第53話 魔王、降臨?
魔王、降臨?
1899年 4月
今日はイリーナの留学登校初日、の前日だ。
そんなさ中、やれやれな出来事が起こったのだった。
我が家の警備の者が、変な合衆国人と思しき若者を捕らえたと報告をして来たのだ。
捕らえたって何だよ、門でもよじ登ろうとでもしたのか?
「連れて来たまえ。」
と命令すると、警備主任の連れて来た人物は、明らかにマーク、いや今はジョージ?
あ、いや、今は恐らくトーマス・エジソン・ジュニアと名乗って居る筈・・・であった。
「先生!イリーナは?!」
「こらこら、落ち着きたまえ、何だそんなに大騒ぎして。」
警備主任に下がって良いと合図して、部屋へトーマスジュニアを招き入れる。
解放された彼は掴み上げられて居た手首を摩りながら、語り始める。
「どうもこうも有りませんよ、先生もイリーナも、突然僕が話しかけても返事が来なくなっちゃったじゃ無いですか。」
「何だと?何か起こってるのか?」
彼の話では、如何もイリーナが日本に留学する事になりうちで厄介になる事になったと言う報告を受けた所までは精神回線が繋がって居たらしいのだが、その日を境に吾輩にもイリーナにも繋がらなくなってしまったらしいのだ、そして父君に休暇を頂きこうして探しに来たらしい。
で、警備が余りにも厳重そうなので塀をよじ登って様子を見ようとして居たのだそうだ。
ともあれ今日は日曜日である、吾輩も休みを頂いて居るし、イリーナは明日の始業式に向けて準備をする予定の日だった、しかしこんな早朝から塀をよじ登った、そりゃ摑まるわな・・・
何やってるんだか。
「まぁもう少し落ち着け、兎に角まだイリーナも寝て居るだろうし、コーヒーでもご馳走してやるからゆっくりし給え。」
「はぁ、では僕の呼び掛けは先生の元へ届いて居ないんですか・・・てっきり無視されて居るものかと。」
我々の精神回線は転生する際に魔王サタンが構築してくれたちょっとした反則スキルである。
これがあればお互いの国の情勢も情報共有出来るのでかなり重宝する筈だった。
その回線が切断したと言う事はサタンに何か起こったのだろうか?
まぁしかし何か起こった所で普通はこの程度の術が解けるとも思えない、それだけ出鱈目な存在に思えた、でもこうしてリンクは切れているのだ、何かが起こったのは間違い無いが何が起こったのかまでは判断が付かない。
そんな所に、もう一人やって来た。
浩江ちゃんである・・・筈なのだが、何だか非常に禍々しい・・・
「ひ・・・浩江ちゃん・・・・では無さそうですね、もしかして今話題に上ってる最中の魔王サタンでは有りませんか?」
「うむ、良くぞ見抜いたな、流石は我の見出した人間だけは有る。
実はな、ベルの眷属との繋がりを利用した能力でずっと貴様の事をのぞき見させて貰って居たのだが、余りにも面白そうなので我もこちらで直に観察させて貰おうかと思って居ったのだが、そんな折、この体の持ち主がお主の暗殺を図る者と相打ちになってしまったのだ。
そこで、こやつの魂と肉体を確保、我がこやつ受肉してこやつの魂との折り合いを取り付けた所なのだ。」
「は、はぁ、もしかして精神回線のリンクが切れたのはその時の副作用か何かでしょうか?」
「それは原因が解らぬが今からリンクを繋げ直す事も吝かでは無い、ともあれ我もこれで受肉を果たしたのでな、貴様の食している旨そうな物を食べられるのでは無いかと期待して居るのだ、是非に夕食にでも招待して頂こう。」
もしかしてうちの飯が食いたかっただけで来たのか、この方々・・・しかし神魔大戦に敗れて後封印されて久しいのできっと退屈してたんだろうなぁとは伝わってくる・・・
良いのかそんな緩い事で、魔王よ・・・
「そこでだ、早速我にも茶を馳走して貰おうか。」
態度だけは偉そうだが、その、浩江ちゃんの姿で言われてもなぁ・・・
「先生、その方は?」トーマスジュニアがすっ惚けた質問をする。
「あのな、この禍々しい気配で分らんか? サタン殿だよ、中身はな。」
「は?何でこっちに来てるんすか?
もしかしてリンク切れたのってこれが原因っすか?」
「その可能性も有るかもな。」
「のう益田よ、この体の持ち主は相当の精神力の持ち主なのでは無いか?
