第50話 祝言
祝言
1898年 7月
戦闘車輛改が完成、性能試験もクリアーに成り正式配備が決定した。
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九八式戦闘車
全長:8.3m
車体長:6.7m
全幅:3.1m
全高:2.25m
重量:35.5t
エンジン:MASUDA 12T-VD31A
水冷式V型4ストローク12気筒直噴ディーゼルターボ
排気量29,980㏄ 620hp/2800rpm
最高速度55km/h
懸架方式:トーションバー
行動距離:約320㎞
乗員:4人
主砲:九八式85㎜ライフル砲
副砲:益田十八年式13.5㎜重機関銃
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ふと気づくと、自動小銃や機関銃等は元号の年式で表記されるのに車両や大砲の年式が西暦の表記になってしまっていた、恐らく申請を出したのが前者は吾輩だったが、後者の申請は山田君に委任したのが原因では無いかと思う。
その内統一する方向で申請しておこう。
それと、時をほぼ同じくして、航空機用新型エンジン、瑞31型がロールアウトした。
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MASUDA 星型エンジン 瑞31型
星型 OHV 複列14気筒、20,880㏄ 遠心スーパーチャージャー
一速: 1100hp/2800rpm
二速; 990hp/2800rpm
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此方の形式は試作号数に成るのでこのままで行こう。
こいつを塔載するなら、恐らくは零戦よりも高性能になるだろう。
そう、試作機用の7気筒星型を大きく凌ぐ複列式14気筒星型が完成したのだ、これによって予定よりも早めの戦闘機が完成する可能性が出て来たのである。
この後は大型機用のガスタービンエンジンを開発する方向で方針を展開して行ける大きな進歩でもある。
まぁ既に設計プランは全て出来上がって居て吾輩の執務室の金庫に眠って居るのだが。
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1898年9月吉日
祝言と披露宴の当日である。
思えば転生してこれまで、かれこれ25年も立って居る。
研究と開発に心血を注いで着たとは言え、母上には随分親不孝を掛けた気がする。
なにせこの時代は、20歳そこそこには大概は既に嫁を取って居る位が平均なのだ。
無我夢中と言うか、我武者羅に様々な発明をし、色々な物を作り出した半面、自分の事が如何に疎かであったかと反省しながら神前式を上げている。お相手の寛子さんはと言えば、未だ16になったばかりである、前世の平成令和で言えば、まさにJKの世代、九つも年下の、吾輩には勿体無いような程の美しい女性だ。
辺りの気配に意識を配れば、母上は明らかに涙を浮かべて居るだろう。
弟はすっかり太郎冠者と名乗り、今はMASUDAの役員をして居るが、傍らで役者の育成などをして居るようだ。
そしてすでに見初めた女性と同棲等をして居るらしい。
それにしても、我ながらにこうして披露宴参加者を一望すると、凄まじい物があるなぁと思う。
主賓に陛下と、仲人として6月に諸事情で辞任したばかりの伊藤元総理大臣ご夫妻。
上司枠で陸軍及び参謀本部大将、中将、少将と言う面々、妻側の主賓として海軍大将、中将、少将の面々、取引等様々な関係の参加枠で〇井財閥総裁、〇菱財閥総裁、住〇財閥総裁、S&B食品代表、大日本鉄道会長及び社長、大日本医師会総長北里柴三郎、福沢諭吉、等々、様々な方面でお世話になっている方々な筈なのだが・・・何とも凄まじいメンツである。
もしも今この式場の帝国ホテル大宴会場が何者かの襲撃でも受けようものなら国家規模で粛清される事になるのでは無かろうか・・・クワバラクワバラ。
とにもかくにもこうして、式も披露宴も滞りなく執り行われ、フィナーレを迎えた。
主賓の陛下が握手を求めにいらっしゃった時などは寛子さんは緊張のあまりガチガチに固まって居た。
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-その晩-
「あ、あの・・・ふ、不束者ですが・・・よ、よろしくお願いします・・・その・・・だ、旦那様。」
耳まで真っ赤になって居る、何と可愛らしい事だろう。
「あ、いえ、此方こそ・・・ひ・・・寛子。」
恐らく吾輩も耳まで真っ赤なのだろうと思う、顔が火照って仕方が無い。
所謂初夜と言う奴であるのだが・・・
帝国ホテルのロイヤルスウィートルーム。
