第21話 リチウムイオン電池と潜水艦

     リチウムイオン電池と潜水艦

 朗報が来た、とうとうリチウムが安定的に手に入るようになったのである。

 当然ながら、海軍上層部の意向で、新しい素材を入手し、輸入出来るよう〇井物産と密に連絡を取る、と言う長期作戦のお陰である。

 海軍大将閣下が個人的に指令を出してここまでやってくれたのだ、小官がそれに答えない訳には行かないだろう。

 早速、リチウムイオン電池の開発を始めた、とは言っても、小官の得意分野である電子科学系の、さらに言えばまさにそのもの自体を取り扱って居た事がある程なのでどんな構造なのかどんな原理なのか全て網羅している。

 ただし、リチウムイオン電池は、衝撃等に弱く発火しやすい。

 ここは一足飛びにリチウムポリマーにしてしまいたい所だったが、ポリマーの素材がなかなか手に入らないのである。

 まぁ、リチウムポリマーにした所で完全に安全な電池とは言い切れないのだが、こちらの方が造形もある程度の自由が利く代物だ、様々な形状の電池を作れるので潜水艦内部を極力広く構造するには有利なのだ。

 作るとなると又余計に時間を費やす事となるだろう。

 当面、リチウムイオンで行っておいてじっくり時間を掛けてポリマーを手に入れよう。

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 リチウムイオン電池の理論を論文に起こし、付属して専用の充電機を論文に起こす。

 過充電は危険なので、リチウムイオン電池の発熱で落ちるブレーカーと、ブレーカーが落ちると鳴るアラームを構成したのだった。

 これなら今の化学力でも過充電事故は減らせるだろう。

 今度は大型の電気モーターを構築、する為の磁石を作る、そしてその為の論文と、モーターの設計図を起こした。

 動力としてのエンジン、エンジンに連動する発電装置、更にそれに充電器を連動させた設計図を構築、書き出して居る所に、小官宛の電話が入った。

 タイミングの良い事に、海軍大将閣下其の人からである。

 どっかで見てんじゃないのか?あの人、何時も妙にいいタイミングで・・・

 電話の内容は、こうだった・・・

「大型の潜水艦を作りたい、戦闘ヘリを塔載して潜れる奴だ。」

 待て待て待て待て・・・・無茶苦茶言わはるわ、このお人は、未だ航空機も完成させてないのにヘリって・・・ン?待てよ?

 強引に地上から離れて浮いてるようなもん作れば良いだけって事か・・・操縦が難しいのは仕方ないとしても、行けるかも?

 と思った小官はそこでふとある事を思い出した。

「潜水空母って、まさか海軍大将閣下ってばあのSF小説読んでた口でありますか?」

 そっと小声で聞いて見たらやっぱりだった・・・

 その小説の中では水上戦闘爆撃機の”春嵐”ていう仮想の機体を搭載するんだけどね。

 良く考えればそうなんだよ、潜水艦から発艦して飛んでって攻撃するならヘリの方が手っ取り早いんだよな、かなり近くまで寄れるから、奇襲って事考えたら小振りな対艦ミサイル1本づつ搭載して4機も飛ばしゃぁ空母か戦艦の1隻も沈められる、同時に潜水艦からも魚雷の4発もお見舞いしときゃ敵艦隊はパニック、そんなんが4隻もセットで行動しときゃ敵艦隊の敗北ほぼ決定、ヘリならば戻って着艦したらすぐ格納して潜水出来るし、効率は良いのかも、あ、いやそれならヘリじゃ無くてオスプレイみたいな垂直離着陸機がベストか、重いミサイルや爆弾をヘリよりも積めるし・・・なんて考えてからふと初めに戻った・・・あ、そうだ、航空機未だ作って無いや・・・

 はっはっは、小官とした事が色々考え過ぎて優先順位こんがらがってるわ~、って事でそっちは直ぐには無理ですとお答えしたら拗ねてらっしゃった。

 あのねぇ、確かにあんたと小官の未来人仲間の仲ですけどね、出来るもんと出来ないもんを混同して貰っちゃ困るのよ、そもそもあの小説の時代背景第二次大戦でしょ、今からずっと後の話だからね?

 技術レベルが段違いですからね?

 それに今すぐ戦闘機とか開発する訳にもいかんでしょうに・・・

 其れこそそれやっちゃったら世界征服出来るレベルよ?

 まぁ小官もリチウム電池作れちゃいそうだから果たして技術レベル今の方が上になって居る部分も少なくは無いのだけどそこは秘密である。

 兎に角それは望んじゃダメでしょうって事で諫める事は出来たのだった。

 今は当面、日清日露の両戦争の事考えなきゃね、折角歴史を知ってる者としては・・・まぁ既に多少改変したので少しづつ変化は有るのだけど。

 まぁ、潜水空母構想は頂きますけどね。

 どのみち潜水艦の設計と建造にはかなりの時間が掛かる、日清戦争に間に合う事は、多分、無いだろう・・・とは、思う。

 いやもしかするとギリ間に合う可能性は無くは無いけど。

 それと、流石に潜水艦を作るとなれば、小官自らが陣頭指揮を執って何かあればすぐに対応出来るようにしておかねばいけないだろう、溶接一つとっても精密に繋げなければ浸水してしまうのだから。

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 後日、近々船のドックに出向く事を海軍大将閣下に伝えると、直ぐに海軍の制服に少佐の階級章が付いた制服が届いた、手紙が付属して居たので読むと、「陸軍の制服でドックに入ると舐められるぞ、これを着て行け。」とだけ書いてあった。

 あのジジイ、始めからこうなる事読んでやがったな?

 ってか俺のサイズ何で知ってんだ?あの人・・・

 何はともあれ、ドックへ行く前にリチウムイオン電池だけは手土産に開発を終わらせてから行く事にして、小官の来訪を首を長くして待つ大将閣下をやきもきさせるのだった。

 リチウムイオン電池の開発終了まではもうあと一歩と言う所である。

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