第39話 朝鮮再上陸作戦

           朝鮮再上陸作戦

 あれ以来、修一は上野へ遊びに行く事を躊躇って居た。

「大佐殿、最近来てくれないってボヤいてましたよ? どうしちゃったんっすか?」

「ああ、済まない、一寸考え事が増えてしまって、忙しくてね。」

「あっ、そうでしたね、陛下のご意見番でしたっけ?大変すよね~。」

「丁度良いや、君、桜さんにこの手紙を渡してはくれないか?」

「良いっすけど、彼女読めるんですか?あんまり学校行ってるような気はしませんよ?」

「大丈夫だ、彼女に言わせれば寺で育てられたらしいから、字ぐらいは読めるさ。」

 あ、そうだ、年齢も近いし、もしかすると彼も会津の山の中で生まれ育った筈だから聞いて見よう、田舎程広いエリアでご近所なんて話は良くあることだしな。

「すまんが小官はちょっと出かけて来る、北里君の所に行くので伝言をよろしく頼む。」

 伝言だけ頼んで、やっと足が届くようになって運転出来るようになった為に陸軍省にお願いして一台手に入れたバイクに跨り走り出す。

 行き先は勿論、北里君の研究所にて伝染病を研究中の研修生、野口君だった。

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「やあ久しぶり。」

「これは益田殿、今北里博士は台湾に・・・」

「何?彼はまだこんな戦闘の真っただ中の台湾に残ってるのかね?」

「ええ、軍には引き返し給えと言われたらしいのですが、怪我人の治療にも居た方が良いと残られたそうで。」

 いや、恐れ入った、本当に根っからの医者なのだな、あの人は。

「そうだったのか、でも今日は、北里君では無く野口君に用があって来たのだ。」

「あ、彼ならばもうすぐ寮へ帰る時間だと思いますよ。」

「ん?昼間だが?」

「ええ、実は昨日、もう少しで見つかるとか言って帰らずに研究室に籠ってたんですよ、何が見つかるのかは私にゃ判りませんがね、北里博士とその辺ソックリで。」

「あはははは、やっぱり彼は研究者向きだったって事かな。

 そう言う事ならこちらでお茶でも頂いて待つとしよう、邪魔をしても悪いしな。」

「あ、畏まりました、守衛室なんて大した物は無いので安物のほうじ茶しか有りませんが良いですか?」

「ああ、それで良いです。

 しかし君もここに来て長いね、始めからだもんな。」

「そうですねー、北里博士と益田殿、それに福沢さんのお陰で、良い仕事に付けたと思ってますよ。」

 等と雑談をして居ると、研究所の建物から此方へ、フラフラとした足取りの白衣を羽織ったままの人物が歩いて来るのが見えた。

「あ、出て来たようですね、野口君ですよ、あれ。」

「・・・大丈夫なのか?あの状態・・・」

「あまり大丈夫そうには見えませんね・・・」

「野口君!」

 と声を掛けると、はっと此方に目を向け、急に駆け足でやって来た。

「これはこれは、お久しぶりです、益田殿。」

「お、なんかすっかり標準語になったね。

 所で、フラフラしてたみたいだけど大丈夫なのかね?」

「あ、はい、ちょっと疲れて居ただけで、大丈夫です。」

「そうか、ちょっと聞きたい事も有るので、如何だ、昼でも奢ってあげよう、一寸行かないか?」

「ホントですか、是非!」

 近所の定食屋へと入り好きな物を頼むよう促し、小官も食べ盛りなので大盛の饂飩と半親子丼を注文。

「益田殿、聞きたい事ってのは何です?」

「ああ、それなんだがな、君は確か猪苗代湖の方の出身だったよな。」

「はい、そうです、しかもかなり山の方でした。」

「ふむ、年齢から逆算して、生まれは明治8年?いや9年か?」

「はい、9年ですね、18になったばかりです、益田殿の一つ下です。」

「うん、そうだったよな、小官が来年20だからな、すると、もう無いのか・・・」

「何がです?」