これ又凄まじい豪華な部屋である。
只でさえ緊張すると言うのに、この超豪華な部屋、緊張しない訳が無い、しかもお相手は未だ16歳になったばかり、令和ならば淫行で逮捕されても可笑しくない年齢。
ベッドの脇の床で向き合って正座したまま、固まって小一時間見つめ合ってしまった。
足が痺れて立てそうにない感じがして来たぞ・・・どうしよう・・・。
兎に角この事態だけでも打開せねば・・・
「「あ、あの・・・」」完全に被ってしまった、ますます気まずい。
「だ、旦那様から・・・どうぞ。」
「う、うん、わかった、だけどその、旦那様と言うのは辞めて欲しい、僕はね、常々思って居るのだが、男性の後ろ散歩下がって・・・等と言うのはどうにも腑に落ちないのだ。
確かに今の時代では未だ女性の仕事と言うのは結婚してしまえば家事全般等と言われてしまうかもしれないが、その家事に至っても我々富裕層に至っては使用人等にやらせる物であったりする、と言う事は家事もちゃんと列記とした仕事では無いか。
それに対して何の報酬も無いのが主婦と言う事になるでは無いか。
ちゃんと仕事をして居る以上報酬があって然るべきであるし、妻がいてこそ安心して家を任せて仕事に行けるのだ、増してや子を産み落として子孫繁栄を成すのは女性であって男性に子を産む事は出来ぬ、にも拘らず女性の地位が低いと言うのは有っては成らんと思うのだ。」
「で、ですが・・・」
「なので、寛子は吾輩の妻である以上、吾輩と同等の地位にあると考える、旦那様等とまるで使用人が吾輩を呼ぶような呼び方をしてはならぬ、修一と呼んでくれ。」
「貴方がそれで良いのなら・・・では、修一さんとお呼びする事にします。」
「ふう、やっと砕けて話せるようになったね、少しお互いに緊張も解けてきたようだ。」
「はい、やはり修一さんと結婚して良かったです、本当に素敵。」
「た、ただ、やはりお互い初めてとなると、こればかりは緊張するが・・・。」
そして又二人で真っ赤に赤面する、もう堂々巡りである。
だが、その後30分もすると、少しづつ何となくムードも上がって来たようだ。
式自体は和式なので三々九度で有るので、誓いの口づけはして居ない為、遂に初の接吻をする。
初めは身体を固くしていた寛子だが、口を吸い続ける内に徐々に緊張も解れて気持ちも盛り上がって来たようだ。
自然とぎゅっと閉じて居た口も綻んで来たので徐々に舌を入れて行く。
舌を絡ませて居る内に徐々に息も弾んで来るようになったので、一度接吻を辞め、抱き上げてベッドへと、所謂お姫様抱っこと言う奴で誘うと、そっとその脇に腰を下ろし、今一度接吻をすると、寛子もそっと吾輩の頭を抱える様に手を添えて来る。
そしてゆっくりと吾輩は寛子に覆い被さる様にして彼女の衣服を開けて行く、こうして遂に、結ばれたのであった。
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1898年 11月
早朝4時、イリーナがメッセージを送って来る。
《先生、お早う御座います、日本時間だと少し早過ぎたかしら?》
《いや、起きているよ、どうかしたのかね?》
《素敵な報告があります、私、今飛び級で16歳で大学3年生なんですが、実力が認められて、技術最先進国の日本への留学が認められたんです、先生がやらかしたんでしょう?
技術最先進国って。》
《素晴らしい、先ずはおめでとうと言って置こう、此方で通う予定の学校は決まったのかね?》
《はい、確か先生が一時教鞭を執って居た東京大学だったかと思います。》
《はっはっは、そうは言ってもわずか1年間だけだ、吾輩にはなんだかんだ言って教授職は合わないらしい。》
《あ、先生、一人称が変わりましたね、出世しましたね?》
《ああ、まぁね、だがそれだけでは無いよ。》
《え、何かありましたか?》
《ああ、前世から通して初めての妻を娶ったよ。》
《素敵!おめでとうございます!》
《ありがとう、ああそうだ、君さっき16と言ったね、すると、妻と同い年になるんだな。》
《え、若い奥さん貰いましたね、確か前回私が日本へ行った時10歳で先生が19歳だったんだから、今って25歳位ですよね?》
《その通りだ、しかし留学か、それならば、通学には家の運転手を使って車で通学したら良い、家にホームステイに来なさい。》
《流石先生、そう言ってくれると思ってたんですよ!》
ちゃっかりして居る、前世から性格変わっとらんな、こいつ。
3月後半より、我が家に我が生徒が居候しにやって来る事になった。
同い年で有るし、イリーナは日本語も堪能と言う事も有る、妻と仲良くしてやって貰いたい物である。
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