第75話 番外編その7・封鎖海域異常ナシ
1903年 10月末
済州島沖800m -第一艦隊 分隊 第四機動艦隊(高速駆逐艦3隻から成る海域警備分隊)-
「電探員より定時報告、周辺海域異常有りません・・・艦長、本当に来るのですか?
かの有名なバルチック艦隊とか言う世代遅れの最強艦隊とやらは。」
「うつけ者が、油断するなちぅが判らんか、そんな事言うとっと本気で奇襲砲撃食ろうてしまうぜよ。」
「はい、失礼しました、ですがもうかれこれこの海域の警備だけで退屈で有ります。」
「そうボヤくな、又来週には第二艦隊との合同演習で忙しゅうなるけぇ、気持ちは判らんでも無いが。」
「あ~あ、台湾に置いて来た女に会いてぇな~。」
「何だ貴様、台湾人の恋人でん居るとか?」
「いえ、恋人って事は無いんすけどね、いい女なんですよ、これがぁ、こう、乳房なんざぁぷっくりと張りが有って形が良くてですね・・・」
「あぁん?何じゃ、売春婦っちゃけぇ、貴様もええ加減身を固めんと成らん程の齢じゃっと?
真面な許嫁でも作らんば国の両親に顔向け出来んとちごうか?」
「ですが、今は商売女ですけど、俺あの子を身請けしたいと思っとるんですよ、それにこの船にずっと乗ってりゃ許嫁も何もあったもんじゃねぇですから。」
「フン、それもそうじゃの、来るならとっとと来て欲しかとね、バルチック艦隊。
とっとと決着付けて、国に錦を飾りたいもんじゃのぅ。」
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-その頃、インド洋沖1200m付近-
バルチック艦隊は、フランス艦隊と合流すべく待機していた。
「提督、パリコミューンの連中の船と合流するとの事ですが、奴ら程度で本当に役に立つんですか?」
「さぁな、奴らがどこまで使えるかでは無いよ、どうやって奴らを盾にし戦況を此方のペースに持ち込むかの方が重要だ。
所詮は我々の足元にも及ばんのは事実だ。」
「成程、うまく盾になってくれれば優位性が増しますからね、流石です。」
そこに伝令が入って来る。
「失礼します!艦長に報告致します!
右舷後方よりフランス艦隊、総数凡そ28、恐らく全艦隊を上げての集結と思われます!」
「おお、ようやく来たか、随分と足の遅い事だな、夜が明けるかと思ったぞ。」
「如何致しますか?」
「うむ、信号打て! 『当艦隊の右舷に旗艦を接舷せよ、作戦のすり合わせを行いたし。』以上だ。」
「復唱します!『当艦隊の右舷に旗艦を接舷せよ、作戦のすり合わせを行いたし。』 以上であります。」
「うむ、宜しい、では早速信号打て。」
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小一時間が経過した。
両艦隊提督レベルでの作戦のすり合わせが終了し、各員へ通達が行われ、合同艦隊はかくして朝鮮半島沖の日本艦隊へ向けて動き出したのである。
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1904年 11月初旬
-大日本帝国ブルネイ駐屯基地-
「失礼致します、電探部より通達、現在当基地まで10海里付近に敵と思われる大艦隊が進行して居るとの事であります。」
「む、とうとうやって来たか、では通信部へ、この事を大本営へ向けて電信せよ。」
「当基地は如何すればいいでしょうか?」
「現在の当基地には、艦隊に相対出来る程の兵力は無い、未だ新しい基地であるので所在を知って居る国も多くは無いので、焦らず静観せよ。
所在を悟られぬよう、通り過ぎるまでは明かりを一切外へ漏らしては成らん。」
「は、了解しました、基地全体に通達いたします。」
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-大本営-
「入電、『ブルネイ基地より大本営、現在敵艦隊と思われる大艦隊が10海里ほどの近海を航行中、当基地は基本資源採掘基地であるが故兵力不足の為静観する旨を了承されたし。』との事です。」
「うむ、遂に来たか、済州島及び台湾に展開警備中の第二艦隊に電信、『敵艦隊はブルネイを通過中、警戒を怠らぬよう留意せよ。』
それと、ブルネイにも電信、『万が一敵に発見された場合、基地を放棄して良い、島内の英国基地へ避難せよ、脱出前に一報を入れよ、現在第一潜水艦隊を付近に展開中である。』以上だ。」
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-第二艦隊-
「大本営より入電!『現在ロシア第三艦隊及びフランス艦隊は帝国ブルネイ基地付近を低速航行中!