何だか知らんが我が魔力をかなり抑え込んで来おるのだが。」
「でしょうね、その人は忍の末裔、柳生と伊賀の統合忍軍の頭領ですから。」
「益々面白い人物に取り付けた様だな、面白い、こいつの能力を最大に生かせるように覚醒を促してやるか。」
丁度このタイミングで、イリーナが起きて来た。
「あ、お早う御座います先生、お早いで・・・・ってTJ?」
「やあ、イリーナ・・・」
ふむ、TJか、良い呼び方だ、一々トーマスジュニアは呼びづらい、これから吾輩もそう呼ばせて貰おう。
と言うかこれで我々転生未来人組3名が再会を果たしたのだった。
「ほう、揃ったようだな、ちょうど良い、精神回線を繋ぎ直してやろう。」
《これで繋がったな、序でに我が精神回線も繋いでおいた。》
あっと言う間だった、何をされたのかも分からないがどうも繋がったらしい。
しかもサタンとも繋がってしまった、どうしたものであろうか。
その晩、サタンのご希望通り、夕食の宴を開く事と成った。
あくまでもサタンとしてでは無く吾輩の護衛を担う諜報部員を労う為としてである。
ベルゼブブも浩江ちゃんの部下として一緒に招待をする事になったのだが・・・食事に蠅の王を誘うってどうなのだろうと思わざるを得なかったのは言う迄も無い。
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1899年5月
スパコンが完成してから1年、スパコンの性能を格段に上げる為の演算も終盤に掛かって居た、トランジスタの完成が近いと言う事である。
トランジスタの実用化が進めば、レーダーや航空用無線機等にも転用が可能である、こうなって来ると超技術大国として名前負けの無い国となったと見ても良いだろうか?
だがまだIC等も必要であるし高性能化する為にはまだまだ様々な技術が必要となる、手始めにスパコンを次世代型へと発展させる所からであろう。
そんなさ中、北里君が技術省へと尋ねて来た。
「お久し振りです、准将になられたようでおめでとう御座います。」
「北里君と吾輩の仲では無いか、そう畏まらずに。」
「いや、実は折り入ってお願いが・・・」
「君の事だから大体わかるぞ、例えば野口君を筆頭に後進を育てて居る内に本格的に医学者を育てる学校を作りたくなった、とか、研究に必要な新しい機材を思いついたから開発費用を提供して欲しい、とか、不足がちな機材や医療機器を作る会社を立ち上げたい、大方その辺りか?」
「判りましたか、流石と言うか、見抜かれてましたか、医療機器と研究機材を作る会社を立ち上げたいと思ってますよ、手始めに風邪等の症状で熱が出る事は解って居りますので、平常時の体温と熱発時の体温を比較する為の検温器が作りたい、野口君も一人前になったので一緒に経営陣に加わって頂く所存です、ですが、我々だけで立ち上げるとなると20年は只働きを覚悟しないと資金が足りない訳です。」
「やはりそうか、では全額寄付して差し上げよう、吾輩も医療が充実した病死する人が居ない社会を、まぁゼロとは行かぬだろうが・・・そんな物を目指して欲しいと常々思って居るのでね、人殺しの道具を作って儲けた汚い金だがコイツで良い事を出来るなら本望だ、君が羨ましい、社会貢献をし続けて行けるのだからね。」
こうして、テ〇モと言う会社の前身である赤線検温器株式会社が設立するに至った、史実より大分早いけども・・・
「ありがとう、益田殿、感謝する、それと、君の作った物は戦争の道具だけでは無いだろう?
人々の暮らしに役立つものも多く作って居るじゃ無いか。」
「ところで、今日は暇ですかな?
