第71話 秘匿基地へ

           秘匿基地へ

 1903年 11月

 -大日本帝国軍参謀作戦会議-

 予想に反してロシア軍の異常な人的資源量、物量によって大幅な誤算とも言える程の長期化の様を呈し始めた日露戦争の今後の展望を立てる為の会議は、煮詰まって居た。

 この場に、吾輩は参謀将校では無いにも拘わらず招聘されて居たのだ。

「ここはやはり、一度成果を上げて居る伊号弾、あれの改良型、呂号弾の導入を検討したい、主都を標的とした斬首作戦をやらせては貰えんかね?」

 海軍参謀長が強引な手段に打って出ようとしている。

「駄目ですよ閣下、マダマダ改良の余地がある試作品です、小官が技術省から移動になってしまったのも要員の一つではありますが、次世代試作の開発がかなり遅れて居りますので、あの試作では正直かなり広範囲で要らぬ被害が出てしまいます、国際法に抵触して居るとか言われてしまっては元も子もないのでお控え下さい。」

 吾輩はそれを理論的に諌める。

「むぅ、では貴様が技術省に戻って開発を進めてくれぬか?」

「ご勘弁を、そのような事をしては空軍が立ち行かなくなってしまいます。」

「くそう、何故貴様は一人しか居らぬのか、もう一人あれば何も問題は無いのだ。」

「それは良いお考えですが、小官がもう一人居れば、ですよね、あいにく私は並列存在も分身も持ち合わせては居ませんのでそこはご勘弁を。」

 つい、並列存在等というSF小説で得た知識のような言葉を使ってしまったが、何となくは理解されたような感はあった。

 まぁ吾輩の今の存在が既にSFの世界そのものである事には変わりは無いのだが。

「それより益田殿、儂はお主を非常に買って居るのだがね、戦車の後、次の新兵器は何か無いのかね?」

 陸軍参謀長の無い物強請りが始まった。

「それに関してなのですが、先程海軍参謀長より出た、伊号弾や呂号弾の小型にした射程を2km程に抑えた物を60発搭載して撃ち出せるトラックを考えて居たのですが、あれを全弾撃ち尽くすと蓄電池が尽きて動けなくなると言う致命的な欠陥が見つかってしまいまして、聊か開発の手が止まって居るようで、私が意見してやりたいのですがやはり余計な口を出しに行っている暇が今は有りません、ただし、最優先に指定してあるので彼等ならやってくれると信じて居りますので今しばらくお待ち下さい。」

「ふむ、益田殿がそう言うのなら待つしかあるまい。」

 思いの外アッサリ引き下がったのは恐らく戦車対戦車の戦果が好調で此方の優位性に納得して居るからなのだろう。

「しかしあの国は何だ、倒しても倒しても幾らでも現れるのだ、まるで死体に群がる蛆のようでキリが無い。」

「流石にその表現は不謹慎では無いかね?」

 陸軍参謀長の何気ない独り言のような一言に海軍参謀長が食って掛かる。

 敵艦隊との戦力差が大き過ぎて序盤で何もする事が無くなって海上封鎖だけしかする事が無い為に暇なのだろう、些細な事に目くじらを立て始めた。

「まぁまぁ、落ち着いて下さい閣下、小官の戦略予想が間違って居なければ間もなくロシア第三艦隊、バルチックが出張って来る頃でしょう、負けず嫌いなあの国の事ですから、最強の艦隊をそろそろ出して来ると考えられます、まぁ帝国艦隊の足元にも及ばない程度でしょうけども。」

 この戦術予測が見事に嵌まってしまい、後に”益田の戦術予報”等と天気予報のような言われようをする事になる。

 たまたま偶然であったし、バルチックだけでは無くパリ・コミューンや、通商破壊目的のスペイン等が合流して100隻は有るかも知れぬと言う程の大艦隊となって押し寄せる為に当たったとは言い難いものだった筈なのだが・・・何故かここでも吾輩を持ち上げる様な結果になってしまったのだった。

 あまり目立たずに神々を出し抜こうと思って居たのにこれでは本末転倒では無いのか?

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 同月

 -箱根益田邸-

「旦那様、国際便のお手紙が届いて居ります。」

「国際便?何方からだろう。」

 受け取った手紙、それはトーマスjrと、イリーナの結婚式への招待状だった。

 最近吾輩に連絡を寄越さずに何をして居るのかと思えば、奴らもとうとう身を固める事になったのか、こっそり吾輩にサプライズを考えていたと言う訳だな?