未だ数日は掛かるものと思われるが留意せよ。』との事であります。」
「ようやっと来たか、恐らく奇襲を狙って居るのだろう、電探要員、気を張って確認を怠るな。」
「電探了解!」
全く隙の無い情報伝達であった。
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-第一潜水艦隊-
「艦長、音探より報告、大規模艦隊の排水音だそうです、艦数凡そ80、かなりの大規模であります。」
「うむ、只事では無さそうであるな、燃料はどの程度残って居るか?」
「は、残存燃料凡そ4割、引き返すのであれば台湾迄ならば十分に戻れます。」
「ふむ、では方向転換するとしよう、この海域には我が軍の艦隊は存在せぬ、敵艦隊と見做す、敵艦隊排水音が通り過ぎるのを待ち、浮上して追尾、万一発見された場合は雷撃戦が予想される、雷管全門装填準備。」
「了解、浮上準備、400㎜、533㎜魚雷全門準備。
各艦にも音信せよ。」
こうして、敵艦隊の動きは逐一大本営に報告される事と成るのであった。
-数日後-
大本営に第一潜水艦隊から、台湾北沖を敵合同艦隊が東進中との報告が入る。直後、第二艦隊巡視艦の電探に、敵艦隊の艦影が捉えられる事と成るのであった。
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接敵
-第二艦隊-
『敵艦隊、包囲網に掛かりました、済州島迂回中、後方封鎖巡洋艦隊、後方封鎖願う。』
回り込む様に後方を封鎖せんと行動して居た巡洋艦隊に電信が飛ぶ。
『後方封鎖班了解、これより行動を開始する。』
「さぁ、状況開始であるな、やっと我々の強さを世界に開示する時が来た、大方の予想通り例のバルチック艦隊とやらと合同でフランス艦隊も混成して居るようだ、大物であるぞ、心して掛かれ。」
第二艦隊司令東郷平八郎は意気込んでいた。
第二艦隊主力が旅順港から側面を封鎖、第二艦隊後方封鎖班が軽巡洋艦10隻で背後を固め、第一艦隊が半島から済州島迄を手広く封鎖、更には第二第三潜水艦隊が背後を固める後方封鎖班をサポートする、完全な包囲網であった。
そこへ面白い連絡が届く。
『こちらは訓練中の空母桜島、訓練中ながら参戦を希望するものである。』
第二艦隊司令の東郷平八郎は興味深げに承諾をする。
「噂に聞く航空機搭載艦であるか、面白い、後方封鎖班の後方より攻撃に参加して貰う事にしよう、但し、訓練部隊であるので無理だけはしないようにと電信しておけ。」
「は、了解しました、ところで艦長、何です? その、空母ってのは、艦長はご存知のようなのでご高説お願いしたいのですが。」
「うむ、そうであったな、回転翼機はお主等も見て知っておるだろう? あれ以上に速い速度で飛行する航空機なる物が実は完成して居るのだ、儂も未だその機体自体は見た事は無いのだが、そいつに60㎏も有ろうかと言う爆弾を抱えさせて飛ばし、空から攻撃しようと言う物だ、そいつを何機も搭載して海を進む船が航空母艦、略して空母だそうだ。」
「空から爆弾を降らせる訳ですか、それは又何ともとんでもないですね、もし敵ならば我々の船でも防ぎきれませんね。」
「未だ世界でも我々大日本帝国しか持ち合わせていない兵器であるからな、儂も是非一目見てみたいものだ。」
「訓練中と言う事でしたが、航空機と言う奴は私も興味が有ります、ですがこの艦橋から下を見るだけでもちょっと怖いと思うので空の上になど行けませんね、ははは。」
「うむ、乗ってみたいとも思うがな、儂も多分高い所は苦手だ。」
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-空母 桜島-
未だ空軍から出向扱いの麻門一郎空軍少佐が檄を入れて居た。
「諸君!貴様らは未だ訓練生である! が、しかし!