どうかね、たまには家で晩酌の相手でもして貰いたいのだが。」
「そうですな、今日は暇だしお相手しましょう。」
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ある日、浩江ちゃんがやって来た。
浩江ちゃんに憑りついたサタンの方では無く、浩江ちゃんの人格だ。
「報告するわよ、ロシア連邦が何やら怪しげな動きを始めて居るわ、気を付けて。」
「あ、浩江ちゃん、その、済まなかったね、吾輩を守って相打ちになったと聞いた。」
「ええ、私もコレ迄かと思ったけど、貴方の秘密も知る羽目になったわ、今まで以上に一蓮托生な感じで嬉しいけど。」
「それで、どうなの? 君の体にはサタンの人格、もとい神格とでも言うべきか・・・居るんだろう?」
「ええ、なんか変な感じでは有るけど、むしろ今まで以上にパワフルになった気はするし、今ならこないだのレベルの奴が来ても秒殺できる感じね、それと、使えるわよ、こいつ・・・」
と言って口笛を吹くと、ベルゼブブが現れる。
「益田殿、お主の安全は我がメインで守る事になった、安心するが良い。」
「ベルさん、吾輩よりも妻とこれから生まれる我が子を優先して守ってくれまいか?前世から始めて自分で作った家族になるので兎に角愛おしいのだ。」
「ふむ、益田殿がそれで良いのなら、承った、眷属を常に付近に着けて危険が及ぶような事があれば対処に当たろう。」
「ありがとう、感謝する、吾輩はこれでも一応北辰一刀流免許皆伝だし、常にこんな物騒な物も持ち歩ける身分なので、自分の身位は何とでもなるからな。」
と言ってキャリコ型のサブマシンガンをちらつかせる。
「ではそれでもダメそうな時だけお助けしましょう。」
最近では吾輩の陛下よりの信頼の高さからか暗殺しようと言う勢力も少なく無いのだ。国外からも、国内もだ。
「あ、それと、この手紙を部下が預かって来たわ、貴方の弟さんからよ。」
「お、ありがとう浩江ちゃん。」
弟の手紙にはこうあった。
【拝啓、兄上、現在半島は、重機のお陰で予想を超える速度での復興が出来つつあります。
兄上の申し付けに従い、上下水道及びガス、電気の設備も徹底して作らせました、都市部はほぼ完全に網羅できたのでは無いかと自負しておる次第です。
つきましては、当初の予定通り、現在工場では戦闘車両の生産を開始し、この度第一号車両が完成致しましたのでご報告させて頂きます。
機甲科部隊を此方へ配属の程を宜しくお願いします。
追伸:此方で劇場を建て、劇団をしても良いかも知れないと思って居ります、兄上が宜しければご支援の程お願い申し上げます。】
対馬県の復興と開発も軌道に乗って余裕が出て来たようだ、良かろう、資金提供をしてやるとしよう。
余裕が出て来た都市には娯楽も必要なのである。
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1899年 7月
トランジスタ技術が確立、早速吾輩は新しいスパコン構想を打ち出し、基盤のデザインを作成に入った。
これで前回と同じサイズ程の基盤面積があれば、従来のスパコンを遥かに凌ぐ物が出来ようと言うものである、いずれにしてもHDD技術が既に確立して居るので、システムの移行も簡単である。
だが今度は基盤を複数枚に分割して作らなければ、井上君にまた冷めた目で見られるのは耐え難い。
何はともあれ、こいつが完成するとより一層全ての開発が加速する事だろう。
基盤デザインを考え始めた吾輩はこうなると研究室に籠ってしまうのが悪い癖だ。
井上君や山田君に今日は帰れなどと諭されて初めてそんな時間迄やって居たかと驚く、集中すると時間の概念が認識から外れるらしい、目覚まし時計でも作って置いておくか。
この頃、我が家を昼間に訪れる者が居ると言うのだが吾輩は一度もその者に会えた事は無かった、何故ならば基盤をデザインする為に日曜日であろうと出勤して居たからである。
ある日曜、早朝より出勤の支度をして居ると、妻に諭されて今日は休みを取る事と成った。
そしてついにその訪問者と顔を合わせる事と成ったのだった。
どうやら吾輩が破格で融資してくれると何処から聞いたのか知らないが半分合ってるが半分間違った認識で融資を求めてお百度を踏んで居たらしい。
屋敷に迎え入れて取り敢えず顔を合わせる事にした。
「突然の訪問で失礼致します、私は森永太一郎と申します。」
なぬ?森永太一郎?それってもしかして森永製菓、後には森永乳業等も抱える大企業の創業者では無いか!
