伝える想い

第24話 見透かされた狼

　仕事終わった～今日も疲れたなぁ。あ、この後けいちゃんと一緒に帰る約束してるんだった。…流石にけいちゃんと居れば黒虎（あいつ）は来ないよな？まぁ狙ってこないことを祈るか。

｢お疲れ様｣

｢あ、けいちゃんお疲れ～。帰ろっか｣

　…今のところ黒虎（あいつ）の気配はない。感じるのはけいちゃんの温もりだけ。やっぱこの感じ最高。…でも何だろう、この既視感。つい最近感じたばかりのような。けいちゃんと帰るのは数日ぶりだと言うのに、つい昨日感じたばかりのようだ。…まぁ気の所為か。

｢んねんね、けいちゃん｣

｢ん？｣

｢手繋がせて｣

｢ふぇ！？ま、まぁ…いいけど｣

｢ありがと！｣

　あぁ、可愛いなぁけいちゃんは。昔もこんなことしてたっけ。けいちゃんの照れた顔とか昔から大好きなんだもん。

　けいちゃんの手、暖かいなぁ。ずっと繋いでいたくなる。あ、けいちゃん顔赤くなってる。赤面も可愛いぞ。

｢…なんで手繋ごうと思ったの？｣

｢恋人ごっこ｣

｢何それ…｣

　と言いつつもけいちゃん、内心喜んでいるの知ってますよ。だって口元完全に笑ってるもん。隠してるつもりなんだろうけど、全然隠せてないからね。この顔大好きだけど。

　色々話していたら、俺の家に着いてしまった。あーあ、もっと一緒に居たかったなぁ…。また一緒に帰ればいいか。

｢じゃ、今日はありがとね｣

｢うん、また明日｣

　けいちゃんの後ろ姿を俺は見えなくなるまで見送った。見えなくなった後、自分の家のドアの方へ足を向けると…。

｢…出待ち？｣

｢正解、つかもう驚かねぇのな｣

　結局会うのな、まぁ予想ついてたけど。けいちゃんと離れたその一瞬をこいつはついてきやがった。とんだ策士だ。

｢というか何であいつが居るんだよ｣

｢お前避けですが何か｣

｢ひっでぇなぁもう。そこまでするかよ｣

｢だって出会った直後に運命の相手だの何だの言ってきた奴とか怖すぎるだろ｣

｢じゃお前は俺の事を怖いと思ってんのか？｣

｢それは…｣

　…心でも読まれたかな。そう、俺はこいつに対して、差程怖いという感情を抱いていない。むしろ、安心すると言うか…。一緒に居て苦ではないのだ。

｢ま、お前から恐れられようが俺はお前のことずっと落とそうと思ってるがな｣

｢それって恋愛的な意味？｣

｢当たり前｣

｢あのさぁ…｣

｢良いだろ別に、ホモも悪くねぇぜ｣

｢俺はホモじゃねぇよ｣

｢の割にはあいつに夢中みたいだが？｣

｢恋愛的な目で見てないもん｣

｢じゃ何でエッチしたんだよ｣

｢…ッ！｣

　え、何で…。何でその事知ってんだ…。だって、あの時は俺とけいちゃんしか…居なかった筈…。何でこいつはそれを知ってるんだ…。…まさかこいつ…いや、そんな筈は…非現実的だし…いや、でもそれしか他に考えは…。

｢…なぁ、お前｣

｢んぁ？｣

｢けいちゃん…なの？｣