第19話
エイカちゃんの家に、サイ君がいると言うので。
そちらに向かうと、サイ君が突っ込んで来て後ろに転げた。
お腹の上で泣く、サイ君の頭を撫でながら。
「ただいま」
「おかえりなさい」
と泣きながら返事をしてくれたが、ボンドが声をかけるまで、離れてくれなかった。
エイカちゃんと家族に頭を下げ、家に帰る。
もう夜遅くになっていたが、村の人達にも謝罪したいと思い。
一軒一軒謝罪した。
1番アリスが
「良かった、無事に帰ってくれて良かった」
と泣きながら喜んでくれて自分も、泣いてしまった。
「ありがとうございます」
短い付き合いなのに、嬉しくて。
でも、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
暫らくは村で過ごしていた。手紙の配達は、今回の件でやる気が起きず。
また、頼まれる事も無かったのだが。
皆の為に出来る事を考えると。手紙の配達位しか思いつかなくて、再開することにした。
タンタ町では、あの後すぐにサリーは王都に行ったそうだ。
「いずれ王都に来るでしょうから、その時までお元気で」
とおばさまに伝言を残していた。
ターニャ家族は、治療師のお陰で次の日には引っ越しを始め、サリーが残してくれた商品もあるので、『なんでも屋』としてオープンさせていた。
サリーがいなければ、俺は一人で突っ込む形になり。すでに、死んでいた事は想像に容易い。
あの後。ジャストミートパーティーは、カンタと商人部下達を1つの馬車に。不正に奴隷になったとされる人達を3台の馬車に分けて、王都に向かった。
カンタと商人は死刑が決まり。部下達は奴隷になり。不正に奴隷となった人達は、希望を聞きながら開放された。
お金を希望した人には、1人白金貨1枚を渡した。身内のいない子供達は、孤児院に行く事になった。
それから、3年の月日が経ったある日。
サイ君と、1週間に1度のきのこ拾いに来ていた。
「ソウさん。もう籠がいっぱいだし帰りましょう」
「そうだね。まだ明るいうちに、かえろっか」
ココ最近はソウさんと呼ばれていた。
子供が大きくなるのはホントに早い。あっという間だ。
自分も見た目15から17位には見えるようになり。
服装もこのあたりの人が来ている服なので見た目で、異世界人と思われる事は無くなった。
今の幸せな生活を手放したく無い反面。この世界を見て回りたいとも、思っていた。
村に戻るとエイカちゃんが待っていた。
最近サイ君とエイカちゃんは仲が良く。俺がからかう事も増えていた。
エイカちゃんは、翼を隠していたが、サイ君のおかげ?で隠す事は無くなり元気に村の中を走り回れる程になっていた。いつも通り2人で
「ただいま」
「おかえりなさい」
と会話を交わす。ここからいつもと違う事が起こる。
「サイ君聞いて!今S級パーティーが来ているの!カッコよかったよ」
と聞いてビックリする。ソウダイは、
「何をしに来たのかわかりますか?」
「わからないけど、ボンドさんの家に向かったみたい」
「ソウさん!早く帰ろう」
と手を引っ張るサイ君に連れられ3人で、家に帰る。
「ただいま」
と2人で言いながら扉を開くと、そこにはボンドと
腰に剣を下げた高そうな装備の男性。
大きな盾を持った男性。
白いローブで身を包んだ女性。
杖と黒のローブの背の低い女性。
長く細い尻尾の女性。
が、こちらを向いていた。
「おかえり。こちらS級パーティーの人達で、ソウダイに用事があるそうだ」
「始めまして、リーダーをしているマサヤだ。竜殺しの剣の方がわかるかな?」
と握手を求められ
「始めましてソウダイです」
と握手する。
「まず紹介させて貰うと、熊の獣種族ザイス。聖女のユカリ。背の低いのがパルマ。最後に王国の奴隷で、監視役の鼠の獣種族タリス」
「背が低いは余計です」
と自己紹介される。
サイ君は目を輝かせエイカちゃんとはしゃいでいる。
が、自分に用事があると来ているS級パーティーに何の目的でと警戒をする。
「以前カンタの町での功績で呼ぶ予定でしたが、サリーさんからまだこの世界に慣れていない為。すぐに呼ばない方がいいとの意見から今頃呼ぶ事になったようです」
「サリーが?そうですか、因みに断る事はできますか?」
「出来れば一緒に来てほしいのですが、無理強いは出来ません。ただ、明日の朝もう1度こちらに来ますのでその時にお返事頂けますでしょうか?」
「わかりました」
と伝えると素直にS級パーティーは帰っていった。
その日の夜に、夕食を3人でしていると、サイ君が
「ソウさん。王国に行っちゃうの?」
「どうしようか迷ってるんだけどサイ君はどう思う?」
「いつかソウさんは、旅に出るって前から聞いてるしS級パーティーと一緒なら心配無いから、、、、、でも、一緒に居たいです」
と下を向いてしまった。
確かに、前から旅立つ事は伝えているが、ここまで急だと迷ってしまう。
「サイの気持ちはわかるが、行って来い。この村は私がいるから心配ない。いい機会だと私は思う」
と俺を、真剣な目でボンドは見ていた。異世界物だと大抵これで王国に行くと戻る事が殆ど無い為本当に悩む。
「ちょっと外の風に当たってきます」
どう答えたら良いのかわからなくて、表に出て何気なく最初に異世界に来た、あの山頂に向かう。
走ってばかりいたので、レベルが上がり。移動速度がある意味異常なスピードになっていたので、すぐにたどり付いた。
山頂で、寝そべり夜空を見上げる。
「綺麗だなー」
と思わず呟いていた。
ふと気配?を感じ起き上がると、主様がいた。
恐怖は感じずただ見つめ合う。
すると近づいて来て座った。
改めて見るとでかいなーと思いながら見ているが何もして来ないのでまた夜空を見上げる。
「俺、どうしたらいいだろう?」
とつぶやくが返事はない。
「ここの生活は、生前とは比べ物にならないくらい幸せだ!けど、色んな国、色んな人、色んな食べ物、、、行って見たい」
暫らく空を見上げ、行きたい気持ちが強くなるのがわかった。
立ち上がると
主様が
「ヌオー」
と叫んだ!何だが応援してくれてるみたいで嬉しくなり
「ウオー」
と一緒に叫んだ、そういえば初日も「バカネコー」と、叫んだなと思い笑った。
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