「慧日寺・・・と言う名の寺なんだが。」

「ああ、それだと、僕の生まれる2年ほど前に取り壊されてる様で廃寺になってました、割と近かったのであの寺の元境内だった所で遊んだ事も一寸ですが在りました。」

「ふむ、では、この写真を見て貰っても良いかね?」

 浩江ちゃんが隠し撮りしたらしい写真をくれたので、それを見せた。

「随分と陰のある感じの美人さんで無いですか。 前髪でちょっとよく見えないけど多分美人ですよね、この人。」

「見覚えは?」

「無いですね、初めて見た人です。」

「そうか、ありがとう。」

「どんな人なんです?この人。」

「判らんのだよ、それで人に聞いて回ってる。」

「慧日寺ってのは何で?」

「この人がね、其処で育ったと言うのだけど、年齢からしてあり得ないのだよ、彼女は小官よりも一つ年上なだけな筈なんだ、だがその寺は彼女が生まれた筈の年に廃寺になって居る、其処でもしかすると君が知ってる可能性が有ると思ったのだ、いや済まなかったな。」

「そうでしたか、そうなると益々謎ですね。」

「それにしても君があの寺の敷地だった所で遊んで居た事が有るとは、良い情報が聞けた、ありがとう。」

 その後は些細な雑談等をしながら食事を楽しみ、彼の寮の前で別れた。

 今ではすっかり親友の様になって来た、彼に言わせれば先輩みたいな存在らしいのだが。

 しかし、一体何者なんだろう、桜さん・・・

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 1894年 9月


 台湾に取り残された清国軍は、台南に追い込まれて居た。

 帝国陸軍の重歩兵や自動小銃の前には手も足も出ない状態だったようだ。

 ~現場、混成第七旅団長視点~

 しかし、早めに負けを認めて白旗を上げたら良いものを何で清の兵はこうも玉砕してでも最後にはツッコんで来るのか・・・

 余程プライドが高いのか、はたまたそこまで愛国心が強いのか、それは捕虜が一人も出来ない程玉砕覚悟で飛び込んで来るので聞き出す事も出来ないのだが。

 台湾攻略戦に途中参加した我々混成第9旅団はとにかく降伏をしようとしない清国軍と直ぐに負けを認める癖に捕虜に成ると態度がガラッと変わる朝鮮人の暴徒との違いに悩まされていた。

 朝鮮人は、憲兵に捕らえられるとアッサリ諦めて牢にでも何でも入るのだが、取り調べに成ると、不当な扱いだとか、俺が知るはず無いだろう、とか・・・何で立場が逆転したかのような物言いで大きな態度に出て来るのかまるで分らない。

 逆に清国兵は捕虜にさえなれば、扱いをすればもっと扱いやすく話してくれるのだろうとは思うが、誰も生きて捕虜に甘んじようとはしない。

 これが民族性と言う奴なのだろうか・・・

 どちらが扱いにくいかと聞かれたらどっこいどっこいな気だけはするが・・・

 仕方が無いので前に出て何とか捕虜を捕らえようとした、だがようやく捕らえた清国兵は、「蛮族の捕虜となって行き恥を晒す位ならば。」と言い放ち手投げ弾を抱え自爆したと言う。

 つまり大日本帝国は野蛮な民族であり後進国で、野蛮な民族であり、もしも捕らえられれば何をされるか知れた物では無いとでも教え込まれて居るのだろう。

 まぁ敢えて野蛮さを順位付けるとしたら朝鮮人が一番野蛮であろう事は誰の目にも明白である、理由を言ってしまうと悍ましい程であるが、彼等朝鮮民族は吐き気がする程酷いインブリード民族なのだ。

 適齢期の娘を嫁に出す前に実の父親が犯して子を産ませて自分の娘は子が産める健康な身体であると実証してから嫁に出すと言う、悍ましい上に意味の解らん風習が有るのだからどうしようも無い。

 既に人として、倫理的にも理性的にも壊れた民族であると思うのだ。

 自分の実の娘を犯せるってどう考えてもオカシイとしか思えぬ。

 何故大日本帝国政府はこんな悍ましい蛮族を保護したいと思うのだろうか?

