へ向かおうとすると

 「主様は、生きている!地下2階だ!急げー!」

 と言うと。

 サリー様が魔石を投げ、風を起こし!突っ込む!

 「ニーナ!ミーパ様の援護を!」

 私は、気にせず中に入り地下1階へ。

 2階への階段を探すが見つからない!

 焦っていると、

 「ミーパ様こちらなり」

 声がする方へ急ぐ。

 床板が外れていて階段が出現した。

 声が聞こえ兵達が地下1階にも来るが、ニーナ様が対応してくれている。

 下に降りるといくつもの扉が見える。

 「主様。主様」

 と叫びながら扉を叩いていくが、どこの部屋かわからず。

 鍵もかかっている。

 どうしたら良いのかオロオロしていると、ニーナもたどり着く!そのタイミングで、

 「ニーナ」

 と聞こえた!

 ニーナは素早く、鍵目掛けて回し蹴りして破壊すると中に。

 痩せて、顔色が悪い主がそこにいた。

 「ありがとう」

 その言葉を聞き、思わず抱きついた。

 ニーナは、縄を切ってくれた。

 あーよかった。と泣いてしまった。

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