 そう言う事であれば全面的に応援してやろうと思う。

 更に内容には、新婚旅行は日本にしたいので見所を教えて欲しいだとか言う図々しい他力本願なお願いと、イリーナも合衆国で政界進出を果たし、ドイツとの懸け橋として尽力して居ると言うとても心強い近況が記されて居た。

 うん、日本、ドイツ、そして合衆国の逆三角形のロシア包囲網が完成した事になるのかな?これは。

 同時に合衆国、ドイツ、英国の三国によるフランスの包囲網も完成する事と成る。

 社会主義国家の封じ込めが確立した事と成り、これで我が国が日露戦争に勝利をする事でコミーの撲滅が可能になる、何としても勝たねば成らんな、しかし長期化か・・・さて、どう対処したら良いものであろうか。

 おっと、折角の目出度い報告の手紙だと言うのに結局は戦局を考えてしまって居るでは無いか、イカン、既に職業病の域に達している。

 だがこれは考えねば成らないので仕方の無い事だろう。

 来月には、第一次の訓練生が一人でも飛べるパイロットとして巣立って行くだろう、この中から成績優秀者上位5名を教官として抜擢し、北海道、松島、小松、松山、北九州の各空軍基地へと派遣し、パイロット育成に尽力して貰う事になる。

 空軍基地にやけに松の付く地名が多くなったのは只の偶然である。

 因みに航空機のコックピットに関して、前世のコックピットだと、機種によってまるっきり操縦法が変わってしまう為、違う機種に乗り換えるのには訓練が必要であったので、吾輩は開発の際、規格が統一出来るように設計思想を確立して居るので、これが後に世界標準と成ればもっと多様性が生まれるのでは無いかと思って居る。

 これはヘリにも使用して居るが、あれだけは飛行形態が多少異なる為操作形態にも多少の差異が出るがこれは特性上仕方が無かった。

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 1903年 12月

 今吾輩は、軍用機で合衆国へと向かって居る。

 勿論、トーマスとイリーナの結婚式に出席する為である。

 吾輩一人で出席するつもりで居たのだが、何故かこの人が一緒に付いて来てしまった・・・

「はっはっはっは!修一よ、こいつは本当に飛んで居るのだな、愉快愉快! いや大した物だ、お主は本当にすごい、素晴らしいぞ!」

 一々このテンションで子供のように燥いでおられる・・・

 天皇陛下その人であった・・・

「あのね陛下、既に以前に一度乗って居るのですからあまり機内で歩き回られると危ないですよ、確かに前回の機体より大きいのでこれが飛ぶのかと思う気持ちも判らなくは無いですがね、旋回等すると引っ繰り返って怪我をされるかも知れないですから少々大人しくして頂けませんかね?」

「まぁ硬い事を言うな、こんなに愉快な物に乗れて楽しく無い訳があるものか、今日は煩わしい近衛も置いて来たし多少はよかろうて。」

「いえそう言う問題では無く、機体が傾いたりした事で転ばれると怪我をされるでは無いですか、そして陛下がお怪我をされると一緒に乗って居った小官に矛先がですね・・・」

「いやいや、ワクワクするぞ、愉快愉快。」

 聞いちゃ居ねぇよこのジジイは・・・

 まぁしかし、この様なフランクな性格のお方であるが故に非常に国民受けも宜しく、歴代でも恐らく最も人気のあった陛下なのでは無いだろうかと思われる方だ、こんな所でもその性格が反映されて居るので仕方は無いかも知れない、しかし本気で危ないので辞めて貰いたい・・・

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 吾輩の心配を他所に、何事も無く空港へと降り立った我々は、迎えの車にて宿泊先へと送り届けられる手筈になって居たのだが、又この迎えに来た車と言うのが、いかにもアメリカと言った巨大なリムジンだった。

 何でセダンタイプの車が15m程も有るのだ・・・デカ過ぎだろう、こんな物設計したのは間違いなくトーマスjr本人だろう。

 リムジンを目の当りにした陛下は又してもテンション爆上げでゲラゲラ大笑いしている。

「わははははは!何だこのデカい車は、修一!これ日本でも作らんか? わしの公用車に一台欲しい!」

「無茶苦茶言わんで下さい、何処をこんな15mもある車走らす気です?トレーラーじゃねーんだから勘弁して下さいよ・・・」

「はっはっはっは、日本では狭くて走れんか!そうかそうか愉快愉快!!!」

 何がそこまで可笑しいのだろう、終始大爆笑でこっちが疲れる・・・

 いやぁ、ヤな予感はしたんだよねぇ、前日から吾輩の横浜邸の方に突然やって来たからさ、追い返そうと思ったら呼ばれて居るから一緒に連れて行けってからさぁ、でもお付きの近衛が一人も居ねぇからこのジジイ絶対皇居抜け出して来てるし・・・