 儂には分からぬ。

 話が逸れたが、兎に角こんな民族でも救おうと動いた日本とそれに宣戦を布告した清国とでは明らかに後者の方が野蛮では無いか?

 台湾に至っても自らが捨てた地を勝手な都合だけで支配しようと言う考え方自体が野蛮とも言えるのでは無かろうか。

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 ここまで来たら既にお気づきであろうが、益田案の戦略とは、史実とは逆に台湾から落とそうとしているのだ。

 勿論それを可能にしたのは潜水艦によって設置された機雷のおかげであり、それにより清国海軍の殆どが運用不可能の事態に陥って居たからである。

 実は修一は、松岡前海軍大将の潜水艦が欲しいと言う一言から理解し、ここまで想定して早めに潜水艦を開発した訳である。

 潜水艦の隠密性ならば、一体いつの間にどのようにしたら100個からなる機雷を設置出来るのかも分からぬ内に港を封鎖出来てしまうのだ、実際見事な程に清国海軍主力の足を完全に止めて見せたのである。

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 日英米通商就航条約で英国と合衆国は日清戦争への不可侵を約束してくれた、その上フランス等の横槍をこのニ国が目を光らせてくれていた。

 持つべきは友好国であるとは思うが、実は合衆国は未だ侮れない、突然手の平を返す可能性も無くは無いのだ。

 そこで小官は陛下にお願いして時の総理大臣、伊藤博文殿にお会い出来ないかと取次ぎを御願いした。

 するとすぐに日程を決めて頂けたので、小官もスケジュール調整をし、その日に合わせてお会いする事になった。

「失礼致します、お初にお目にかかります、益田修一大佐であります。」

「君が神童かね、折り入って話とあったが、その前に一つ苦言を申し上げても良いかね?」

「はい、その苦言は想定致しておりました、甘んじてお受けいたします。」

「そうか、判った上で出向いて来たか、ではちゃんと答えも用意して来たと言う事か、では言わせて貰おう、何故政府の命令で駐屯させた隊を朝鮮国から全軍撤退させたのかね?

 あれは陛下では無く君の策だろう?」

「はい、私の策であります、正直に申し上げますが、あのまま邦人居留地を防衛しようとしても確実に全滅させられます、物量が違い過ぎます。」

「まぁ、確かにそうであろうが、200万等と言うのは清国が誇張して発表した物である位は判らんかね?」

「いえ、判っておりますよ、小官の予測では、精々朝鮮国へ攻め込んで来た全軍を合わせてどんなに多く見積もっても40万~50万でしょう。 実の正規軍は恐らく10~20万と言う所でしょうか、虚勢を張って居るのは明白ですね。」

「ではなぜ撤退させるのかね?」

「それは我が軍の優位性を守る為であります、我が軍の優位性は武器の特徴にあります、連射の可能なライフルに、800m近い射程を持つ狙撃用長銃、大口径機関銃にそれを搭載した装甲車両、どれを取っても敵の手に渡って解析、コピーされる訳には行かない最新装備で有ります。

 この装備を敵の手に渡さない為に、宣戦布告直後にいきなり部隊を失う訳にはいかんのであります。

 勝てるカードを敵の手に渡したくなかったのであります、それに、今の朝鮮の状況を良く確認して下さい、もう少しで清国が完全に半島を制覇する構えです。

 ですが、清国の大型軍港は小官の策により、潜水艦部隊に抑えられており出港は不可能、敢えて台湾へと朝鮮国に居た部隊を向かわせ攻勢を図る事で、台湾の清国軍も、例の30㎝砲を誇る大型戦艦諸共釘付けに出来ております。

 そしてそこへ向けて出撃した我が軍自慢の戦艦、武御雷の新造艦砲、38㎝3連砲塔3塔による艦砲射撃で間もなく台湾防衛清国艦隊も沈黙するものと思われます。

 台湾を抑えてしまえば既に今の清国軍は八方塞がりで半島に押し込められた陸軍のみとなります。ここへ取って返して艦砲射撃の後、揚陸艦へ搭載中の装甲車両部隊へ重歩兵を分譲して背後と両脇より挟撃してしまえば朝鮮半島は落ちたも同然では無いですか。」