訓練だからと言って空を飛んで居るだけならばそこいらの蠅と大差はない!
これから実弾の60㎏爆弾を抱えて飛んで貰う事になる!
これは実戦では有るが、あくまでも訓練と言う事になって居る! 従って貴様らが実績を上げようと階級や給料が上がる訳では無い!
しかーし! 60㎏も有るものを二つづつ搭載した重い機体を操り、それを投下してバランスを崩さず飛べる操縦技術が重要である!
これくらいが出来ないで墜落するような者が居たら、敵に殺される前に我が行って射殺してくれる!
それが出来る程度の操縦技術は既に貴様らに叩き込んで来たつもりなのでそのような奴が出ないことを信じている!
貴様らが鳥になった事を証明する為の訓練である!心して掛かり、全員欠ける事無く帰還せよ!」
マモンの演説には何故サタンの傍らに何時も居るのが自分では無くベルゼブブなのだと言うちょっとした逆恨み的なセリフが混ざって居ないでもなかったが、上官としては中々の演説振りである。
格納庫に、海底で潜水艦が聞き耳を立てて居たらソナー員が鼓膜を破って卒倒するのでは無いかと思われる程の、船が揺れる程の返事が響き渡る。
マモンが海軍航空隊教官として出向してから数か月、すっかり精強な部隊に仕上がって居たのだ。
全員、瞳には眼前に存在しない筈の炎でも映り込むのでは無いかと言う程に気勢が充実して輝きを称えている。
本気で強い部隊と言うのは実際こういう目をした連中なのだそうだ。
「それでは間もなく当艦は第二艦隊別働部隊の背後に到着予定だ、航空攻撃は先の回転翼機による物以外初で有る為未だ対空装備は敵艦は持ち合わせてはいない以上、敵艦目掛けて爆弾を投下するだけの簡単な訓練だ、全員、乗機せよ!」
そしてマモンも、自分用にピーキーなチューニングを施した愛機に乗り込む、本当は自分の羽根で飛んだ方が速いし強いのだが、これはこれで彼は気に入って居て自分で整備までしている機体であった。
これに乗る度マモンは思うのだ、(益田は本当に愉快な奴だ、こんな面白い物をこの時代に、これだけの性能で作り上げるのだ、奴には楽しませて貰える、奴には返しても返し切れぬほどの娯楽を貰ったな。)と。
こうして、訓練課程空母桜島所属ミサゴ部隊、初陣は飛び上がるのであった。
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-連合艦隊-
「間もなく戦闘海域で有ります、前方水平線付近に敵艦隊と思わしき艦影確認、艦数凡そ25、我々のほぼ4分の一です。」
「ふん、たったそれだけか、第一第二合同艦隊が敗北を喫したと言うからどれ程の大艦隊かと思えば大した事は無いでは無いか、これでは弱い者苛めだな、はっはっは。」
この時バルチック艦隊司令官は、艦数の圧倒的差で負ける事は無いと高を括って居た、正直、舐めていた。
しかしこの直後、それが間違いである事に気が付く、そしてその時には既に遅かったのである。
「報告致します、艦長!敵艦発砲しました!」
「何?こんなに遠いのにか?奴らはアホなのか?」
しかし次の瞬間、最前列の巡洋艦から火柱が上がる。
「な!どう言う事だ!? まだ長距離砲の届く距離迄は程遠いぞ!?」
時代的背景を考慮すれば知らなくても仕方の無い事だが、彼らは当然知らなかったのだ、ライフル砲の飛距離を、薬莢の首を絞って細くしたナツメ型弾頭とコルダイトNと言う強化無煙火薬の驚異的な飛距離と命中精度を。
