第59話 戦闘航空機第壱号

          戦闘航空機第壱号

 1902年 2月

 ドイツ首都ベルリンにて、世界初の地下鉄がお目見えする。

 東京府でも既に地下鉄の為の行動を掘り進めては居たのだが、ドイツが先に完成させてしまった、折角この為にと電気動力の列車を早めに開発して置いたのに誠に残念である。

 しかし3月になると東京府、横浜市共に地下鉄が完成を見る事になったのだった。

 1902年 4月

 グァテマラで大地震が発生する。

 吾輩が事業を買い取った経緯がある為に、本来の歴史と違い、パナマ運河は日本が作ったのでパナマには日本人が多く住んで居る、そんな経緯からのよしみも有り、吾輩と日本政府で支援金を出す事になった。

 我ら大日本帝国も地震大国であるが故に他人事とも思えないと言う理由も有った。

 困った時は助け合いである。

 因みにこの4月に世界初の映画館がアメリカに完成するのが史実であったのだが、吾輩の弟、益田太郎冠者と吾輩の行いにより、世界初の映画館は3月に対馬県に出来上がってしまっていた、対抗したかった訳では無いのだがこうなってしまった、映画大国アメリカ・・・御免よ・・・不本意ながらやっちまったYo!

 因みに世界に先駆けて初めて公開された映画は、赤穂浪士であった、弟が凄い勢いで撮ったらしい。

 エキストラが異常に多くなってしまいかなり大変だったようだ。

 しかも何故か、スポンサー迄着いて居たのだった。

 スポンサー第一号となったのは、服部時計店、後の服部セイコー、いわゆるSEIKOである。

 服部の名字を持つ社長は、浩江ちゃんとは無関係らしい。

 余談だが、服部時計店より提供された精密時計のお陰で吾輩のPCのクロックは出来上がっている。

 世界初の弁士も我が弟であった。

 奴もなかなか芸達者だなと思う。

 1902年 6月

 横浜ドックで建造中だった新型の大型潜水艦が完成したと一報が入って来た。

 この艦は従来のスクリューを廃止、戦艦や戦車で培った技術をそのまま流用した高性能ディーゼルエンジンを流用したハイブリッド式のハイドロジェット推進を浮上航行時に利用し、その浮上航行中に蓄電した電気を使い潜航時はモーターポンプ式ハイドロジェット推進にする事で大幅に静音性能と航行速度に進化を齎した。

 ちなみに現在ではすでに新造の戦艦も全てハイドロジェットである。

 本当は原子力潜水艦を作りたかったのだが、ウランの研究があまり進んで居ないので大戦までには間に合わせる程度で良いと思う事にしよう。

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 大型潜水艦 小笠原級 小笠原

 排水量基準 (浮上時)1850t (潜航時)4300t

 全長:147m

 全高:11.2m

 全幅:10.1m

 吃水:8.1m

 機関:ディーゼル2機 5860馬力ポンプ式ハイドロジェット推進

   電動ポンプ2機 3420馬力電気ポンプハイドロジェット

 電動機蓄電池:リチウムイオン電池

 最大速力:(浮上)27kt (潜航時)11.4kt

 安全航行深度:65m

 最大兵員:155人

 兵装:艦橋上部収納式四連装30㎜機関砲2門

   400㎜魚雷管4門 (24本搭載)

   533㎜魚雷管4門 (12本搭載)

   機雷管4門 (一九式機雷50個 三二式電磁石式機雷30個搭載)

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 1902年 7月

 レーニンがついに動き出してしまった。

 ロシア皇帝ニコライ二世が暗殺に会う、辛くも回避をしたものの深手を負い、屋敷へ逃げ込んだが、屋敷を包囲され退位を申し出る。

 その直前にミハイル・アレクサンドロヴィチ大公も拘束されており、継承権を放棄させられていた為、ここで遂にロシア皇国はコミーによって乗っ取られてしまう事になったのである。

 実に2年程も早く歴史が動いてしまった事と成る。

 これを知った吾輩は気付いてしまった、ロシアにも何やら吾輩以外に逆行転生した物が居るのでは無いかと言う事に。

 しかし時限神クロノスがこちら側にいる事で、吾輩程の先の未来から来た訳では無いのだろうとは想像が出来る。

 しかし、それにしては少々お粗末なのでは無かろうか、放って置いても後2年後にはニコライ二世を退位させる事が出来る上、ミハイル大公も拘束したり脅したりせずとも継承権の放棄をしてロシア皇国時代は幕を下ろす筈だからである、ここまで手の込んだ事をするとは、余程自分の力を誇示したい者では無かろうかと思う。