「しかし、それだと朝鮮国の民が・・・」

「何をおっしゃいます、折角余計な口を出さぬように促して国作りをする猶予を与えた上に我々は壬午事件の賠償を請求せずに据え置いてやったと言うのに全く同じ事を繰り返すだけで何の発展もしないどころか益々内乱が増えるだけ、これでは国では有りません、烏合の衆であります。

 体裁として保護したと言う名目で閔妃様を匿っては居りますが、この後英国へと移送して清国と事を構えねば成らない原因を作ってしかも朝鮮国自体も統治どころか混乱に陥れたとして裁いて貰おうという所なのですよ? 土地と資源以外に何かの価値を見出せますか?」

「それは流石に言い過ぎでは無いかね?」

「いいえ、言い過ぎでは無いと思います、朝鮮国民は簡単に掌を返しますよ?

 取り押さえた暴徒は初めはアッサリと罪を認める癖に取り調べに成ると知らぬ存ぜぬ決め込んだ上に扱いが不当であると逆に刑務官等を罵る始末だと聞いて居りますが?」

「そんなに荒んでおるのかね?」

「小官は少なくともそのように伺って居ります、価値は無いと思います、もしも人足として正規の給金を支給しても、何年も経った後から徴用されたとかそのような絵空事を並べ立てて在りもしない強制労働を盾に日本国を訴えかねません。」

「それではまさに詐欺そのものでは無いか。」

「ええ、平気で嘘を吐く民族と報告を受けております。」

「それを証明する報告書などは有るかね?」

「はい、今台湾攻略に行って居る混成第七旅団よりの報告書を、海軍大将閣下よりお預かりしております。」

「拝見しよう。」

 こうして小官の策がそのまま進行する事に成るのだった。

「ですが小官が今日ここへ来たのは、清国との戦闘に関してでは無く、我が国の米国へ対する接し方です、油断されないようにお願いします、あの国には様々な資源が眠っております故、もしも小官等兵科技研の開発した武器の解析がなされて量産化の目途を立てられてしまうと資源的にも生産力的にも我が国とは桁が違うので立場が逆転してしまいます、出来るだけ切り札は取って置きたいので同盟国と言えど兵器完全供給等お考えに成らぬようお願いいたします。」

「そんなに警戒するべきかね?」

「はい、いずれにしても帝国の優位性はほんの数年も有れば、技術的にも追いつかれてしまい失われても可笑しくは有りません、只でさえその位脆い優位性でしかない物を無駄に早める必要性も無いかと思われます。」

 そうなのだ、ジョージがもしも大人になり大統領にでもなったとしてもあの国の国民性と言うか、完全個人主義とも言える考え方、誰よりも強く在れと言う考え方には要注意なのだ。

 実際に前世の合衆国もそう言った考え方から容赦なく原爆を使用するに至って居るし、最友好国である日本へ対しても中々最新兵器の販売をしなかった、あのステルス戦闘機にしても、思う様に性能が発揮し切れずうまく開発が進まなかったパーツやソフト面を日本の技術を使い共同開発すると言う事でようやく合意が取り付けられたが、ライセンス生産の権利迄は売り渡さなかった程慎重であったのだ。

 油断ならない国である、それと同じ事を小官はこの時代でやり返そうとしているのである。

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 ~朝鮮半島~

 清国軍が釜山港等の日本へ向けて出航出来そうな港へ向けて進軍を続けていた。

 朝鮮軍は殆ど抵抗せず、むしろ放棄して逃げ出す者、自ら守るべき国民を蹂躙し始める者、女と言う女を片っ端から犯して廻る集団等、何とも予想通りと言うかむしろ予想を大幅に下回る程の愛国心しか無い行いを始める者達により、清国軍だけでも酷い蹂躙がされて居たにも拘らずその目を覆いたくなるほどの状況は悪化する一方であった。

