第16話

 巨体の男は、突進しながら剣を抜き、斬りかかる。

 ソウダイは、それを見て抜いたままの剣を構え迎え撃とうとするが、剣がぶつかった瞬間!

 物凄い衝撃で、「あ」と思った時には窓ガラスをぶち破り庭に吹っ飛ぶ。

 余りにも凄い衝撃で意識を失ってしまう。

 それを見て男は2階のカンタ様の元に向かった。


 

 私の名前は、ゴーマ。

 カンタ様に贔屓にして貰っている商人だ。

 ワガママ貴族のカンタ様に振り回される日々ではあるが、金払いが良いのでゴマをする。

 随分甘い汁を吸ってきた。

 その中でも、奴隷商売は凄い!

 カンタ様が気に入らない人物は殆ど、罪なき罪で奴隷に落とす。ただ当然でカンタ様から譲り受け、別の町で売り捌く。

 金銭的に苦しむ家に出向き。

 金を貸し、返せる筈も無いのでそいつの妻や娘を端金で買い取る。

 カンタ様に着飾らせた女性を、送れば大金と信用が得られ。

 娘達は、別の貴族に売れる。

 カンタ様の地下にある牢屋はほぼ奴隷ばかりで私の商品置き場に、今はなっている。

 カンタ様のおかげで多くの商人は、奴隷に落ちるか、いなくなった。

 手紙の配送。商品の運搬。仕入れ等。

 全て私が金額を決め毎日笑いが止まらない逆らう者が入ればカンタ様に頼めばいいだけ。

 そんな俺にまた、噛み付くやつらがタンタ町に現れたので、いつもの様にカンタ様にお願いした。

 次の日にはカンタ様の部下と私の部下が、向かったがその日の夜に、失敗の報告が入る。

 機嫌を取る為。私の部下が、襲撃した所にいた娘を連れて来たが!カンタ様は、自分の顔に泥を塗りおってと激怒した。

 私が何とか、足し舐め。娘は、後で売る事に。

 いつもの様、牢屋に入れておく。

 ああなると、中々機嫌が直らないので、お気に入りの女性を何名か部屋に送り放って置く。

 明日は、カンタ様みずから向かい、タンタの町を手に入れる積もりらしい。

 また儲かりそうだと眠っていたのだが、騒ぎ声に目が覚めた。

 窓から覗くと、煙が上がっている所や戦闘している所がある。

 1番安全な場所はカンタ様の近くだ!何故なら強い護衛がそこに集まるからだ。

 急いで、カンタ様の部屋へ行く。



魔石を、投げても当たらなければ意味をなさない。

 巨体が突っ込んできて、躱そうとするが直撃する。

 窓ガラスを割り吹っ飛ぶ。

 強烈な衝撃で意識を失い倒れたまま動かない。

 そんな時、正面入口の方から揉めている声が聞こえて来る。

 耳を済まそうとすると今度は、裏口から突撃の声が!

 カンタ様の身の安全が優先と2階に向かう。


 正面入口では、ジャストミートパーティーがカンタ様との謁見を求めていたが、深夜と言う事もあり取り付いて貰えず、揉めていた。

 そんな時、ガラスの割れる音で安全を確認する為と、無理やり中に入ると、ガラの悪い連中に囲まれた。

 「我らは、王都から調査依頼で来ている!道を開け、カンタ様に取り付いて貰えないか?」

 と、口にするが相手は剣を構え引く気が無いようだ。

 そこに、ニーナ(猫娘)が現れ

 「サリー殿より言付けで御座る。牢屋にて不正に手に入れた奴隷が何十人もいるので、宜しく。と、それと、裏口からボンドさん率いるタンタ町の人達が中に入り戦闘が行われている模様で、私はそちらの応援に向かいます。では」

 と言い残し、姿を消す。

 「不正が明らかになった為!王名によりタンタ様わ確保する。それを邪魔する者達は、排除する!」

 と叫び、右手を上に上げるとその上に、どでかい火の玉が浮かび上がる!

 皆が上に視線を上げた時、剣士のタロウが、狐の獣種族と2人で、地下牢を目指す。

 その時、2回の窓から

 「者共!騙されるな!王からそのような権限を与えられる事などない!侵入者達を殺せー」

 との言葉の後

 『ウォー』

 とそこら中から声が上がり、戦闘が、始まる!


 裏口では、ボンドさん、恰幅のいいおばさま、ネコミミの女性や、元カンタ町の住人でタンタの町に住む者達が、侵入していた。

 だが、殆ど戦闘等こなした事のない者ばかり、クワやオノ、中には箒を持っている者。

 とても戦闘なんて出来そうもない。

 足音や話し声ですぐに見つかり、囲まれる。

 「おい、オメーラ!そんなにこの剣で、殺されたいのか?」

 と、2本の剣を持った男が前に出る。

 やはり殺される!と皆萎縮し、中には逃げようと話し出す者までいる。

 そこにボンドが前に出て、

 「随分小さい男が、剣を持っただけで、強くなったつもりか?悪い事は言わない。お家に帰って良い子にしてなさい」

 と安い挑発をする。

 昔から背丈の事で、馬鹿にされていたので、我慢できず斬りかかるが、次の瞬間にはボンドによって倒される。

 これには、相手もビビるが、

 「強いのはそんなにイネー!やっちまえ」

 と襲いかかる!

 ボンドに続き、ウサミミと元カンタ住人で戦闘経験ある数名が、前に出て皆を守るように構える。

 これは、ボンドが突入する前に、事前に用意した作であった。

 守られる人達は、腰に下げていた袋からただの石を取り出し遠くの敵目掛け、山なりに投げ出した。

 ただ残念な事に、ボンドの予想より相手が多いのと、外から次から次へ、相手の増援が来る為。

 段々に倒れるものが出始めた。

このままだと、死人がいつ出てもおかしくない状況に、まずいと感じていた。

 そんな時突然、裏口側から爆発音が響き振り返ると、入り口が塞がっていた!

 次の瞬間には、裏口付近にいた敵が、倒れ始めた!

 これはニーナさんか?と考え

 「敵の援軍はもう来ない!戦えない者は後ろに下り、石を投げろ!」

 と伝えていると横にニーナが現れる。

 「後は頼んでいいか?」

 「任されたで御座る。ご武運を」

 ボンドは頷くと、カンタが居るであろう2階に向かう。


 剣のタロウと狐の獣種族は、無事サリーさんと合流した。

 サリーはソウダイの事を聞くと見ていないと言われ、探しに行くと言って駆け出した。

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