 ああ、考える程頭がイテェ、今頃陛下が居ないって大騒ぎになってるのが目に見えるようだ。出発日まで読んで居るって一体どれだけそう言う勘が鋭いのやら、この人は天照の眷属のあの人よりも行動が読めない。

 まぁ、ご本人は一応神々の末席に居ると豪語して居るのでそう言う何かでは有るのかも知れないが、ってか俺は神はあまり好きじゃねーんだけどな、やたらこの人は何故に俺が好きなのか何なのだか・・・

 なんて考えて居ると、突然陛下が真顔で吾輩を見る。

「お主は神が嫌いかも知れんがな、捨てる神あれば拾う神ありと言うのじゃ、儂はお主をこの時代に転生させた悪魔共に感謝すらしておる程なのだ、お主のする事は見て居ると楽しい。わしはお主が好きだぞ。」

 このジジイ絶対俺の思考読んでやがる・・・やっぱこの人も人の姿を借りてはいるがお亡くなりになると高天原の住人と言う事なのだろうか、だからこそ亡くなった後に祭り上げられてあんな立派な神宮を建立されるのだろうな・・・侮れない。

「ところで修一よ、未だわしに頼みまでして作ったあの秘匿基地には行って居らん様だな。」

「ええ、今まで少々忙しかったので、今回この結婚式に出席した後にそのままこちらに出張と言う体を取って行ってみようと思ってますけどね。」

「うむ、良い考えだな、各基地の司令官は既に任命して居るようだし、第二次の徴兵広告ももう今朝の新聞に載って居るそうだしな、お主の手を煩わせる事も減るだろうとは思うので良い機会だ。」

「ちょ!今なんて言いました? 第二次徴兵の広告!?またあのこっぱずかしい文章が新聞に掲載されるんですか!?ってか今朝の新聞?マジ??」

「そうともよ、今朝の新聞読んで居らんのか? って読める訳無いか、まだ暗い内に空の上であったしな。」

 何だか楽しそうだ、今度はどんな恥ずかしい持ち上げ方をして居るのだろう、俺をダシに使うのはやめて欲しいのだが・・・

 そうこうして居る内に宿泊先のホテルへと到着した。

 そこでトーマスjrとイリーナが我々の到着を心待ちにしていた。

「ようこそお越し下さいました、日本の王、お久しぶりです、先生。」

「おお、とぉます君久しぶりだね、おめでとうおめでとう!」

 日本語でまくし立てる陛下・・・

「先生、陛下は何と言ってるんです?」

「そろそろ日本語も覚えたまえよ君は、久し振りだねおめでとうと言ってるのだ、しかしこの陛下のテンションは何とかならん物かな・・・」

「ははは、この度の式に会わせて作らせたリムジンが余程気に入ったのですかね?」

「ああ、やたら気に入ってたかな、日本でも走らせろ、俺の公用車に一台作れと煩いのなんの・・・」

「はははは、陛下の御守りで来られたみたいですね、まるで、一応御二方とも主賓なのに。」

「疲れるぞ、一日一緒に居て見ろ、あのテンションの上に行動の予測すら不可能だ、暴走老人も大概落ち着いて欲しいもんだ。」

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 教会での結婚式は大変良い物では有ったのだが、我々を死に至らしめたあの神の存在のような物を感じ、少々不快には思ったのだ、しかし彼らの周りは殆どカトリックなので致し方ない、本人達も精神回廊で繋がっているテレパシーでそう伝えて来て居た。

 式の終わった後、陛下、吾輩、トーマス達の4人とルーズベルトと言った5人での会食は有意義であった。

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 翌日、早速陛下を帰りの航空機に押し込み、吾輩は合衆国側で用意して居たこちらで開発をした航空機に乗り込んで対馬県北部山中にてパラシュート降下すべく準備をして居た。