これは出資しない訳にはいかないだろうと既にこの時点で思って居た。
「益田修一と申します、ちなみに幼名を一太郎と申します、名前が似て居りますね。」
森永太一郎は少々驚いたような顔をしていた。
「それは何たる偶然、益田殿は将来性を認めて下されば破格でご融資をして下さると伺い、不躾ながらこうしてご自宅へとお伺いさせて頂いた次第、私はアメリカに暫く言って居りましたが、益田殿の名前はあちらでも聞き及んで居りました。」
それにしても、森永創業者って、でかい・・・こんな大男だったのか・・・恐らく180㎝程の身長は有るだろうと思われる、しかもがっちりした感じで体重も有りそうだ。
吾輩はこの時代の日本人の中でも小柄な方なので現在158㎝しか無いのだ、見上げる程の大男で少々驚いた。
このような大男が狭い厨房で菓子作りをして居る所を想像するだけでちょっとクスッと笑いが出そうだ。
「どのような菓・・・っと物を製造販売するつもりですか?」
危ない危ない、未だ相手が何も言って居ないのに菓子と言ってしまう所だった。
「実は、マシュマロと言う菓子でして、此方です、ご試食をどうぞ。」
「ふむ、饅頭のような見た目で有りますな、どれどれ。」
等と初めて見た風に言いながら口に運ぶ。
「うん、悪く無いですな、ですが少々味が単調な気がします。」
「駄目でしょうかね。」
「今の世は西欧文化等がどんどん入って来ております、そして我々日本人は、来る者は拒まずの気概が強く、割と馴染むのが早い方と思います。
ですから、売れるのでは無いかとは思いますが、日本人の味覚は実は非常に繊細なのです、単調な味ではすぐに飽きられてしまうでしょう、ですから他の菓子も考案する事をお勧めしましょう、まだ有るのでしょう?
隠し玉が。」
「益田殿、流石は、元神童と言われた方です、今は材料が調達が難しいので作れませんが、キャラメリゼと言う洋菓子の技術がありまして、砂糖を飴状に焦がす事を言います、この技を使う事で複雑な味になるのですが、これを使ったキャラメルと言う飴の一種を考案しようと思って居ます。」
所謂あれだ、森永のキャラメルである、あの黄色い箱の。
「判りました、出資をしても良いでしょう、但し条件があります。」
「どのような条件でしょう。」
「後日、三井物産傘下の益田貿易より使者を伺わせます、そこで国内で手に入り難い材料、恐らくは精製された上白糖でありましょう?
その仕入れが容易に出来る様に商談をして下さい、序でに、南米のカカオ実を発酵して乾燥、砕いて粉にしたカカオマスもサンプルを持って行かせます、それを使った商品を数点開発して頂きます。」
ついでに沖縄にサトウキビを大量に作らせて生成させる事業も起こしてしまおうかとか考えてしまった。
「カカオマス、ですか・・・それはもしや、ココアの材料では有りませんか?」
「ええ、飲み物のココアの原料です、まぁ、現物を確認して頂けば良いでしょう、菓子としてどのような物が出来るか楽しみにして置きますよ。」
南米はガーナ辺りで牛の乳と混ぜて飲まれていた苦い粉、チョコレートの原料カカオマス、これを去年出資して立ち上げた貿易会社に輸入させてあったのだった。
何気に我が屋敷では妻の妊娠中の栄養剤代わりにココアに仕立てて飲んでいる。
あの粉を菓子に仕立てる、一見無理難題を言って居るように聞こえたかもしれないが、吾輩は知って居るので無理難題では無いのだ、どんな物を作り、持ってくるか楽しみだ。
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何なのだ?
今年はやたらと出資先が多い年であるな?
何故だろうか・・・こう言う物は重なる時にはやたら重なるものである。
今度は、長崎のかすていらの菓子屋、文明堂がやって来た、東京進出を見据えての出資を希望している様である。
「益田殿、是非にかすていらを全国に広める為の出資を御願いしたく存じます。」
やれやれである。
「では条件を提示します、それを吾輩の納得いくように作り上げて頂きましょう。
先ずは、バウムクーヘンと言う北欧の菓子があるそうです職人を留学させそれを再現する事、留学費用は吾輩が無償で負担しましょう。
原材料はかすていらとあまり変わらない様なのですが、木の年輪のような紋様が特徴らしい。
もう一種類、マドレーヌと言う菓子があるそうだ、此方も同じく再現して頂きたい。
かすていら一本では商品力が不足であると思うのだ。
半年以内に再現するよう計らって頂きたい。
これが出来るようならば銀座の一等地に出店を取り付けよう。
土地は吾輩が確保しておきましょう。」
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1899年 9月
突然、ペストが発生する、しかし東京府は吾輩の指示通りに網目のように張り巡らせた上下水道のお陰で、街が比較的清潔になって居る。
その上、ペストは既に北里君と野口君に寄って研究が終わっており、何時でもワクチンも抗生剤も作れる状態になって居り、ほんの数十人の死亡被害で終息に至る。
先を見据えた吾輩達の勝利である。
それにしても急にペストなんて、一体どこから来たのであろう。
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1899年 10月
-モスクワ-
レーニンの怒りは頂点に達して居た。
「ええい忌々しい!何故だ!何故日本は私の暗殺部隊や偵察部隊が行ったきり一人も戻って来ないのだ!?」
「あのような無防備な狂気の科学者益田を殺そうとしても奴の技術を盗み出そうとしても誰一人として帰って来ないでは無いか! あのような後進の国に一体何があると言うのだ!」
事実、浩江ちゃん筆頭の諜報部、伊賀組と柳生組と言う二つの組織に阻まれ、悉く彼の思惑はすかされ続けていた。
しかもそれだけでは無い、他国へは、
「特にここ1年、トップクラスの腕前のアサシンを送り込んで居ると言うのになぜ誰も戻らんのだ、あの国には化け物でも居るのか?」
実際に居るのは蠅の王と、その主人たる大魔王、そして神格化されて自分でも知らない内に弁天となり果てたリリス、最後に面白半分で高見の見物を決め込む時限神クロノス等も居る。
ある意味最強なのである。
「しかし議長、あの国は全部を海に守られた云わば天然の要塞のような物でも有ります、もう暫く報告をお待ち下さい。」
ンまっ!私に意見するなんて命知らず!恐ろしい子っ!