「くそう、全艦最大船速、此方の砲が届く距離まで一気に詰めて総攻撃を掛けるのだ!」
しかしその直後、背後からも砲撃が来ている事にようやく気が付いた。
「艦長!後続艦より手旗信号、背後より砲撃来る、包囲された模様。 であります。」
「何ぃ?背後からだと?いつ追尾されたと言うのだ!」
「そ、それが、島影から現れた異常な船速の10隻の艦隊が背後に廻り込んだそうです、その速度およそ40ノット。」
「何なのだ、そんな船速の船が存在すると言うのか?」
「さらには、海面を走る弾が船の底に当たると炸裂、穴をあけるそうです。」
「何なのだそれは、何なのだ~!」
その時である、上空よりなんとも恐怖心をあおる爆音が海面に反響する。
「こ、今度は何だ!?」
艦橋から非常階段側に飛び出した艦隊司令は、絶望感を味わう事になった。
空を鳥のように悠然と駆ける謎の飛行物体が爆弾を落として来たのである。
しかも艦橋側面の非常階段に出た指令の目の前の、いわば隣を進軍して居た重巡洋艦の艦橋付近にその爆弾が命中、一瞬にして大破したのだ。
(我々は一体何を相手に戦って居るのだ? 何なのだこの完膚なきまでの敗北感は・・・ 我々はこのまま全滅するしか道は残されて居ないのだろうか?)
絶望感に苛まれた彼の脳裏には、降伏して生き残ると言う選択肢は思い浮かばなかったのである。
「指令!側面からも艦影、砲撃来ます!」
しかし既に、彼の情報処理能力はキャパシティーを超えていた、火の海と化した眼前を呆然と見つめるだけであった。
しかしどこにでも、現状を受け入れる能力の高い者が必ず居るものである。
次次席にあたる仕官が反応の無い司令官に気が付き、非常階段に立ち尽くす指令を艦橋に引っ張り込む。
「司令官、失礼しますっ!」
思いっ切り司令官の顔面に拳をぶち込んだ。
それでもしかし、司令官は愕然と口を開け、涙を流す。
だめだな、悟った次次席である彼は、同じく呆然とする次席と、指揮官の両名を射殺し、指揮権を乗っ取ることを選択した。
「ご両名、御許しをっ!」
ハンドガンの乾いた音が艦橋内に響き渡った。
「司令官殿と次席司令官殿は殉職された!次次席司令官たる吾輩が指揮を継いだ! 今すぐ白旗を上げよ!
全艦に手旗で指示を出せ!急げ!全滅するぞ!」
しかし既にその時、連合艦隊はその六割を消失して居た。実に無傷で残った艦は僅か10艦に過ぎなかった。 旗艦も中破、補給艦は完全沈黙、とても戦える状態では無くなって居たのだ。
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-大日本帝国第二艦隊-
「艦隊別動隊より旗艦へ電信、『敵は網に掛かった、ご自由に砲撃開始されたし。』であります。」
「更に別働艦隊に電信、『包囲完了次第雷撃開始せよ。』」
「艦長、如何致しましょう、砲撃開始でよろしいですか?」
「では、射程に入り次第、当艦のみ、一斉射撃一連。 その後全艦に砲撃準備の令を入れろ。敵司令官の度肝を抜いた顔が目に浮かぶようで愉快だのう。」
「あまり余裕をみせすぎても距離を詰められるのでは無いでしょうか?」
「なぁに、敵後方に回り込んだ別働雷撃艦隊には包囲完了後雷撃開始を通達してある、挟まれたと思えば二の足を踏むものよ、その上、走行しておる内に航空攻撃が始まるだろう?