「先生、また来てくださいね、もうすぐロシアとも決着が付くのでしょう?」

 イリーナがそう言うが、

「いや、残念ながらロシアの物量作戦が史実を圧倒する程の規模でな長期化の様を呈して来てしまった、もう半年程は少なくとも戦う羽目になりそうだ。」

「それは厄介ですね、何故そんな事態に?」

「うむ、お前らにしか話せぬ事では有るが、聞くか?」

「「はい。」」

 するとそこにルーズベルトが現れる。

「その先は我が話しておこう、益田よ。」

「お、アスタロト殿か、ではお願いします、っと言うか未だ話されて無かったんですか、あの話。」

「ああ、彼らはお主を気に掛けて居たのでな、心配するといかんと思い未だ話して居ないのだ。」

 レーニンが、第二次大戦頃にスターリンの副官だったラヴレンチー・パーヴロヴィチ・ベリヤの魂を二つに割って持って来た半転生者であると言う事実が、この時初めて二人に告げられる事になった。

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「益田殿、間もなく目標ポイントに到着します、しかし、益田殿を卸した後我々が帰還する燃料が足りません、助けて貰えませんか?」

「何だと、何を考えとるのだトーマスは、仕方ない、無線機を積んで居らんか?」

「何です、それは。」

 驚いた、あんな未来人が無線機の開発を怠って居たとは知らなかった。

 仕方が無い、火力発電施設の広い通路に着陸させ、発電用の燃料を分けてやり帰国させることにした。

 複葉機であるが故に滑走距離も短くて済んで居るのが幸いだった。

 小型機で良かったわ、まったく・・・後でイリーナにこっ酷く説教しておいて貰うとしよう。

「ここは火力発電施設ですか、かなりの規模ですね、未だ稼働して居ないようですが?」

「ああ、ここは吾輩専用の施設の一つでね、口外は無用に願うよ、もしも情報が洩れるような事が有ると吾輩の子飼いのアサシンに暗殺される可能性が有るのでくれぐれも内密に頼むよ。」

 パイロットはごくりと唾をのみ、了承して首を縦に振った。

 複葉機の向きを変え、飛び立つまで見送った吾輩は、先ずはこの施設の稼働をさせる事にした、結局はこいつが動いて居ない事には地下施設の全容が把握出来る迄の電力は供給出来ないのだし、自ずと優先される作業ではあったのだ、基地内からリモートでも稼働できると言う話では有ったが、初めだし念の為ね・・・

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 火力発電を稼働させた後に、吾輩は徒歩で基地への地下通路をトボトボと歩いて居た・・・思った以上に遠い・・・

 あんな事態になると予想出来て居れば発電施設側に電動車でも置いておいたものを・・・

 電動車だが、この施設用に開発して置いた物だった。

 平成令和の時代にコンビニが配達に使って居たアレのような一人乗りの小型の物である。

 あれば楽だったのに・・・全部基地内の方だよ、置いてあるの・・・

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 ようやく辿り着いた基地は、何故か既に誰かが居るような雰囲気を醸していた、何だこの違和感は・・・

 しかし、そんなはずは無いので気を取り直して早速全体を操作できるコントロールルームに向かう事にした。

 コントロールルームに到着すると、やはり人の気配がある、と言うよりも人が居たような気配、が有るのだ。

 何だか違和感は有るが、一人でこう言う大型施設に居ると言う事は何となくそわそわしたような気になる、子供の時に深夜の学校に侵入した時のようなあの感覚だ、実際にそうでは無いのにそんな気になると言うか所謂気のせいだろう、システムを稼働させてみる。

 すると驚いた事に、ここのスパコンには既に、吾輩がこれまで開発して来たもの全てのデータ、そしてここで開発して行こうと思って居た人工衛星や宇宙ロケット、ジェット戦闘機の、これまで技術省で行って来た研究成果と試験機のデータなどが全部揃って居たのだ。

 本国のスパコンとは地下ケーブル、海底ケーブルを経由して繋げてはおいたが、まさかもうここまでダウンロードが済んで居るとは思って居なかった。

「上出来では無いか・・・」

 思わず独り言が口を付いた。ドックの電気を全て付け、カメラを起動させると、宇宙ロケット製造用の施設が映し出される。

 うん、良いじゃ無いか。

 その隣のラボも同じく電気をつけカメラをオンにする、ここは人工衛星のラボで、精密作業が出来るように吾輩が地道に作り上げていた機械を作る機械、つまりマザーマシンが運び込まれて居た。

 吾輩が自分でデザインしたサーキットを転写されたCPUを塔載し、0.01mmまでの精密工業をこなす吾輩の右腕となる機械だ。

 今日から2か月間でこいつを使って、既に設計が終わって居るスパイ衛星となる超望遠カメラを内蔵した人工衛星とロケットを作り上げ、打ち上げたい。

 食料も運び込んである筈なので食糧庫も確認して見る、冷凍庫に肉や魚も一人なら2年分くらいの備蓄を確認出来た、この冷凍施設は普通の電力施設から電気が来ている上に停電時にも備え付けの予備電源、ソーラー&風力の設備で電力が確保される事になって居るので冷凍庫だけの電力としては十分な電力が確保されるのでまず止まる事は無いだろう。

