第25話 その内分かる
「…なんで俺があいつだと?」
「だって…」
だって…零はけいちゃんに似ているんだもん。性格とか、その辺は全く違うけど。でも雰囲気とか目付きとか身長とかも多分一緒だと思うし…何より、喋っている時の感覚がけいちゃんと喋る時の感覚と一緒だからだ。全くと言っていいほど『初めまして』感がないのだ。まるで前にも話していたような、そんな感覚。
「零はけいちゃんと色んなところが似ているんだもん」
「…似ている、か」
零はそう言うと、少し悲しげな顔をした。何故だろう、この顔を俺はどこかで見たことがあるような…。でも思い出せない、というか、思い出してはダメなような。心の中に封印されている様な記憶。…この記憶は引っ張り出さないようにしよう。
「…ちょ、ちょっと、零?」
すると突然、零が俺に迫ってくる。徐々に後ろに押しやられ、アパートの柵に背中がぶつかる。もう後ろには下がれない。
「ちょっ、零、顔ちか…」
気づいた時には、俺は━━━━。
━━━零とキスをしていた。
三秒程唇を重ねた後、零の方から離れていった。すると零は少し笑いながら口を開いた。
「…ま、その内分かるんじゃねぇの」
俺は何か言おうとしたのに、口が開かず言葉が出なかった。ただ、いきなりキスされたことに驚いて、その場で硬直するしか出来ない。
「でもよ…お前とあいつは幸せになれると思うぜ」
「…最も、お前次第だが」
するとあいつは、俺が瞬きした瞬間にどこかへ消えてしまった。同時に体も動くようになった。…あいつ、俺に…キスしてきやがった。けいちゃんしか許したくないのに…。
━━━お前とあいつは幸せになれると思うぜ。
━━━最も、お前次第だが。
零の最後の言葉が気になる。あれはどういう意味だ?…意味は自分で見つけろってことか。でも、考えれば考える程、言ってる意味が分からなくなる。…一体何なんだよ、零は。
~翌日~
蒼哉大丈夫かな…。犯人誰なんだよ。家の蒼哉によくも…。…何言ってんだ俺は、蒼哉は蒼哉。俺のものじゃありません。…というか何で蒼哉がターゲットなんだ?イマイチ標的になった理由が分からない。…俺が知らない所で何かあったんだろうか。
あっやばいもうこんな時間遅刻しちゃう…!
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