 そう言われれば、心当たりも無くは無い。

 最近、浩江ちゃんがロシアに気を付けろと言って居たし、やたらと吾輩に対して暗殺を企てる国が有るらしいと言う事実だ。

 この事件のお陰で、恐らくロシア自体が早めに動き出すであろう、何時宣戦布告を受けても良い様に準備だけはしておこう。

 陛下にお願いし、対馬県駐屯軍に、指令を出して頂く事にした。国境の警備を固め、北京市へ出向して居る部隊を引き上げさせるようにして貰う為であった。北京市の警備には、英国軍と独逸軍に委託する事にしたのだ。

 恐らくはロシアの狙いは大日本帝国、つまりは北京市に帝国軍が居なければ北京市が戦火によって破壊される事は無くなる筈だ。

 その上、引き揚げさせる事で兵站も長距離輸送する事は無くなり、いざ戦闘が開始されればこちら側に有利に運ぶはずである。

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 1902年 8月

 第一潜水艦隊より、ロシアの艦隊が恐らくは進軍の準備をして居るとの報告を受けているようだ。

 いよいよ戦争へ向けての布石が始まると言う事なのだろう。

 此方はと言えば、航空機は何とかロールアウトしたものの、量産体制もパイロットの育成も進んで居ない、やはり日露戦争にはギリギリ間に合わなかった感じである。

 ・・・いや、本当なら間に合ったのかも知れんが、ロシアの動向が史実を超えて早めに動いて居るのだ・・・

 ただ、回転翼機に関しては、1~2個大隊分程は用意出来そうである。

 あの兵科ならば僅か1個大隊であってもそこそこの戦果は上げられるのでは無いかとは思うが、実際に出すか否かは未だ決まって居ないし、吾輩にその采配をする権限は無いのだ、今回は恐らく見送りになるのでは無かろうかと思われる。

 だが油断も出来ないだろう、何となく感じたように、ロシアにも逆行転生者が居た場合、戦車を作って来る可能性は大いにあるのだ。

 一応秘密兵器なので何かの間違いでも有ったとして、最終手段としての投入になら可能性はあるかも知れない、ヘリだけでも完成して居て良かったと思って居る。

 どの道今は、戦闘機に関しては航空機パイロットの育成がなされなければ成らない。

 そしてその航空機の威力を最大限に発揮できるよう、空母を設計、開発する事がこれからの重要な課題である。

 そして、空母は自ずと大型艦になる事は明白なので、巨大な戦艦、大和や赤城のような弩級戦艦の開発を阻止し、資材を確保する事を前提とせねばなるまい。

 この際ハッキリ言おう、大艦巨砲主義に関しては吾輩はどちらかと言えば否定派である。

 この際ヘリ空母も設計しておこう。

 対地戦闘では、制空権さえ有ればヘリは対地攻撃最強と言っても良いのだ。

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 1902年 9月

 3月に世界初の映画館が出来たばかりの筈なのに、仏蘭西で、『月世界旅行』と言う世界初のSF映画が公開される、世界は娯楽にそれだけ貪欲だったと言う事であろう。

 しかし、吾輩の弟も自分の夢の為には何処までも貪欲である、しっかりこの作品をどういうルートを使ったか知らぬが輸入して対馬県の映画館で公開して居た。

 今となっては、東京府にも映画館をと言う風潮が強く、新宿は、後の歌舞伎町に当たる開発地域へ娯楽をと、まだ名も無いこの埋立開発途中の湿原に、映画館を建設中らしい。

 吾輩はと言えば、遂に映像を電波に乗せて発信する事が出来る通信機を完成するに至った、受信側、所謂テレビも完成したので、試験放送をして見たが、流石に電波の出力が足りないのと、巨大発信アンテナ、電波塔が欲しい所である。

 此処まで出来たと言う事は当然、航空機搭載用の小型無線機も既に完成を見ている、管制塔にもついに大出力通信機が用意出来た。

 ここ最近では、吾輩は徐々に空港を増やし、空軍を立ち上げると言う野望を持って居る。

 史実では、第2次大戦でも空軍と言う概念は無く、陸軍航空隊、海軍航空隊と言う括りであったのだ、何がダメと言う事では無いのだが、これは有った方が都合が色々と良くなるのだ、命令系統の差別化とか色々と。

 この際なので東京タワーも建ててしまおうと言う企みを考えて居る。

 初の大型電波塔になるので、通天閣程度の高さでも良いのでは無いかと思って居る。

 新通信基地も横須賀軍港内、市ヶ谷近衛兵団駐屯地、等と言った風に様々な駐屯地に増設される事になったのだ。

 これからは情報戦である、情報が早い方が有利に戦闘を進める事が出来るのだ。

 これまでもかなり大掛かりでは有るが無線機はあったが、大き過ぎて容易に持ち運べる物では無かったのだ、それが通信機のみを搭載する車両が必要ない小型の物が作れるようになった以上、中央の指令が末端まで数日掛かったりする事は無くなるのだ。

 実際にバイクでライダーが背負って運べる程度のモノでもかなりの高性能を発揮するようになって来たのだ。

 その内指令書を電波で送信して現場が受け取れる無線ファクシミリみたいな物を作ってしまうとしよう。

 ある意味暗号通信のようになって好都合なのでは無いかと考えて居るのだ、当然画像として送るのだから傍受されても受信出来る機器が無ければそれはノイズにしか聞こえないし暗号そのものであると言う事だ。