 その暴徒と化した朝鮮軍をこれまた清国軍が蹂躙して行くと言う犯罪と殺戮の限りが展開されていた。

 そしてついに、開戦より僅か三ヶ月で清国軍は朝鮮半島全土をほぼ掌握するに至って居た。

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 10月末

 台湾戦線がほぼ大勢を決し清国より開放、統治はしない方針は変えて居ないので独立国家への動きを強める事に成る。

 清国軍を退けた帝国軍と、献身的な医療の提供を行った北里君を筆頭とした医療団へ、台湾知事より感謝状が贈られた。

 これより台湾は独立民主主義国家として日本の友好国となって行く事であろう。

 一度呉へと補給へ戻った台湾攻略混成戦斗群は補給が終わり次第済州島へと向けて出航する事に成る。

 その前に呉へと先だって補給の為に寄港していた潜水艦隊を釜山港へ向けて出航させてあった。

 潜水艦隊は当然、釜山港の無力化が当面の任務、その後、ロシアの動向を探るべくロシア艦を探索に向かう。

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 11月~東京湾中央埋め立て港兵科技研専用ドック~

 未だ液状化からの復旧が中途な為に極一部の者以外の上陸が禁止されている埋め立て島基地で、小官はPCで設計をした艦対地攻撃用及び艦対艦攻撃用ロケット弾の試作を、試作兵器試験艦への搭載を指示して居た。

 ドイツのVシリーズロケットに先駆けての自力推進型砲弾である、これが完成すれば射程距離は飛躍的に伸びる。

 ただ、未だ誘導とは行かないので、ミサイルでは無い。

 だがこの時代であれば十分脅威に成るだろう。

 なにより、航空機の開発を専門部署を作り任せた事で小官自身はロケットエンジンの開発に着手出来た事が大きかった、このロケットエンジンが有れば、広範囲を一度に攻撃できるロケット弾車両や遠距離クラスター爆弾などにも応用が可能だ。

 航空機に関しても開発は順調なようだ、徐々に理想として居た零戦に近い形へと進化しつつある、爆弾や機関砲を塔載出来る程の性能まで持って行けば新たな戦力として他の追随を許さないだろう。

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 11月中旬 -福井軍港-

 補給が終わった戦闘群、及び艦を順次出港させる、目標は釜山プサン沖と珍島チンド沖、東西から挟み込んで艦砲射撃で掃討した後に上陸を開始、3方向からの挟撃で徐々に戦線を北上して行く作戦を取る事にしたのだが、身柄を預かった英国が閔妃を断罪した事で同盟国として何かをしたいと思い立った合衆国が、突然東側の攻略を申し出て来たのだ、確かに帝国だけでは攻め切れないとは思うので連絡を密に取る事で帝国陸軍の動きを阻害しない様に参戦するならと許可を出したのだった。

 だが恐らく、合衆国が参戦して来るとロシアが米国の背後を付くように艦隊を送り込んで来そうな気がする・・・その前にもう一度潜水艦隊に頑張って貰わねば成らなくなりそうだ。

 ロケット弾の量産が間に合って居ればもう少し楽だったのだが間に合わなかった事を何時までも引きずって居ても仕方が無い、合衆国には精々尽力して貰う事にしよう。

 そのロケット弾の為に小官は福井軍港へ出向いていた。

 補給に戻った第一、第二艦隊両旗艦に、試作段階の艦対地ロケット弾の伊号弾、艦対艦ロケット弾の呂号弾の搭載を進めた、発射実験をする為である。

 そして実際に試射した結果、大型艦である両艦であれば発射は可能である事だけは実証できたが、波の影響で僅かに揺れるだけでも当たり所は大きく変わると思われる為、命中精度に関しては何とも言い難いだろう。

 取り急ぎ戦線海域へ戻らねばならないと言うので取り付けた発射台や余分に積み込んで居たロケット弾はそのままにして出向する事と成ったので、くれぐれもこんな試作段階の物を使うような無茶はしないようにと釘を刺して、小官は福井軍港を後に、兵科技研へとトンボ帰りをしたのだった。

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