「君は随分と偉くなったのですね、私に意見するのですから、私よりも上の階級にいつの間に成りましたか? 北部開拓送りにしますよ!」
-遡る事29年-
ウラジミール・レーニン、その人は4月に生まれた。
だがその出生には、超常的秘密があった。
読者諸君はラヴレンチー・パーヴロヴィチ・ベリヤと言う人物を知って居るだろうか?
彼は第二次世界大戦頃に最も影響力を発揮した人物で、スターリンの腹心と言われて居た人物である。
彼はかのソビエト大粛清の立役者、と言うか暗躍した、恐らくはソビエト史上最も残虐で邪悪な人物である。
その彼の魂を半分に割り、過去に送り付けた者が居た。
益田の異様な活躍を危惧した智天使ケルビムであった。
益田の周りに稀に確認出来る悪魔達の気配、それを感じ取ったケルビムは益田を邪悪な存在と取った、そして邪悪な存在に邪悪な者をぶつけて相殺しようとしたのだ。
しかし魂を半分に割ったのがまずかった。
レーニンとして過去に生まれた彼は、生まれながらにして壊れていたのだ。
15歳の時に、6歳の妹の友達を強姦して居たりもした。
この日露戦争前の時点でも、重度のロリコンであった。
権力を傘に、北部開拓送りにした者の家庭に入り込み、幼い娘を慰み者にするのが彼の趣味であった。
これは前世、いや、半身と同じ趣味であったが、そう言った部分ばかりが此方に送られた半身で有ったのだ。
そして自分の思う通りに動かぬ者は全員開拓送り、そして粛清、その対象者の妻と娘、息子に至るまでは気の済むまで犯しては皆殺しにすると言う、完全に壊れた、狂った人物に成り下がって居たのである。
政治的手腕は目を見張るものはあったのだが・・・それも何時しか恐怖政治へとなり下がっていた。
これにケルビムが気付いた時はすでに時遅しであった、既に権力を振るって粛清を始めていたのだ。
失態を隠す為に、ケルビムは入れ替えた時に抜き取った本物のレーニンの魂は消滅させてしまい、神々にも失態を隠し通すと決め込んでいた。
しかしそこに現れたのは時限神クロノス。
「よう、ケルビム君、中々楽しそうな事やってるよな、君。」
「何の事でありましょうか、クロノス閣下。」
「見てたし聴こえたし全て知ってるんだよね、君のやらかした事。」
「!!!・・・・・・」
「まぁね、俺今あの益田を観察対象にしててさ、楽しくなりそうだから、黙っててやるよ、その代わり、俺に手を貸しな?」
「は・・・はぁ。」
「今俺、サタンとつるんで遊んでるんだよ。」
「あ、悪魔と!?」
「ん?何? 悪魔とはつるみたくないって?」
「い、、、いえ、その、クロノス閣下の為でしたらば。」
「宜しい、あの益田って奴にさ、少しアイツも抜けてるとこが有るから、君の知恵を貸してやって欲しい訳、判る?」
「う・・・わかりました!」
「宜しい、では行こうか。」
こうしてケルビムはクロノスによって明治時代の日本へと降り立つ事と成るのだった。
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