 これはモールス信号より画期的な暗号通信であるな、等と自己満足に浸って居るのだった・・・通信データ量が多くなるのは仕方ないとして・・・

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 1902年 10月

 早稲田大学校が開校した、私立では初の大学校である。

 吾輩が設立した学校は小学校と高等小学校なので、私立大学校は史実通り初めてになる。

 基礎学力の向上に成ればと、各地方に幾つもの小学校と高等小学校を作って居たので大学校迄は手が回って居なかったのだ。

 学問の出来る者が少しでも多く世に出てくれる事こそがこの国を支える柱として新たな道具や、農業を含む各技術を生み出す力となる。

 ちなみに早稲田大学が開校した事を皮切りにして、吾輩の元に大学校を設立して欲しいと言う要望が各方面より来ている。

 だが吾輩事態は忙しくてそれ処では無いので出資をする事と理事長として名前を貸すと言う事だけを約束したのだが、この凡そ1年後に、益田大学と言う名前で、現代の青山学院大学の本キャンパスの辺りに完成する事となってしまった。

 かく云う吾輩は、トランジスタの完成のお陰で新たに引き直して居たサーキットデザインを完成させた、これで新たなスパコンを組み上げる事が出来る筈である。

 執務室にてつい、気が緩んだのかまるで悪の親玉のような高笑いをしてしまった、多分ろくに寝ずに仕上げたのでナチュラルハイと言う奴になって居たのだろう。

「ふ・・・ふははははははははは! 遂に完成だ!これで我が野望はまた一つ前進するのだ! ざまぁみろ吾輩に仇成す存在ども!」

 と、ついつい叫んでから、鉄板が入って居て頑丈な爪先になって居る軍靴を利用し、つま先立ちでくるっと一回転したのだが、途中に何か居てはならないものが居た気がする・・・ピタッと回転を止めて、そーっと背後にある執務室の扉を振り返ると、そこには山田中尉がポカンと口を開けて突っ立っている・・・ やっちまった・・・

 テンションが上がって居てノックに気が付かなかったらしい・・・

「あぁ・・・そこで何をしてるんだ、山田君。」

「あ・・・いいぇ、あ、はい、航空機部門で、最終型試作機の装備を済ませたのでこれより攻撃実演テストをしたいのでお呼びして来て欲しいと言われまして・・・」

「わ・・・わかった、ちなみに今、君は何か見たかね?」

「い、いえ、くるっと小気味良く回転してたとか見て居りませんし、高笑いしてたのとかも聞いて居りません・・・」

 初めから聞いてるし見てんじゃねぇかテメェ・・・

 うん、ここは小遣いでもやってしっかり口止めして墓場まで持って行って貰うとしよう。

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 滑走路に出ると、滑走路より遠目に見える海上に、ブイに立てた的がある、戦闘機と呼べる機体には、主翼の付け根付近に取り付けられた18㎜機関砲2門と、胴体の下側左右に2本づつ取り付けられる20㎏爆弾(模擬弾)が実装されている。

 胴体下部には、予備燃料を入れておく切り離し可能燃料タンクも付けた状態、つまり実際に実戦形式の状況にしたフル装備である。

 これが雷撃戦の場合、20㎏爆弾の代わりに280㎜魚雷が左右に1本づつ、計2本装備される。

「それでは、益田准将もお越しになられたので実演始めます、エンジン回せ!」

 飛び上がる、うん、流石にフル装備だけあって多少重そうな動きでは有るが、問題ない、機体の柔軟性がうまく機能して居るようだ。

 良い感じだ、機関砲も弾倉満タンにして居るので大分重いと思うが、旋回性能も悪くなさそうだ。

「では攻撃開始。」

 無線で指示を出す。

 旋回をしながら低空飛行へと移行し、まずは機関砲を撃つようだ。

 そして、見事に的に命中させ、上昇して行った。

 次は爆撃である、こっちはタイミングとかあってこの小さな的では命中させるのは難しいだろう。

 しかし至近弾に成れば、相手が戦艦ならば当たって居ると思うし、こっちは大まかに近くに落とせれば成功である。

 今度はある程度の高さから接近して来ると、投下を開始した。

 うん、予想通り当たりはしなかったが、中々の至近弾であった。そして爆弾を落とし終えた後の旋回性能を見せてくれと無線手に命令を入れる。

 素晴らしい、予想以上の旋回性能であった。

 これならばもし他国が戦闘機を開発し終えていても戦える。

 因みに最高高度は8800mと、予想を超えて高性能に仕上がっている。

 これならばすぐにでも実践投入が出来るであろう。

 但し、パイロットを育てねば成らないのであと数年は必要になる、その間に更に改良を加えて置きたい。

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