 食料は大事なのだ。

 吾輩は早速、技術開発省にしか存在しない短波無線機に秘匿通信を送ってみる。

 すると、勘の良い井上君はすぐに返信をして来た。

「お久し振りです、どうなされたんです、中将閣下、どうぞ。」

「久しぶりだね、井上君、今、例の秘匿基地に到着して居るのだがね、金庫に入って居た吾輩の指令書の作戦を発動する事になった、優秀な者を2~3人、それと優秀な料理人を一人、お願い出来るかな? どうぞ。」

「は、了解しました、では、複式回転翼機にてそちらへ向かわせます、パイロットは坂本君にお願いしたら良いのでしょうか? どうぞ。」

「うむ、彼にはここの座標が伝えてある、彼が最適だ、よろしく頼む、どうぞ。」

「了解しました、すぐに手配致します、どうぞ。」

「うむ、では通信終わる。 尚無線機の電源は落とさないように、此方も落とさんので何かあったら連絡するように。」

 その翌々日、深夜にヘリが到着、山頂のヘリポートエレベーターを下ろし、有志達を迎え入れたのであった。

「ようこそ、開城山秘匿基地(けそんさんひとくきち)へ。」

「中将閣下、洒落で済まさんで下さい、本気で何なんですか、ここは。」

「ん?ここか、ここはな、月のように地球をぐるぐる回る人工衛星を開発、打ち上げる為の施設だ、我らの住んでいるこの地球は様々な情報の宝庫だ、それら全てを知る為には、上空から見るしか無かろう? それをやろうと言うのだ。」

「少し我々の認識が追いついて居ない感じなのですが、もう少し具体的にお願いしても良いでしょうか?」

「ああ、スマンスマン、当面、作る人工衛星は、スパイ衛星である、この戦時故な、もしも誰にも判らない程の上空から敵地の様子を写真撮影出来たらどうだと言う事だ。」

「しかしですね、閣下、そんな上空まで飛ばさねば成らない訳ですよね、そしてどの位の時間上空に居られるのです?」

「成程、もっともな疑問だ、要するにそんな上空まで飛ばした後、何時までも滑空して居られる訳も無いのでは無いかと言う事だな?」

「ええ、まぁそう言う疑問でありますね。」

「では諸君らは、月は一体どうやって浮かんで居ると思うとるのかね?」

「え~っと・・・確かにあれは落ちては来ませんね、太陽も落ちては来ません、と言うか閣下は天文学等にも精通して居られるのですね。」

「そう言う事だ、地球は太陽の周りをぐるぐる周る衛星、そして月は地球の周りを周回して居る衛星である、つまりだ、物を打ち上げると、地球の引力に引かれない高さと言うのが有ってだな、そのような高さまで打ち上げる、後はその物体が常に浮いたまま情報の収集をすれば良い訳なのだ、耐年数は恐らく、まぁ初めだからそれでも20年は欲しい、その間ずっと浮き続ける訳だ。地球が自転して居る事は解るな? その自転している地球に対して一日その場に浮かび続けられれば一日で地球を一周する事になる訳だ、物体的にはその場に静止して居るので何の苦も無い、しかしその間地球は実に吾輩の計算上音速の25倍位で回って居る事になる、つまりマッハ25で静止する機械を作って敵情視察をしたいとそう言う訳なのだ。」

「しかし空気抵抗等はどうなりますか?」

「それだけの上空になると、空気はもう無い、つまり空気抵抗も無い、富士山に登った事の有る物が居るか?居たら判ると思うのだが、空気が薄いと感じた筈だ、それが更に上の高さに成ったら、と思ってくれ給え。」

 まぁ、未だ誰もやって居ない事だから仕方が無いのは理解して居たが、技術開発省の中でも切れ者の3名をもってこの反応だったか・・・思ったより手古摺るかもしれない。

 以前に智天使がやらかしてレーニンがどうこうと言って居たな、出来れば協力して貰いたいものだな、罪滅ぼしとして・・・

 実は、空軍基地内に吾輩の研究設備を作ってあってそこで半導体の様々な実験をした結果、CCDイメージセンサにかなり近い物が出来ていたので今回の偵察衛星を思いついたと言っても過言では無かった、これを言うとまた寝て居ないのだろうとかもっと休めと言われるので極秘で勝手に研究を続けて居たのだ。

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