貴官も楽しみにし賜えよ。」
なんとも人の悪い東郷平八郎と言う男である。
そして、東郷の指示で第二艦隊旗艦武御雷が砲撃をする、直後、後方担当の別働艦隊が雷撃を開始し、背後に隠れて居た補給艦を一斉攻撃、魚雷を惜しげも無く撃ち込む。
その直後、上空に爆音が響いた。
「それ来たか!航空機とはどんなものだ?」
急ぎ艦橋の外へ飛び出す東郷。それに続く次席官や副官達。
「こらこら、押すな、落ちるわ、この高さから落ちたらタダでは済まんでは無いか!」
何とも表現に思い当たらない、敢えて強引に表現するならば龍の咆哮とでも言わんとするかのような爆音を響かせて空に現れた25機の航空機から小さな影が投下される。
あれが60㎏爆弾か。 と、東郷は理解した。
その小さな黒い影が敵艦隊の真っただ中に弾着すると面白い様に燃え上がる。
「凄いのう、戦争の歴史が塗り替わるぞ、とんでもない発明だ、益田修一と言う男、まさに神の化身なのやも知れぬ、格一殿は良き婿を頂いたものだな。」
東郷はそう呟くと、艦橋に戻り、全艦へ砲撃開始を命令するのであった。
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-第一艦隊-
「司令、敵艦が網に掛かったそうであります。
好きに砲撃願うとの事であります。」
「はっはっは、東郷君らしい電文だな・・・そうだな、真打は遅れて来るものだ、中速前進、戦況を見てから砲撃開始と洒落込もうでは無いか。」
「了解しました、艦長、そんな事言って本当は航空機を見たいから日和見しようと言う魂胆では?」
「はっはっは、バレたか! だがその位のタイミングの方が敵の絶望感を突けるのでは無いかな?」
「はい、良い塩梅と思います。」
「だろう?料理は塩加減なのだ、楽しもうでは無いか。」
此方、村上格一も東郷平八郎に負けず劣らずに人が悪いようである。
「さて、飛び入り参加の空母桜島、その戦闘力、精々高見の見物をさせて貰おう、この第一艦隊の次期旗艦となるらしいしな。」
やはりこの人、益田修一の妻の父である村上格一中将も、航空機の攻撃力には興味が有るようだ。
やがて、空を覆うような爆音が降り注ぐ。
「来たか、あれが航空機と言う奴か。」
双眼鏡を覗き込み、観察する。
「ふむ、航空機と言う新兵器も存外美しいな、成程、ああやって爆弾を抱いて飛ぶ訳か、お、落とした。」
爆弾を投下した機体が、重量バランスの変化で大きくその体勢を傾けるが、すぐに水平を保つ、そしてもう一発も投下。
「ほう、面白い、あれも人が操作して居る訳だな、しかしあれ程体勢を崩しても立て直せるとは、相当に訓練を積んで居ると見た、このまま実践投入しても良いのではないか?」
下から見て居てこれだけの評価を受けたと知ればマモンはさぞ喜ぶであろう。
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結局、この海戦は僅か3時間足らずで決着を見る事と成った。
当然、大日本帝国海軍による一方的な蹂躙劇であった。
日本側の被害と言えば、たまたま装填用クレーンの操作をミスして落ちた砲弾によって破壊した軽巡洋艦の3連砲塔一つと、そこのクルー8名の殉職のみであった。
戦犯は勿論装填用クレーン操作係只一人であった。
そして、この作戦の長たる村上格一中将、東郷平八郎中将両名は、連名でこう大本営へ電信する。
『対馬県沖封鎖海域、異常無し。』
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